エピソードまとめ

□Final
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ep.Final 英雄の雛鳥達
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「相変わらずどうでもいい時にいる割りに、いざそうとすると、まったく見つからないな」

校舎から出て、リゼットはそう呟いた。

「思えば子どもの頃から、そういうヤツではあったが。……ああ、そういえば、ガスパルにかくれんぼで勝てないからと、アニエスがいじけて大変だったこともあったな」

リゼットは幼少の頃を思い返した。

「あの時はガスパルと私で、希少な花の種をプレゼント…………。いや……余計な感傷だったな」

頭を振るって、リゼットは中庭に続く階段を降りていく。

「ん?あそこにいるのは……」

視線の先に、女子生徒二人と話をする髭面の男を見つけた。

「えー!それホントですかあ?」

「マジもマジ大マジだって!」

「探したぞ」

そう言ってリゼットは、ガスパルの元に歩み寄った。

「お、リゼット聞いてくれよ。今、彼女達とさ」

「ユーゴ・シモンの素性について知りたい。お前は知っているのだろう?」

「こりゃまた唐突だな」

端的に要件伝えれば、ガスパルはやれやれといった様子で、女子生徒たちから離れる。


「まあ仕事柄知らないわけじゃないが……」

二人はそのまま蔵の前へ移動する。

「近々、式典が行われる予定もあるしね」

「ん?」

「いや、こっちの話だ」

「そうか?でどうなんだ?」

「俺じゃなくて直接本人から聞けよ。ちょうどお前とユーゴくんに仕事を依頼しておいたところだしな」

「なに……?こうなることをわかって先に動いていたか。相変わらず手が早いな」

「だろ?」

ふふんとガスパルは胸を張る。

「任務の詳細は彼が知ってるから訓練場で合流してくれ」

「了解した」

「リゼット……。この機会を活かすかどうかはお前次第だぞ」

「ああ……ありがとう、ガスパル」

リゼットは素直に礼を言ってガスパルと別れる。

「ガスパルに借りを作ってしまったな。シモンは訓練場か……」

そう呟いてリゼットは中庭から訓練場へ向かうのだった。

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〔校内会話 中庭 男子生徒〕
「勉強のために図書室で帝国関連の本を借りたはいいけど、貸し出し名簿にまた彼の名前があったな……。ユーゴ・シモン……。情報を任務に活かそうだなんて真面目なヤツだな!」


〔校内会話 ガスパルと女生徒2人〕
「ねえねえ、ガスパルさん!さっきの話ってホントにいいんですかあ?」

リ「なんの話だ?」

「今度おうちにお邪魔することになったんです!」

リ「はあ?なぜそんなことに?」

ガ「そりゃあ、この俺がモテるからに決まって……」

「だってガスパルさんって豪邸に住んでるんですよね?」

「世界各国の有識者達が集まる、ホームパーティーも、毎日開催されてるから勉強になるって!」

リ「……ほう」

ガ「い、いや、リゼット。これには深いわけがだな……」

リ「お前達、騙されるな。こいつに家などない。毎晩、獣と共に野宿をしている無職のクズだ」

「え……そうなんですか……」

「うわ……サイテー…………」

ガ「そ、そこまでじゃないけど、ほら……ね」

ガ「リゼット……お前、早くユーゴくんとこ行けよ……」


〔校内会話 レオ〕
「あ、教官。ユーゴ、見なかったっすか?これから一緒にメシ行こうと思って」

「シモンならこれから私と任務に出る」

「えっ?そうなんですか?あいつからなんも聞いてないっすけど……」

「お前達はすべてを包み隠さず、話さないといけない関係なのか?」

「い、いえ、そういうわけじゃ……。ただ最近、ユーゴのやつ、前にも増して抱え込み気味で……」

「確かにあいつは特に思索に耽るタイプではあるが、お前もシモンに隠していることの 一つや二つはあるだろう」

「まあ……そうっすけど…………」

「仲がいいのは良いことだが、干渉し過ぎると互いにとってろくな結果にならないこともあるぞ」

「……わかりました。では任務、頑張って下さい!教官!」


〔校内会話 石碑前 リュシアン、マクシム〕
リ「あれは……」


マ「くそ……またキミとの決闘に負けたか……」

リュ「いいえ、紙一重でしたよ」

マ「だがその一重が遠いのだ!」これではいつまで経っても父上に認めてもらえない……」

リュ「マクシムさんの目標はいつも高いですね」

マ「僕は貴族。それもアセルマンだ。高くあらねばならない。それはキミも同じだろう」

リュ「どうでしょうね……。私はそこまで求めるものはありませんし……」

マ「らしくないな、リュシアン・デュフォール」

リュ「え?」

マ「キミがなにを抱えているのか僕は知らない。だが!キミにも夢はあるだろう!でなければあんな顔で、リンゴの樹を育てるものか」

リュ「あんな顔……ですか?」

マ「ああ。見ないくらいに優しい顔をしているぞ。気がついていなかったのか?」

リュ「そうでしたか。自覚はしていませんでした」

マ「それにキミはブレイズの筆頭であり誇りだ。キミが弱気になったら下級生が困るだろう。そんなことになるのは、この僕が許さないからな!」

リュ「ふふっ……」

マ「なんでそこで笑うの!?」

リュ「いえ……あなたの気持ちは充分伝わりました。ありがとうございます。私のライバル、マクシムさん。ええ……気を引き締めますよ」

マ「うむ。わかればいいんだ」

リュ「さて。このあとはお茶でもどうですか?少し酸味のある林檎を使用した、試作品があるんです」

マ「おおっ、それは楽しみだな!



リ「……次代の灯。あいつらはもう、自分の道を歩んでいるのだな……」
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