*素敵頂き物SSのお部屋*

□浅見美夕起様からの誕生日お祝い文
1ページ/1ページ



浅見様からの誕生日祝い文

---------------
『さくらさくら』


「うわぁ、綺麗ねぇ」
道の両側に植えられた桜の木。咲き誇るそれは思わず感嘆の声を上げるほど見事なもの
だった。
「桜…」
ぽつり、と呟いたゾロにサンジが視線を向ける。
「桜?」
「ドクターが見たかった花だっ!綺麗だなあっ」
チョッパーの目がきらきらと輝いた。
「へえ。綺麗なもんだな」
「美味いのかっ?」
「…いや、食うなよ」
わくわくと聞くルフィにウソップがびしっと突っ込みを入れる。わいわいと桜並木を歩く
クルー達から数歩遅れていたゾロが、ふと足を止めた。
淡い薄桃色の花びらの中に混じる、一房の紅。それは血の様に赤く、凶々しくゾロの目に
うつった。
歩を止めたゾロに気付いたサンジが踵を返し、寄ってくる。
「どうした?ゾロ」
サンジの声にも答えずに、ゾロはただそれを見つめていた。


『桜の木の下には死体が埋まっているの』
『だからあんなに綺麗に咲くのよ』
『殺された人の命を吸って桜は綺麗に咲き誇るの』


くすくすと。涼やかに響く声。その木の後ろから出て来た少女は………。
「くいな…」
「…へ?」
ゾロの目に、サンジの姿はうつっていない。
見えているのは幻の少女と紅い花びら。


『あなたが殺した人達も。どこかで花を咲かせているのかしら?』
『無益に流した血で。桜を綺麗に咲かせているのかしら?…ねえ、ゾロ。楽しかった?殺
すのは』


ひやり、と手に触れたのは少女の手。
実体のないはずの少女の手は確かに冷たかった。


『これからも殺すの?沢山の人を』
『大剣豪になる為に。たくさんの命を奪っていくの?…ねえ、ゾロ…』


「お…い…?ゾロ?」
強く腕を掴まれて、はっと我に返る。少女の姿はもうどこにも見当たらなかった。一房
あった筈の、紅い花びらも消えている。
「………ない?」
「どうした?ゾロ」
「………いや、何でも…」
見たのは確かにくいなだった。大剣豪を誓った親友。
そのくいなが。あんな事を言う筈がない。言う筈がないのだが………。
「惑わされたか?桜に」
「ゾロ?」
「…桜の木の下には死体が埋まっている」
「…は?」
「…と、いう話があるんだよ。俺の生まれた所では」
「…ふうん?」
「あまりに綺麗に咲くからそんな話ができたらしい」
「こんなに綺麗な花の下で眠れるなら悪くねえな」
さらり、と言って。サンジは煙草をくわえた。
「え…?」
「冷たい石の下にいるよりもずっと幸せだと思わねえ?」
「……ああ、そうかもな」
無意識なその言葉に救われる。ぽん、と背中を叩いてサンジがゾロを促した。
「行こうぜ?みんなが待ってる」
「…ああ」
歩きかけたゾロの唇を何かが掠めた。
それが何かを理解したゾロが顔を朱に染める。そしてもう一度、重ねられる唇。
甘やかなキスをして、サンジが笑った。
「愛してるぜ?ゾロ。あんたがどんなヤツでも俺はあんたを愛してる。例えあんたがどん
な大罪を犯そうとも、俺だけはあんたの味方だ。それだけは忘れんな」
「サン…ジ…」
「愛してる。俺の大事な剣士サマ」
「………バカコック」
サンジの言葉に苦笑する。こいつがいる限り、絶対迷いはしない。愛されてると信じられ
る限りは。
「残念だったな」
小さく言って。ゾロは先に歩いていたサンジに追い付き、肩を並べた。


はらり、と桜が花びらを落とす。
それは…血の様に赤い…
『残念。美味しそうだと思ったのにな』
呟いて。くいなの姿をした幻はふっと姿を消した。



-------------
☆【くりすたる★MOON】浅見美夕起様から誕生日祝い文を頂いてしまいましたー!ハワワ…!
「桜の下には死体が…」という懐古風童話ホラー+甘〜い二人という、何とも乙女心(萌え心とも言う)を擽るお話で、「はわわ、ゾロ、深窓意識囚われちゃ駄目だよ〜」とドキドキしつつ、ゾロに愛され尚且つその唇を奪った某金髪コックさんに思わず軽くジェラシーです…っハアハア。
一度は書いてみたいと思いつつ「ぬおお、あのお耽美な風情はどうやったら醸し出せるんですか!」と挫折してきたテーマのお話だったので、このお話を拝読した瞬間ハワワ!と胸の何かが軽くはちきれそうになりました(笑)くいなの幻に揺れるゾロも、「残念だったな」と呟くゾロもカッコイイのに可愛くて堪りませんっ。
浅見さん、勿体無くも素敵な二人のお話をプレゼントしてくださって、本当に有難うございましたーっ!!v


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ