目覚めの時
□第1章
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昌浩は『必ず、平成の世で会おう』と言い残して、彰子の許へと逝ってしまったのだ。彼等、十二神将は泣いた。特に、紅蓮は昌浩の死を受け止めることは出来なかった。受け入れ始めたのは、それから2年後だった。
「清明の孫。早く起きろ。陰陽寮に行く刻限だぞ」といつもの物の怪の姿で言っていた。
『孫って言うな!物の怪のもっくん』と起きながら言う昌浩の姿を見ていた。
しかし、その言葉で返ってくる声はいなかった。
彼は、ぽつんと昌浩の部屋に取り残されていた。
神将達もまた、その姿に涙した。昌浩を育て、支えていたのは、紛れもなく、騰蛇だったのだから。彼の痛みをよく知っていた。彼等は、今度は騰蛇を支える番だと思った。
その時間は2年もかかってしまった。
漸く、彼は泣いた。
「なんで、昌浩は死んでしまったのか」
「まだ、生きれたはずなのに」
と彼を支える昌浩がいなくなってしまったのだから。
「昌浩は気付いていたぞ。騰蛇」と切り出したのは勾陳だった。
「何をだ?」と紅蓮は言う。
「昌浩は私達に騰蛇、お前を育ての神将なのかと聞かれた」と明かす勾陳。
「俺や天貴にも聞かれたぞ」と朱雀は割り込む。
「俺にも聞かれたかな。そのような内容」とブツブツ言う白虎。
「私にも」「我にも聞かれたぞ」と多々言う神将達。
「いつから、その事に?」と消え入りそうな声で喋る紅蓮。
「清明が引退して、稀代の陰陽師になった時だ」と話す勾陳。
「この事は、お前には話すなと言った」と続ける。
「昌浩ぉ」と嘆く紅蓮。
千年は彼等にとっては、長いような、短いような時だった。
清明が亡くなった後は、昌浩に付き、昌浩は皆と普通に接してくれた。
彰子もまた、神将達を怯えることなく、普通にしていた。
彼等が亡くなった時から神将達の時間はストップしてしまったのだった。
神将達は思った。
『あの頃のように、笑い合える者が現れたら』