さぁ歌いましょ それが夢のつづき・・・

□新次郎誕生日小説
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「バースデイショーをやろうと思うんだ。」

「はい?」



司令室に呼ばれ、サニーサイドに唐突に言われた言葉がそれだった。
いい案ですね!と言おうとしたところで、ふと疑問が浮かんだ。

「誰か誕生日でしたっけ?」

スターファイブは勿論、サニーサイドや他の隊員の誕生日も知っているが、この時期が誕生日の者がいただろうか。

「・・・君、一週間後が何の日か覚えてる?」

サニーサイドがやれやれといったふうに呆れた口調で聞いてくる。

「一週間後・・・ですか?」

仕事に追われていたせいか、正直今日が何日かすら覚えていなかった。
今日は演劇の最終日だったから・・・・・・日にちは13日・・・・・・一週間後は・・・・・・20日・・・・・・。


「僕の誕生日!!!!!」

「そう、君の誕生日。」

はっとして大声で叫ぶ。
まさか自分の誕生日を忘れているとは思わなかった。
それと同時に先程の提案を思い出し青ざめる。

「駄目ですよ!!!バースデイショーなんて!!!僕はモギリですよ!!!」

サニーサイドに必死に反論するが、本人は表情一つ変えない。


「君のバースデイショーじゃないよ。もう一人いるだろう?」

「もう一人・・・?」

自分と同じ誕生日の人が?
必死で頭をひねるがさっぱりわからない。
眉を寄せて唸っている新次郎を見ながら、サニーサイドは口の端を持ち上げた。

「幻の女優、プチミントさ。」




スッと部屋が無音になる。
新次郎はさっきの一言をゆっくりと思い返し、さらに顔が青ざめていく。

「駄目です!!!駄目です!!!絶対に駄目です!!!」

「どうしてだい?」

さっきよりも強く反対をするが、それでも目の前に座っている人物は余裕の表情を浮かべている。

「だって、だってプチミントはっ・・・。」

「君だろう?だから君に言っているんだ。ちなみに決定事項だからもう中止にできないよ。」

「そんな勝手に・・・。」

「勝手じゃないよ。ファンから今度はいつプチミントが出るのかってよく聞かれるし、いいチャンスだと思うよ?」

反論の言葉を探すが、相手の意見を覆せるような言葉が見つからない。そもそも彼の意見を覆せるような人物すら殆どと言っていいほどいない。
それにたった2度しか舞台に立っていない『プチミント』を応援してくれる人がいる。その事実が反論の言葉を外へ出してくれない。
そんな様子を見て、サニーサイドは満足したように笑った。

「サムライの意地、見せてくれよ?」

そう言うと話は終わった というふうにさっさと部屋から出される。
バタンッと音をたててドアが閉じられ、壁になった目の前を呆然と見る。




・・・この1週間は大変なことになるかもしれない・・・。

そう思わずにはいられなかった・・・。









「きゃっふ〜ん♪タイガー発見!!!」
「にゃう〜ん・・・どこ行ってたんですか大河さん!!!ただでさえ忙しいのに・・・早く来てください!!!」

掃除をしている途中だったことを思い出し歩いていると、プラムと杏里が廊下を走ってきた。
腕をがしっと捕まれ、ずいずいと引っ張られる。

「プラムさん、杏里くん。い、行くって・・・。」

「勿論サイズを測りによ〜んvプチミントのバースデイショーが決まったらしいじゃないの。」

「もう伝わってるんですか!?」

当の本人は今知ったばかりだというのに、この話は確実に進んでいるようだった。

「1週間しかないんですよ!!!早く衣装を作らないと!!!」

「あ、僕いつもの服でい「「良くない!!!。」」

二人の強い言葉に押され、ずいずいと衣装室へ連れていかれる。
いつもの服でいいと言ったのは手間をかけさせない為、というのもあるが、女装服をこれ以上増やして欲しくないという思いもあったのだが、今の2人にはとても言えない。



2人はテキパキと仕事をこなし、サイズを測っていった。
仕事の速さに圧倒されつつ、2人の指示どうりに動いていく。

「あの・・・バースデイショーって具体的に何をやるんでしょうか?」

作業をしているプラムに何となく尋ねる。

「そうねぇ・・・・・・サジータあたりなら聞いてみたらどうかしら?」

「サジータさん、ですか?」

サジータはリトルリップシアターに長くいるから、ショーの内容なら彼女に相談するのが1番いいだろう、ということだ。

「今なら楽屋にいると思うから行ってみたらどうかしらん。」

「そうしてみます。プラムさんありがとうございます。杏里くんも、服、お願いします。」

彼女がいつも一人でショーの衣装を作っていることは知っている。心から凄いと思うし尊敬もする。
まだショーをやるという実感はないが、きっとまた素晴らしい服を作るのだろう。お礼を言っておいてもいいはずだ。

「べ、別に大河さんの為にやっているわけじゃないんだからね!!!」

いつものようにプイッと顔をそらす杏里を見て笑みをこぼす。
プラムも、杏里ったら素直じゃないんだから、と言いながら笑っている。



「じゃあタイガー、次は服を脱いでねv」



「・・・・・・はい・・・?」




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