海賊-
□Happy…?
1ページ/4ページ
『…欲しいもの、ですか?』
『そう。来週サンジ君の誕生日でしょう?前日辺りには次の島につくはずだから、何が欲しいか考えておいてね』
『…はい、ありがとうございます、ナミさん…』
一週間前の会話を思い出して、サンジは溜息をついた。
昼食の後、紅茶を飲みながらナミが、予定通り明日には島に着くと嬉しそうに言っていた。
可愛い女性の笑顔は微笑しい。
ついつられて微笑むと、ナミは満足そうにキッチンを出て行った。
誕生日を祝ってくれるという皆の気持ちは、とても嬉しい。
これまで誰かの誕生日を祝ったことはあっても、自分の誕生日を祝ってもらったことはなかったから。
でもだからこそ、嬉しくて擽ったいような気持ちと、この歳になって今更という気持ちが綯い交ぜになって、何だか酷く複雑な気分だ。
正直、自分がどんな表情をしていればいいのかわからない。
(欲しいもの、ね…)
そんなもの、決まっている。
欲しくて欲しくて堪らなくて、これだけは絶対誰にも譲れない、諦められないもの。
でもそれは、誰かに貰うようなものではなく、自分の手で手にいれなければならないもので。
(ゾロ…)
アイツも、自分に何かくれるんだろうか。
ナミにどやされて、仕方ねぇなって、普段あんまり使わない脳みそ振り絞ってさ。
たとえばそれを買いに行って、いつもみたく迷子になって、パーティーに遅れてきやがっても、その買ってきたものがとんでもなくツマラナイものだったとしても……きっと酷い悪態をさんざんつきながらも、自分はそれをクソ大事にするだろう。
アイツが自分にくれるものなら何だって、嬉しくて愛しくて、最高の宝物になる。
それを見る度に、アイツがくれた時の表情や仕草や言葉まで、つぶさに思い出して、ふにゃふにゃとニヤける口元を押さえられなくて。
アホみてぇな、でもマタタビ貰ったネコみたく、クソ幸せそうな面して笑っちまうんだ、きっと。
想像の中の自分があまりにも幸せそうで、サンジは、ヘヘ、と笑った。
一息つこうかと鍋の火を落とし、キッチンを出て、煙草を取り出す。
日差しがポカポカと穏やかで、格好の昼寝日和だ。
煙草の火をつけながら甲板を見下ろすと、案の定ゾロが船縁に寄りかかるようにして眠っていた。
なぜか上半身が裸で、その手にはダンベルが握られたままだ。
どうやら、筋トレをしている途中、少し休むつもりがこの陽気に誘われて、うっかりとそのまま眠ってしまったらしい。
無防備といえばあまりにも無防備な姿に柄にもなくときめいてしまう自分が悔しい。
柔らかい胸があるわけでもない、傷だらけのごつい胸板を見て、欲情しているなんて。
ああなんてこと。
まさに晴天の霹靂。
クソジジイまでも唸らせるほどの女好きのこの自分が、男に欲情…ああホント、世の中何が起こるかわからねぇ。
.