*素敵頂き物SSのお部屋*

□ひと夜の華
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ひと夜の華  



それはとある島での出来事だった。

ログポースの導くままに船を進めていたゴーイングメリー号の面々は目の前の島を見るなり言葉を失った。
天高くそびえる大木が枝同士を絡めとるようにして作っている壁で島を囲んでいる。
一度島に入ったらその壁から出られないのではと思わせられるほど枝は隙間なく方々へ伸びていた。

果たして入り口は?と皆が首を傾げた時ハラハラと緑の葉が舞い降り、枝がスルスルと動いた。 
目を疑うほどのしなやかさでたちまち船を通すほどの入り口ができて自然に引き寄せられる。
抗うことも出来ない航路にとんでもない島でないことを約一名を除いて願った。
自然の力はどんな強敵よりも厄介だからだ。

そんな皆の気持ちを知ってか知らずか船長であるルフィは島に入るなり飛び出した。
あっけにとられるクルー達の前ですでに米粒と化した姿に一斉に溜息が出る。
 
「ほんとにルフィったら少しは慎重に行動してほしいものだわ。」

がっくりと肩を落としたナミにおずおずとチョッパーが近づいてきた。
チョッパーの目がいつになく爛々と輝いているのに気づいたナミがなぁに?と尋ねる。

「俺、さっき見たんだ。すっごい珍しい薬草。もっ、もしかしたらほかにもあるかもっ。」

すごい勢いで話すチョッパーに痛む頭を抱えてナミは答えた。

「ああ、もう。わかったわよ。」

結局チョッパーは薬草探しにゾロと。
サンジは食材探しに。
ロビンは島の様子を探りに。
そしてナミとウソップは船の番をすることになった。

*******

気がつくと一人だった。
それはいつものことだが得体の知れない奇妙そうな島ゆえにはぐれたチョッパーが心配だ。
早く探さなくてはと足早にそれでも慎重に進む。
かなり歩いただろうか、そう思ったとき急に視界が開けた。
どこもかしこも高い木々で覆われていたさきほどまでとはうってかわって膝下くらいまである草が
はるか彼方まで続いている。
とりあえず進んでみると湖が見えた。
その周りにはなにやら見たことのない植物が密集している。

・・・なんだろう・・・

頭の中で迂闊に近づいてはいけないと声がする。
しかし、どうしてか足が勝手にその場所へと動いた。
近づくにつれ鼻を満たす不思議なよい香り。
これほどまでに密集しているというのに自分を避けるかのようにできる道。
現れた湖は限りなく澄んで水底を覗かせていた。

・・・この気持ちは・・・?

ズルズルと引き寄せられるままに湖に足を踏み入れると天から光が零れてきた。
見上げると何故?と驚くほどの輝きを持つ月が自分を照らしている。
先ほど島に入る前は確かに昼だった。島の中でも薄暗い感じはあったが昼だと思った。

・・・そういえばここに入ったときは・・・

突然の月の出現に気をとられていてわからなかった。月が現れてすぐにまわりの植物が変化をみせていたこと。
気がつかないほどの小さな蕾が徐々に大きくふくらみ、美しい花片がその光を浴びるように
ハラハラと身をほどいていく。
花心から舞う銀白色の粉がふわりふわりと自分を取り巻いた。

・・・いけない・・・

そう思ったときはすでに遅く大量の粉を吸い込んでいたようだった。
グラリと視界が揺れて冷たい水の感触がする。
遠くなる意識の中、少しだけ唇が動いた。

 





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