World End
□第9話 「旅の途中」
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第9話 「旅の途中」
桜の花もとうに散り、青々とした葉を茂らせ風に揺れている。
まだまだ夏は遠いものの、動けば汗ばむ春の陽気に、実治は額の汗を拭った。
五日前、東京を後にし、島根へと向かう列車に乗り込んだ尚護たちは、未だ、島根に着いてはいなかった。
東京から島根へは、国を横断している列車に乗り続ければ、一日半で辿り着けるが、訳あって京都で途中下車し、京都地区の守護寺に居た。
「少し、休憩しよう」
膝に手をつき、肩で息をしている実治に、尚護はタオルを差し出した。
「…っは…、…う、ん」
出されたタオルを受け取りつつ、切れ切れに、何とか返事を返す。
半ば崩れるようにその場に座り込み、未だ早鐘を打つ心臓を落ち着かせようと、実治は大きく深呼吸した。
「はぁ〜…」
両手を後ろの地面につき、空を仰ぐ。
憎らしいほどの快晴だった。
これが曇りだったなら、まだ、辛さも違うのかもしれない。
しかしながら、雲一つ無い春晴れとあって、容赦なく照りつける太陽に、目を眇めつつ、実治は睨みつけた。
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