海賊-
□Happy…?
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階段を下りて、ゾロの目の前に、ゆっくりとしゃがみこむ。
うわ、なんてぇ睫の長さだ、ああやっぱり鼻筋通ってんなぁちくしょう、おいおいんな大口開けて寝てたら舌入れちまうぞ…。
滅多なことじゃ起きやしねぇし、と思って煙草を指に挟み、顔を近づける。
他の人間が居ないことは確認済みだ。
あと数センチで唇が触れ合うというところで、ふいに目の前の瞼が開く。
ぎょっとしながらその場に固まると、翡翠色の瞳が不思議そうに瞬いた。
「……何だ、お前」
「…いや…悪戯してやろうかと…」
言いながら、苦し紛れに煙草の煙を吹きかけると、不意打ちを食らったゾロがげほごほ咽ながらすごい勢いで睨み付けて来た。
「っ何しやがんだテメエ!」
「あ、や、悪ィ…」
思わず素で謝ると、ゾロが困惑気に眉を寄せた。
「…何か、悪いもんでも食ったか…?」
「…テメエ、よりにもよってそれを俺様に向かって言うか!?」
「いや、何となく…」
「あー…いや待て。別に喧嘩してぇわけじゃねぇんだ。悪かった」
もう一度謝ると、「ん」と頷いてゾロが伸びをした。
隆起する筋肉の動きに思わず目が釘付けとなる。
「…そういえば…」
ぽつりと独り言のように零れた声に、ハッとしてゾロの顔を見る。
「…明日、お前誕生日なんだろ?」
「…ああ」
「何、欲しい?」
「へ…っ!?」
「…あんま、金はねぇんだけど…本人が欲しくねぇもんやったって、しょうがねぇし…だから…」
言いながら恥ずかしくなってきたのか。
段々と頬を染めながら視線を逸らすゾロを呆然と見つめる。
鼓動がでか過ぎて、止まっちまいそうだと思う。
ああ、バカ、なんてこと言い出すんだちきしょう。
そんな、そんな可愛いことを言われたら。
……つけこみたくなってしまう。
「……ゾロ」
呼びかけて、何だ、というように顔を上げるゾロの顎を掴む。
「…?何…」
「俺の欲しいもん、何でもくれんの?」
「…金がかかんねぇもんなら」
「んなもん全然、かかんねぇよ」
言いながら、ニッと笑う。
「…ゾロを、ちょうだい」
「!?」
息を詰めて目を見開くゾロに、ぐっと顔を寄せる。
「…何も取って食おうってんじゃねぇよ?…そうだな、ゾロからのチュウが欲しい。ね、キスして?」
わざと声を落として、甘えるように耳元で囁いてみる。
馬鹿じゃねえのと突っぱねられるか、しょうがねえと受け止められるか。
我ながら、随分と自虐的な申し入れをしたものだと嗤う。
見つめあう先で、ゾロの瞳が細められた。
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