小説
□狩る者、狩られる獲物
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獲物は、逃げるからこそ、捕らえがいがあるというものだ――。
『狩る者、狩られる獲物』
その翡翠は私の姿を映すために。
その耳は私の声を聴くために。
その口は私に愛を囁くために。
その腕は私にぬくもりを与えるために。
その身体は私に抱かれるために。
――その微笑みは私だけのために。
そう。
全て、全てが私のものだ。
穢れない、無垢で純粋な私の、漆黒の天使。
何をしても、穢れを知ることのない。
だからこそ。
穢したい――。
追い詰めて追い詰めて。
何も考えられなくなるほどに。
その、大きな瞳から止めどない涙を。
たとえ、拒絶の言葉を口にしても。
深い深い、快楽の淵へ。
堕 ト シ タ イ
そんなどす黒い欲望が、私のなかを駆け巡る。
だけど。
まだ。
はやい。
青い果実が熟す、その時まで。
―――私はお前を、待っているとしよう。