海賊-

□Nude
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ふんわりとした湯気に包まれながら、チョッパー用のブラシに手渡された「ノミ取りシャンプー」と表記されたシャンプーを搾り出し、膝に抱いた小っこい身体を丁寧にブラッシングしてやる。
モコモコだった毛がイイ匂いの泡に塗れ、やがて湯で漱いでやる頃にはすっかり身体に張り付いて、ルフィが言っていたようにツルツルになっている。
動物の赤ちゃんを洗ってやったらこんな感じなのだろうか、と愛しく思ってよしよしと頭を撫でてやると、湯が入らないようにと目を押さえていた踵を離したチョッパーが、ふと不安げに自分を見上げてきた。

「…なあ、ゾロ…」
「…ん?ルフィたちより、洗い方下手だったか?」
「ううん、すごく気持ちよかった。…けど、サンジ、すごく怒ってた…。俺、ゾロと一緒にお風呂入っちゃ駄目だったのかな…」

濡れそぼった身体は、いつもよりさらに一回りその身体を小さく見せていて。
その酷く頼りなげな様子で、しょんぼりと涙を溜めて俯かれてしまうと、まるで自分が悪いことをしてしまった気持ちになってくる。

「…すまねぇ、俺がいきなり一緒に風呂入ろうとか言ったから悪いんだ。お前、皆に好かれてるんだなぁ…」

自分とは大違いだ、と苦笑を浮かべて頭を撫でてやると、びっくりしたようにチョッパーが顔を上げて目を丸くした。

「違うよ、ルフィが言ってただろう?『俺もゾロと一緒に入りたい』って!ルフィはきっと俺よりもゾロと入りたいと思ってたんだよ」
「……そうか…?でもコックはきっと、お前と入りたかったんだ。…じゃなきゃ、あんな目して、あんなふうに怒らねぇだろう」

さっき自分に向けられた、刺すような視線を思い出す。
何を言い出しやがる、と憎憎しげに凝視された瞬間を思い出せば、軽率だったかと恥じるよりも先に、困惑と哀しみで心が萎縮してしまう。
やり場のない困惑は、哀しみともなんともつかない痛みになってジクジクと胸を締め付ける。
それでも苦笑を浮かべる以外、自分には術がなくて、困ったように自分を見上げてくるチョッパーにもやっぱり苦笑を見せるしかない。

「違う、違うよゾロ。サンジが怒ったのは確かにゾロが俺と風呂に入ろうって言ったからかもしれないけど、それはサンジが俺と風呂に入りたいからとかそういうんじゃないよ…。たぶん、たぶんな、きっとサンジはゾロと風呂に入りたかったんだと思う…」
「…そりゃ、有り得ねぇよ。あいつの女好き加減は、お前も知ってるだろう?お前ならともかく、男の身体見たって気色悪いだけだろうよ」
「そんなことないぞ!ゾロの身体は傷だらけだけど、でもすごく奇麗だ!それに、それに、俺ゾロと一緒に風呂入れてすごく嬉しいぞ!」

小さな踵を必死にばたつかせながら、懸命にチョッパーが訴えてくる。
そのもどかしげな表情に、ああ困らせてしまっているのだと思って、とりあえずその身体をぎゅっと抱きしめてみる。

「…ありがとな、チョッパー。俺も、お前と風呂入れて嬉しい。…でも、俺とはもう一緒に入らねぇ方がいいかもしれねぇ」

あんなに雰囲気が悪くなってしまうのなら。
悪ぃ、と呟いて角に頬を寄せると、ふるふると首を振ったチョッパーがぽつんと涙を零した。
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