パラレル-

□たとえばこんな真冬の空に
1ページ/1ページ



「冬ってのは、晴れた日の方がむしろ寒いってホントだなー」
さみぃさみぃと呟きながら、ザックザックと氷を踏みしめて歩く。
見上げれば、青みの薄い白々とした空が、高く高く広がっていて。
雪に反射してやたらと眩しい視界に、白い吐息が映った。

「……なぁ、すっげぇ寒いよな?」
「……序の口だろ」

ニヤニヤしながら尋ねたサンジに、ゾロが、フンと鼻で笑って白い息を零した。
サンジの額にビキンと青筋が浮かぶ。

「強がってんじゃねぇよ、テメーだって寒ぃくせに!お鼻真っ赤で随分とまぁ可愛らしいでちゅね〜っだ!」
「あ!?そういうテメーは頬っぺた真っ赤でリンゴみてぇにぷっくらしてんじゃねぇかコラ!赤ちゃん言葉のガキンチョは、おウチで大人しく留守番してな!」
「カァッチーン。バカ、テメエ、泣かすぞクソマリモ!」
「返り討ちにしてやるよ、へっぽこ眉毛!」

道のど真ん中でぎゃあぎゃあと怒鳴りあい、ハアハアと息を整えながら、唇を尖らせて暫しの間、見つめあう。
鼻先をくっ付けあっているため、いつもスカした面構えのゾロが寄り目になっているのが妙にウケる。
ガキ臭い表情をしていても、こんなに可愛らしいなんて詐欺だ。
犯罪だ。
最低だ。
こんな色気も素っ気もない奴に、こんな色気も素っ気もない道路のど真ん中で、チュウしたくて堪らなくなるなんて。

ふいに目の前のゾロが、プッと噴出した。

「…プッ、お前口尖らしてっとアヒルみてぇ!笑う!」

指を指して笑い出すゾロが、目茶苦茶憎たらしくて、項に素手を突っ込んでやる。

「ぎゃっ、うわっ冷てっ!」
「う〜ん温け〜わこりゃ」

抱き込むような体勢で、項から突っ込んだ手で背骨をなぞると、暴れていたゾロがビクんと身体を捩じらせた。

「うおっ!?やっ冷てぇっ!あっ、擽ってぇ…って」
「ん〜?ゾロちゃんてば擽ったがりだっけ?」

耳元に囁くと、悔しそうに睨み付けてくる。

「……早く抜けよ」
「え〜」
「え〜、じゃねぇ!も、ヤダ、早く抜けっ」
「…でも、もう手、冷たくないでしょ?ゾロの体温と一緒だぜ?なんで嫌なの?」
「……擽ってぇって言ってんだろ」

真っ赤になって顔をそらすゾロの様子に、やりすぎたかなとこっそり思う。
項から手を抜き出して、ふわふわのゾロの髪の毛をクシャクシャと撫でると、拗ねたような目つきでゾロが睨んできた。
ありゃ、と思わず笑ってしまう。
ゾロの睨みが益々きつくなる。けれど。
……目ぇ潤んでちゃ、可愛いだけなんだよなぁ。
ニマニマとほくそ笑みながら、ゾロの身体をキュウっと抱きしめる。

「…何すんだよ変体眉毛!」
「…ねぇゾロちゃん?擽ったいのと感じちゃうのって…感覚似てるって知ってた?」
「……っ知るか」
「…寒いよねー…お土産買いに行くの明日にして、今日は旅館、戻ろっか」
「…俺は買い物行くっ」
「おバカ、お前一人じゃ絶対に旅館にたどり着けませんー、ってことで却下。…旅館についたら可愛がってあげるから…それまで我慢ねv」
「…っっっ死ね!」

沸点すれすれまで真っ赤になったゾロから、鳩尾に強烈な一発を食らって、笑いながらゾロを放す。
あークソッ!だのなんだのとブツブツ呟きながらゾロがさっさと先を歩いていく。

殴られた鳩尾は痛いけれど。

サンジはニマニマとした笑いが止まらなかった。

笑いながら、ゾロの後を追いかけた。




END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ