10年経て

□死ぬかもしれない
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「ふっ.....んん........」
「....まずいね」

じみこが突然熱を出した。
10年後のじみこから、今のじみこに戻ってから割とすぐだった。


意識が朦朧としているようで、呼吸も荒く、汗をかいている。
僕は彼女をすぐに病院へ連れて行った。
熱を計ると39度を上回っていて、院長に話を通して入院させた。
病院は迅速に対応してくれて、解熱剤の点滴を打ちひとまず落ち着いた。

10年後の世界で変な病原菌でももらってきたのか.....。


入院してから1時間。僕はずっとじみこの側にいた。
10年後の彼女に会えたから死ぬって事は無いだろう...。

「ふっ.......はっ.........」

酷くうなされている。
僕は彼女の額の汗をタオルで拭った。
解熱剤の効果は今のところ無さそうだ。


「ヒバリ様、じみさんのお母様がお見えになりました。」
「入れてあげて」


病室の扉が開きじみこの母親が入ってくる。


「やあ」
「貴方がヒバリ様...?」
「様なんて付けなくていいのに。院長が僕の事をそう呼ぶから」

と文句を言うと院長は「も、申し訳ございません」と誤った。
僕は院長を病室から追い出した。


「じみこ、じみこ」

じみこの母はじみこのベットまで歩んで近くの椅子に座った。

「うなされてるのね....」
じみこの額に手を置き「これは酷い熱だわ....」と言っていた。


「あの、ヒバリ....くん??」
「?」
「院長から、貴方がじみこを病院に連れてきてくれたって聞きました。ありがとう」
「ああ、どういたしまして」
「今朝は元気だったのに...。こういう熱の出し方もあるのね」
「.......」


10年後の世界できっと何かがあったとは言わなかった。

じみこの母はベッド横の棚を開けてじみこの服や歯ブラシなどをしまった。


み〜ど〜り〜たな〜びく〜〜♪

「なに?」
『委員長、今どちらに...』
「並盛病院だよ」
『今、商店街の会長がお見えになっておりまして....いつ頃戻られますか?』
「はぁ、分かった。すぐ行くよ」


ピッ



「はぁ....。アポ無しの訪問はやめてもらいたいね」

僕は欠伸をしながら立ち上がった。
じみこはまだ目を覚さないが恐らく大丈夫だろう。


「じゃあじみこをよろしく」
「ヒバリくん、本当にありがとう」


僕は病室を後にした。
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