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□2人だけで出かけようか?
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俺は、こうみえてけっこう朝に強いほうだ。起きたらすぐに覚醒できるしどちらかといえば早めに目が覚める。金蝉のぶんの朝飯とかも作らなきゃいけないし。

だけど、たまに例外な日だってある。


「ふわ、ぁ…」


いつも通りに起きたはずだった。大きく欠伸をして、ぐっと伸びをして。
寝る前はきちんと俺を包み込んでいたはずの布団は床に落ちている。きっと寝てる間に俺が蹴り飛ばすなり何なりしたんだろう。寝相の悪さはどうにもならない。
それをとりあえずテキトーにベットの上にのせてから、ふと横におかれた時計を見てみる。


長針は1をさし、短針は8を少し過ぎたところだった。8時、5分


「…え」


思わず唖然とする。学校には8時半までにつかなきゃダメなんだ。普段の俺の登校する時間が、今この時間だった。


「遅刻だぁああああああああッッ!!」


俺は叫ぶなり、自分でもびっくりするくらいのスピードでパジャマを脱ぎ捨て制服に袖を通した。金蝉に見つかったら叱られるけどそんなことかまってられない。
朝飯は学校についてから購買で何か買って食べるとする。そうじゃないと間に合わない。
軽く顔を洗ったり歯を磨いたりしてから、薄いカバンを掲げて「行ってきます!」と一応声だけはかけてから俺は玄関を出てすばやく自転車に乗った。


「とばしていけばギリギリの時間にはつく!…といいな」


つい願望形になってしまうのはもう仕方ないかもしれない。朝だからか、それとも時間が遅いせいか人の姿はいつもよりも少ない。だけどそれはとばすには好都合だった。俺はどんどんスピードを上げていく。


「それにしても、金蝉もたまには俺のこと起こしてくれればいいのに」


文句を言っても仕方ないけど、やっぱ言わずにはいられない。だけどそれは絶対無理なことだと知っていた。
だって、金蝉はいつも俺より遅く起きる。…というか正確に言えば俺が起こしに行かないと起きない。俺とは対照的に金蝉は朝が弱かった。
俺が起こさないとだいたい昼過ぎまで寝てる。今日もきっとそうだろう。

いつのまにか家から学校まで、ちょうど半分のところまで来ていた。この調子なら間に合うかもしれない。心の中でガッツポーズをして、そのまま進んで行こうとした。


「わっ!?」


俺は短く悲鳴をあげる。そのとき、いきなり曲がり角から人が飛び出してきたんだ。もうかなりのスピードが出ているから、こんな状態で人にぶつかったらその人はひどい怪我をするかもしれない。それだけは避けなければと、俺はブレーキを押したが間に合わなさそうだ。

こうなったら最後の手段。俺は思いっきりその人とは反対の方向に自転車をずらした。勢いあまって目の前の塀へとぶつかる。その反動で俺は自転車から転げ落ちた。何ヶ所か擦りむいたのかズキズキと痛む。


「いってー…っ」
「おい、平気か」
「俺は大丈夫だけど………あれ?三蔵?」
「ああ」


俺の目の前に立っていたのは三蔵だった。俺がぶつかりそうになったのは三蔵だったらしい。
俺は立ち上がって軽くズボンの汚れを払った。


「どうしたんだよ、こんな時間にこんなとこ歩いてるなんて。三蔵も遅刻?」
「まだ間に合う」
「いや…この時間からじゃもう無理じゃね?」


今のでけっこう時間をくった。今からじゃどれだけ急いでも遅刻は免れないだろう。三蔵も自分の腕時計で時間を確認してから溜め息をついた。


「仕方ねえな。今日はサボるか」
「遅刻しそうになったらサボるのかよ!?」
「当然だろうが」


おい、それでいいのか生徒会長。

俺は呆れながら自転車を立て直して跨る。幸いどこも破損してないみたいだった。俺はこのまま遅刻覚悟で学校に行こうと思ってたんだけど、急に後ろに重さがかかる。


「さ、三蔵?」


振り返れば三蔵が何食わぬ顔で座っていた。俺の自転車は都合よく二人乗りするには最適のデザインだ。…まさか。


「俺がサボるんだ。お前もサボれ」


やっぱりそう来たか!
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