Novel

□夜空に咲く花々の下で
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夏祭りの終盤は、一段と賑わう。


ドォォォォン・・・


吸い込まれるような深い夜空に

舞う花。

散る花。

咲く花。


それは大切な人と寄り添う時間。



「・・・雲雀さん」

「何?」



呼ばれた方に顔を向けると

花火に照らされた彼が優しく微笑んでいた。




今、瞬きをした瞬間に居なくなっていそうなほど



居なかったことが当然のように消えてしまいそうなほど



それはあまりにも





儚くて





綺麗で・・・―――





思わず腕の中に閉じ込めていた。




「ひば「ごめん。綱吉」




戸惑うように名前を紡ぐ声を、遮る。

共に腕に力をこめて。




「ごめんね・・・ごめん・・・」

(消えそうな君を見ていられないんだ)


「僕は君を離すことが・・・絶対に出来ない・・・」

(こんなにも好きになっ
てしまった)


「君が居ない世界なんて・・・・・・想像しただけで苦しくなる・・・」

(ただ広いだけの空間に自分一人がいることに、君と出会う前は平気だったのに)



雲雀の呟きに綱吉は頬を相手の胸に埋めた。



「俺も雲雀さんがいない世界でなんて、存在できないですよ・・・?」



言い終わると目を合わせ



ふわり、と・・・



今にも涙が零れそうになっている瞳を細め薄く笑う姿を雲雀は見た。



『泣きそうに笑うくらいなら泣いちゃえばいいのに』


そう思ったがすぐに違う、と訂正する。


『泣きそうな顔をしてほしくないんだ。笑っていてほしいだけ・・・』



く、と綱吉の顎を持ち上げ、鼻先が触れるか触れないかまで顔を近づける。



「離さないし消えさせない。ずっと君は僕のモノだから」



了承の言葉を言う代わりに、綱吉は瞳を閉じた。




「・・・・・・・・愛してるよ・・・綱吉・・・・」



重なり合う唇。

重なり合う影。





その瞬間


夜空に二つの花火が上がった。


寄り添うように、高く高く昇っていく。







消させない。離さない。君は僕のモノ。


だから


君はずっと笑ってればいいんだよ・・・―――






fin
 

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