雲の上のピアニスト

□アラルガンド
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「ふあぁ......」
「あれ、如月さん、眠そうだね」


昨日は眠れなかった。
コンクールが今週末に控えた緊張と、昨日なぜ雲雀さんの前で泣いてしまったのかと色々考えていたからだ。
前の学校の夢も見てしまって精神的にかなり疲れている。
そうして今、笹川さんの前で大あくびをしてしまったところだ。


「如月!おはよ!コンクール、今週末だよな?応援してるぜー!」

朝練から戻ってきた山本くんが元気に話しかけてくれた。
応援コメントありがたいけど、正直それがまた息苦しくなってしまう......。
とりあえず「ありがとう。頑張るね」とは返しておこう。



午前の授業では半分くらい意識飛んでしまって、ノートを見返したらミミズみたいな文字の羅列.......。
あっという間に昼休みになってしまった。

昨日は自分に甘えて練習をサボってしまったから今日はちゃんとこの緊張感と向き合わないと....と思って音楽室へ向かった。



ピアノの前に座り、指慣らしをしてから課題曲の楽譜を開く。
モーツァルトのソナチネだ。

モーツァルトと言えば、煌びやかで細やかなパッセージが求められる。
何より楽しく演奏する心が大切だ。




〜〜〜♪♪♪



うーーーん。
気持ちが落ちているからか、テンポが上がらない。指取りが重い....。



「うーーーーーーああぁぁぁああ〜」
ビシャーーーーーーン!!


私はうめきながらピアノに当たった。
だめだーーー。イライラする。
自分の気分でモーツァルトを侮辱してしまっている。
悔しい。自分に負けてしまう。
いつも、自分に負けてしまう。
もっと自立したい。気分で左右される演奏をしたくない。この性格をどうにかしたい。


私は深呼吸して、もう一度最初から演奏し直した。



結局昼休み中に納得のできる演奏は出来ず、また更に落ち込みつつも午後の授業に戻った。

午後イチの授業は国語。
教科書の平仮名と漢字が二重に見える。
首がこっくんこっくんしてるのも自分で分かるくらいに眠い。

でも何故か頭の中はフル回転でコンクールの事と昨日の雲雀さんの前で泣いた事で頭はいっぱいだった。



「あれ、雲雀じゃね?」

後ろの席の山本くんがボソッと呟いた。
私は一瞬にして目が覚めた。
廊下を見ると雲雀さんが立ってる。


あれ、今、授業中ですよ???


目が合って彼はズカズカと教室に入ってきた。
先生を含めたクラスのみんなは息を呑み「誰かなんかしたのー!?」と沢田くんだけが情けない声を出した。
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