パラレル-

□それはある日の素敵な接触
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「………」

パタンとドアの閉まる音を聞きながら、ゾロは小さく溜息をついた。
また、ロビンに気を使わせてしまった。
困ったような笑みだとか、寂しそうな笑みだとか。
思えば自分は、いつもロビンにそんな顔ばかりさせている気がする。
いくら触られるのが嫌いだからと言って、世話をしてもらっているのだ、礼を言えない分せめて頭を撫でられることくらい大人しく我慢できなくてどうする、と自己嫌悪に陥りそうになる。
ゾロは、腹に顔を埋めるサンジの耳にフンフンと鼻を寄せてみた。
ピクピクと耳を動かしながらも健やかに寝息を立て続けるサンジが、いつもなら愛しくて微笑ましく思うその寝顔が、今は妙に小面憎い。
早く起きろ、アホ。アホサンジ。
昼寝をしたら最後、オヤツの時間も晩御飯の時間すらも寝過ごしそうになる自分を、呆れながら起すのはお前の役目だろうが。
大事な話の途中だって、誰にどんな風に見つめられていたって、バカ面晒して気持ちよく寝こけるのは俺の役割なんだ。
身を捩り、起きろと念じて白い項に噛み付く。
ふわりと一瞬、花のような移り香がサンジから香った気がして、ゾロは牙を立てたままムゥっと顔を顰めた。



***



「あーん、会いたかったよゾロちゃ〜ん!」
「ギャッ、ゾロに触るんじゃ無ぇ!この変態オヤジ!」
「何だ白いの、お前も抱っこして欲しいってか?」
「だ・れ・が・頼むかアホんだらっ!」

尻尾を怒りで膨らませながら、シャーッ!と小さな牙を剥いて、サンジがシャンクスに挑みかかる。
小さくても鋭い爪が手の甲を引っ掻くよりも先に、さっと身を捩ってかわしたシャンクスが、にへらっと笑ってこれ見よがしに思い切りむぎゅむぎゅジョリジョリと頬を擦り付けてきた。

「ん〜、気持ちいい。ゾロちゃんのホッペはいつ触ってもベルベットみたいだねぇ」
「…あんたは相変わらず人相の悪い髭面だな」

擦り付けられる硬い髭や酒臭い息に、ゾロは凶悪な渋面を浮かべて、通じないと知りつつ皮肉を吐き捨ててそっぽを向いた。






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