雲の上のピアニスト
□目覚めの感情
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僕は彼女のピアノの虜になってしまったようだ。
下校時間を知らせに音楽室へ向かった昨日、彼女はすでに帰宅していた。
自分で言ったことだがそれに納得出来なかった僕は、今日は早く音楽室へ向かうことにした。
〜〜〜♪♪♪
美しい。
この音色を求めていた。
昼に弾いている明るい音色の曲も僕にとっては心地のいいものだが、断然惹かれるのはこの重厚感のある音色。それでも、細く寂しそうな音色。
曲中に静かに音楽室に入ると、彼女は夢中で弾いている。僕のことなんて気にしていないようだ。
彼女の表情は哀しげでもあり、凛としている。
話すと穏やかなのに、憑依したかのような雰囲気になる。
僕は彼女がどうしてそんなに哀しそうなのかが気になってしょうがないのだ。
曲が終わり、声をかけると心底驚いていた。
まだ時間じゃないから弾いてても良いかと尋ねてくる感じからすると、まだ僕の噂とかは回ってないみたいだ。
僕は彼女を残し、音楽室を出た。
気分は高揚していた。
下校時間まであと30分ほどあるから、群れている連中がまだ沢山いる。
しらみ潰しに咬み殺していった。
なんで、まだ時間じゃないのに、と色々言われたがそんなのは関係ない。
僕がそうしたいからそうしてるだけだ。
気がつくともう少しで19時になるところだった。
僕はまた音楽室に向かって、彼女のピアノを聴いた。
僕が彼女を咬み殺せない理由。
それは彼女のピアノが僕の癒しになっているからだ。
僕が咬み殺せば、彼女はピアノを弾けなくなってしまう。こんな気持ちは初めてだ。
「また聴きに来るから」
そう言うと彼女は頬を赤らめた。
今日はまだ咬み殺し足りないな。