World End

□第12話 「悲しみの後で」
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「住職と師範代が二人も居て、何やってんだか」


ここは、尚護達が宿泊している東の離れ。

茫然自失の尚護を寝かしつけた後、周臥、将汰、紅麟の三人は今後について話し合っていた。

そこに突然、三人以外の声がかかったのである。

驚いた将汰が声のした方を見遣ると、入り口に寄りかかってこちらを見ている人物がいた。

そして、何故か、入り口を警護しているはずの初音と雪音が、後ろに控えている。

見た事のない人物だったが、誰かに似ている気がすると、将汰は思った。

「こうなることくらい、予測できただろうが。

なぁ、兄貴?」

その人物は紅麟に向き直り、含みのある視線を送る。

「紅麒…」

紅麟は、その視線から逃れるように目を伏せ、息を一つ、吐いた。

「とりあえず、こちらに座れ、紅麒。

お二人に挨拶するのが先だろう」

紅麒を自分の隣の席に促し、周臥と将汰に向き直る。

「周臥殿は何年振りかですか…将汰殿は初めてですね。

私の双子の弟、紅麒(こうき)と申します」

紅麟が紹介すると同時に、軽く会釈し隣に座った。

「周臥、久しぶりだな」

にこりと愛想の良い笑みを浮かべ、周臥に話しかける。

「で。

どうなんだ?」

「どう、とは?」

紅麒の突然の問いにも動じず、周臥もにこりと笑みを返す。

「…ふん。相変わらずだな。
掴みどころのねえカオしやがって」

「お互い様だろ」

にこにことポーカーフェイスで、腹の探り合いをしている二人は、端から見ると異様である。

先に折れたのは紅麒の方だった。

「…尚護はどうした」

笑みを収め、本題を振る。

「隣で寝てる。

余程ショックだったんだろう。憔悴してるよ」

周臥は辛そうに目を伏せた。

「ふーん」

言いながら紅麒は、ガタリと席を立った。
三人が紅麒を目で追う。

「起こしてくる」

ちらりと三人を一瞥し、紅麒は隣の部屋に向かった。

「待て!紅麒!」

紅麟が慌てて紅麒の腕を掴む。

紅麒は面倒くさそうに振り返り、その腕を払った。

「何で?」

鋭い視線に怯むことなく、紅麟は相対する。

「周臥殿の話を聞いてなかったのか?
尚護殿は今…「だから?」

紅麟の言葉を遮り、紅麒は何でもない事のように言った。

「また暴走するかもって?

…あいつはそんなヤワじゃねぇ。
同じ失敗なんてするかよ」

そう言って隣室の扉に手をかける。

「それに」

振り返り、ニヤリと笑い、

「兄貴達も、同じ失敗はしねえだろ」

スラリと扉を開け放った。

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