マ第6巻マ

□第157話 ランスの弱点?
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バキッ!!

「おごぉっ!!」

セフィリアのダイナマイトパンチが睡眠中の私の顔面をとらえる。

「な、何をするのだ?」

「どうして、あのクソガキがまだいるのよ?」

もちろんクソガキというのはランスのことだ。

「アシュリーを連れて帰るまでは帰れないらしい。あとクソガキは言い過ぎだ。」

「私のことを貧乳って呼ぶのよ。クソガキなんて可愛いものだわ。」

「心配するな。ニーナも同じように呼ばれている。」

バキッ!!

「おごぉっ!!!」

「とにかく早く帰らせるように何とかしなさい。わかった?」

「は、はい。」

とにかく私は食卓へ向かう。

「あれ?ランスはどこに行ったのだ?」

食卓にランスの姿がない。私はニーナに尋ねる。

「厨房でマリーさんをこき使っているわよ。」

「マリーの温和な性格なら大丈夫だろう。」

「それよりもメアリーの風邪はまだ治らないの?」

「いや、かなり回復している。今日は狩りには行かずに修業をするから無理をするなと伝えておいたのだ。」

「そう、良かった。」

バキッ!!!

厨房から鈍い音が響いてくる。
私はイヤな予感がして厨房を覗く。

「な、何をするんだ?この暴力女!!」

やっぱり・・・・・。

「私とマシューさんの料理にケチをつけるなら食べてもらわなくても結構です。」

忘れてた。マリーは【食】が絡むと性格が激変するのだった。
私は何とかマリーをなだめてランスを厨房から連れ出す。

「おい、あのお手伝いはクビにしたほうがいいぞ。メイドとしてなっていない。」

私はランスの服を掴み持ち上げて言う。

「マリーはメイドなどではない。私の大切な仲間だ。仲間を侮辱するやつは許さない。」

「ちょ、ちょっとエバンス、やり過ぎよ。」

私はニーナになだめられ冷静になる。

「すまない、やり過ぎた。」

「・・・・・・・・・」

「ねえ、私達、今日は修業をするんだけどランスも一緒にやらない?」

ニーナは気を使いランスを修業に誘う。

「ま、まあ、どうしてもと言うならお前達を指導してやってもいいぞ。」

「そ、そう。是非お願いするわ。」

言葉とは裏腹にニーナは拳を握りしめている。

「朝食の準備ができましたよ。」

私達は朝食を済ませて修業の準備に入る。

「まずはウォームアップからだ。ランスは無理してついてくることはないぞ。自分のペースでやればいい。」

「お前達庶民に僕が遅れをとるわけがないだろ。さっさと始めるぞ。」

ウォームアップを始めるが案の定ランスは全くついてこれない。

「ランス、大丈夫か?」

「人の心配よりも自分の心配をしたほうがいいぞ。お前もハンターではない暴力女と貧乳に負けているではないか。」

「あの二人は特別だ。それよりも本当に無理はするなよ。」

「うるさい、僕に命令するな。」

ランスは命令されるのが嫌いらしい。意地になりウォームアップを何とか終わらせる。

「はあ、はあ、はあ。お、お前達はこんな生ぬるい修業しかしていないのか?」

「ウォームアップくらいで肩で息をしている人間のセリフじゃないわね。」

セフィリアが呆れ顔で言う。

「ハンターでもない人間が偉そうに言うな、貧乳。」

バキッ!!!

「がはぁっ!!!」

ついにセフィリアも我慢の限界のようだ。

「ぶ、無礼者。僕を誰だと・・・・」

「お師匠様。私も修業に参加します。」

元気になったメアリーが私達のもとに駆け寄ってくる。

「メ、メアリーお嬢様!?」

お嬢様?どういうことだ?

「ランスじゃない?ここで何をしているの?」

「メアリーお嬢様こそ、え?お師匠様って・・・この男がですか?」

明らかに私達への態度とは違う。

「メアリー、知り合いか?」

「はい。」

「こら、お嬢様に何と言う口の聞き方を。」

「お師匠様なんだから当然でしょ?」

「そ、そうですね。失礼しました。メアリーお嬢様の母上のアリス様は僕のお父様が所属するハンター部隊の隊長様なんだ。」

なるほど、お父さんの上司の娘、所謂(いわゆる)権力者には弱いのか。

「お嬢様がいらっしゃるということはアリス様も?」

「ううん、私だけよ。」

ランスはホッとする。

「で、ランスはどうしてここにいるの?」

「は、はい。許婚(いいなずけ)のアシュリーを迎えに来ました。」

「許婚?アシュリー、本当なの?」

「親が勝手に決めたことだから・・・・・・」

「つまり、アシュリーはイヤなのね?」

「うん、結婚なんてまだ早いし私には好きな人もいるし・・・・・」

「ということよ。アシュリーが望まないのなら私も絶対に反対よ。」

「わ、わかりました。帰ってお父様と相談します。」

ランスは今までのランスとは思えないほど小さくなり肩を落として故郷へと帰っていく。

「まさか、メアリーとランスが知り合いだったとは・・・・・」

「ランスって口ばっかりですから私もあまり好きではありませんけど。」

全員メアリーの言葉に頷く。

「とにかく帰ろうか。」

私達は家に戻る。

「やっと平穏な日常に戻るのね。」

セフィリアがホッとした表情で言う。

「お師匠様、どうしたのですか?少し淋しそうな顔をしていますね?」

「いや、セフィリアとニーナに面と向かって貧乳と呼ぶ者がいなくなるとやはり淋しいな。」

「へ〜、馬鹿ハンターも言いたかったの?いいわよ、言ってみなさい。」

セフィリアとニーナが指をポキポキと鳴らし私の目の前に立つ。

「い、いえ、そんな滅相もない。そんな怖い顔をしたら美人が台なしですよ。」

「問答無用!!!」

「ぎゃぴ〜〜〜〜!!」


・・・・つづく。

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