雲の上のピアニスト

□コントロール
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美玲のピアノは安定を取り戻し、いよいよコンクール当日になった。


僕はあの日から美玲の笑顔を見る度に、美玲の事を考える度に胸が苦しくなっていた。原因は分からない。
学校では無意識のうちに彼女を探してしまい、他の人に向けている笑顔を見てまた苦しくなっていた。

自分が自分じゃない気がしてしまって仕方なかった。


だから今日、彼女のコンクールを見届けたら関わるのはやめようと思う。




「はぁ....」

会場のロビーには沢山の人が居た。
こういうところは本当に苦手だ。



「雲雀さん!」

後ろから声をかけられ振り向くと美玲が居た。

「ワオ、おめかししたの?」
「はい、この後控室でドレス着るので....。ステージマナーです」

美玲は少しの化粧をして髪の毛もしっかりセットしていた。
少し照れているように見えた。
すると美玲の隣に居た人が話しかけてきた。


「美玲、その方が雲雀さん?」
「あ、そうなの」
「カッコいいわね。初めまして、美玲の母です。」
「......」
「やめてよお母さん、恥ずかしいから」

僕は浅くお辞儀をした。


「いつも娘がお世話になってます。この子ったら学校から帰るといつも貴方の話をするのよ」
「ねぇ、もう、いいから!お母さん控室行ってて!」

美玲は母をこの場から追い出した。



「すみません、うちの母が騒がしくて....」
「僕の話って何の話してるの?」
「! また今度話しますから」

美玲は恥ずかしそうに手で顔を半分隠した。

「今日は来てくれてありがとうございます。雲雀さんが見てくれると思って頑張ります」
「うん。いつも通りやっておいで」
「はい!」


美玲は控室に向かった。
僕は係の人からプログラムを受け取り、美玲の出番を確認して、出番まで外にいる事にした。
ここは人が群れすぎだ.....。




外に出ると沢田綱吉達が見えた。
なんだ、美玲は彼らも呼んだのか.......と思うとまた胸が苦しくなった。


「雲雀」
「?」

振り返ると前に一度会った赤ん坊がいた。

「ちゃおっス」
「ワオ、赤ん坊じゃないか」


こんな所にキミがいるなんて。


「今日は美玲のピアノ、聞きにきたんだろ?」
「ああ。彼女に頼まれたからね」

赤ん坊はニィッと笑った。

「雲雀の気に入った女のピアノ、楽しみだ。じゃあな」


赤ん坊は沢田綱吉の元へと帰って行った。

僕の気に入った女?
僕は彼女のピアノを気に入ってるわけで、彼女自身を気に入ってる訳ではないんだけどな。
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