パラレル-

□乳白色に想いは隠れ
1ページ/2ページ


家中の電気を消して、蚊取り線香を炊いた縁側に腰を下ろす。
盆の上の汗をかいたグラスの中で、溶けかけた氷がカランと鳴った。
日中よりは暑さの和らいだ夜気に響いたその音は、風がないため鳴らない風鈴代わりに心地よく耳に涼を齎した。

梅雨を吹き飛ばしていきなり真夏にでも突入したかのようなここ数日の猛暑に、寄るな触るなウザイと散々ツレナイ態度を取ってきた愛しい愛しい恋人も、今日くらいは大人しく寄り添ってくれる気らしい。
肩や肘が触れ合うほど傍に座っても、思い切って肩を抱いてみても、渋い顔をせずに夜空を見上げている。

「今年は晴れてよかったな…」
「ここ数年ずっと雨続きだったもんな。数年ぶりの再開に、今頃きっとお空の上ではめくるめく逢瀬の真っ最中だぜ〜」
「………」
「あっ、なんだよその心底呆れましたーみたいな眼は!俺だってねぇ、ここ数日のあんたの所業には思うところがあるんですー。」
「…暑いんだから、仕方ねぇだろうが」
「…暑くても、俺はあんたに触れないほうが嫌。空の二人じゃあるまいし、折角同じ空間に好きな人と一緒に居るのに天候で妨げられて堪るかってんだ」

抱いていた肩を胸元に向かい合うように引き寄せ、熱い身体をぎゅっと抱きしめる。
こんなふうに抱きしめるのも許してくれなかったのだ、恋人の自分には少しくらい怒る権利があると思う。
愛が、足りないと。

「…ねぇ、暑いけどさ、こうやってくっついてるの俺はすごく気持ちいい。他の奴にくっつかれるのはウザイだけだけど、好きな人の体温ってそれだけでもう愛しいし、愛し合ってるときのこと思い出してすげぇ幸せな気分になる。……ゾロはそうは思わないかもしれねぇけど…」

あ、駄目だ、自分で言ってて虚しくて涙でそう。
困ったように答えあぐねる顔が見たくなくて抱き込んだ項に顔を埋めると、石鹸に混じって汗とゾロの匂いがした。
くんと鼻を利かせて、べろりと舐める。「うひゃっ」とか何とか色気のない声が聞こえたけれど、知らないふりでもう一度舌を這わせて。
舌を焼く塩辛さに、口の中に唾液が溜まった。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ