第2巻ユ
□第37話 自由な時間a`
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私は昨日のイャンクックとの戦いにより左足を負傷してしまった。とはいえ、名誉の負傷であり言わば労災だ。私は自由な時間を満喫することにする。まずは・・・・もちろん睡眠だ。いつもは早くに起こされるが流石に今日はゆっくりさせてくれるだろう。
「エバンスさん、起きて下さい。朝食の用意ができましたよ。」
「おい、マリー。私は怪我をしているのだぞ。調査には行けないのだからゆっくり寝かせてくれないか`」
「エバンスさんの調査は私には関係ありません。私に関係あるのは冷めないうちに朝食を食べていただくことです。」
結局、私はマリーに無理矢理起こされ朝食をいただく。
起きてしまったものは仕方がない。次の自由な時間と言えばやはり釣りだろう。このポッケ村には穴場が結構多いのだ。
私はセフィリアが研究室に入ったのを見届けると奥に隠してある釣竿を取り出す。
そのとき・・・・
「あ、そうそう、馬鹿ハンター。調査に行けないならせめて謎のハンターの情報を集めてきなさい。」
無論、セフィリアに逆らえるはずのない私は釣りを諦め謎のハンターの情報収集に向かう。
「あ、ポントさん、この村で弓を持った人に出会いませんでしたか`」
「おお、センサーの兄ちゃんだべか。弓`いんや、見ないべさ。そういう情報なら酒場に行くのが一番エエべ。」
いつになったらポントさんは私をハンターと呼んでくれるのだろうか`
しかし、酒場とは良いヒントをもらった。早速向かうとしよう。
・・・・・忘れていた・・・・この村の酒場の主人を・・・・
「おお、兄ちゃん、相談に乗るべ。」
「え`相談`私はただ・・・・・」
「わかってるべ。セフィリアちゃんかマリーちゃんかどっちと結婚するか悩んでるんだべ`」
「はあ`どちらとも結婚なんてしませんよ。」
「アルバートから聞いたべ。兄ちゃん、マリーちゃんとデートしてたんだべ`セフィリアちゃんは知ってるべか`」
ああ、あの時のことか・・・・・・。
私はあの時の経緯を説明するがドンパさんは一人で盛り上がっている。
私は静かに酒場を去る。
「あら`ハンターさん、どうしたのですか`こんな所で`まだ怪我も治ってないんですから家でゆっくりしていてください。
私は感動して涙が溢れ出る。
「ちょっとどうしたのですか`」
「ありがとう、フローラ。君だけだ。私を怪我人として見てくれているのは・・・・・」
「え`そんなことないですよ。マリーなんて本気で心配して私にエバンスさんの怪我は治るんですか`って必死に聞いてきていたわよ。セフィリアもマリーが心配している横で興味なさげにしていながら私達の会話をしっかり聞いていたわ。」
そうだったのか・・・・それなのに私は怪我をしたことを良いことに自由な時間を作ろうと・・・
私は少し反省した。
「ただいま、やっぱり謎のハンターの情報は無かった。」
「ええ`ちゃんと本気で探したの`本業ができないんだからそれくらいはしっかりしなさいよ。働かざるもの食うべからずよ。」
「そうですよ、エバンスさん。おかげで今日のメインのおかずを考えるの苦労したんですよ。」
先ほどの反省は取り消す。そもそも食費は私のお金だ。なぜセフィリアとマリーにそこまで責められなきゃいけないのだ。
「イヤなら早く怪我を治しなさい。無理すると余計ひどくなるから絶対無理はしないこと。いいわね`」
「そうですよ、エバンスさん。私とマシューさんもヤケドに効く薬を探していますから無理はしないでくださいよ。」
私はセフィリアとマリーの優しさに感動を覚えた。
「ああ、わかっているさ。無理は絶対にしない。マリー、マシュー。薬よろしく頼む」
私達は照れ笑いをしながら食卓へ向かう。
・・・・その夜。
「大丈夫だったべか`あの傭兵も外をうろついているようだべが`」
「大丈夫です。彼も村の中を歩くのが精一杯でしょうから。」
「しかし万が一にも鉢合わせたりしたらどうするべ`」
「その時には彼にだけ本当の事を話してはいかがでしょうか`」
「それはダメだべ。わがまま言って悪いべが・・・あの傭兵にもバレずに頼むべ。」
「まあ、それが約束ですから・・・・何とかしてみます。」
・・・・・つづく。