創作小説
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【トワとヒトマ】
回想・T
「人間」
…「にんげん」と書いて「ヒトマ」と読む名の少年は、幼いころから孤独だった。
私…トワの次くらいに。
だけど、彼は望んで孤独を手に入れたのだという点で、私とは大いに異なっていた。
その孤高な魂だからこそ、
私はひどく惹かれた。
私とヒトマは、同じマンションに住む幼馴染だった。それと同時に、孤独を分け合い寄り添う仲間同士でもあった。
世界にただ一人取り残されたような切ない孤独感をいつも持ちつづけている私にとって、ヒトマの救済はかけがえのないもので。まさに彼は、私にとって神そのものだった。だから私はずっと、ヒトマへの信仰を続けた。続けるほか、救いはなかったというのもある。学校ではまるで存在しないかのように扱われ、家に帰っても親のいるわけでもない私にとっては、本当にヒトマだけがかけがえのない存在だったのだ。
それに、私は、ヒトマの隠された弱さも知っていた。それを初めて打ち明けてもらった時、ヒトマもまた私を受け入れてくれていることを悟ったのだ。
そして、共に生きる事を誓い合った。だけど、二人は断絶させられ、引き裂かれたから。
だから、私はまた、孤独を背負い込まなければならなくなった。
離れたくない。
離れたくない。
…離れた く ない!
ヒトマと共に生きることのできない世界なんて、必要ないから。
そんな世界ならいらない。
意味がない…。
ヒトマと生きることのできる世界じゃなきゃ、私は生きたくない…。