エピソードまとめ
□Final
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ep.Final 英雄の雛鳥達
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〔戦闘会話1〕
レ「いくぜぇ!これが連邦の……、法王様の祝福の力だ!」
ラプ「あはあ♪無償の"力"だなんて、本当にあるのかしらねえ?」
ユ「…アウグストさん。どうしてこんな無謀な……」
アウ「実際、法王を討てる確率は極めて低い策ですが、それを補って余りあるリターンも期待されますからね」
ユ「リターン?」
アウ「ふふっ、直わかりますよ。ユーゴ・シモンくん」
〔戦闘会話2〕
セ「二人の動き凄い」
カ「うむ。しかし、その動きにさえ難なく合わせ補助する。そんなそなたもまた素晴らしい逸材である。この才を誇るがいい、セリア・アルヴィエよ」
セ「あ、ありがとうございます!」
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「く……!」
セリアの矢が当たったアレクサンドラが膝をつき、レオとユーゴが相手をしていたアウグストとラプラスも力尽きていた。
「ここまでとは……」
「やった……やったぜ、法王様!俺達は宰相と狼将を……!」
レオは喜び勇んで法王の方を振り返ってみた。
「ふむ。素晴らしい働きである」
「はい!あとはこのまま捕らえて……」
「では、とどめを」
淡々と法王カナンが命令を下す。
「……え?」
「な……!」
レオとセリアは固まり、ユーゴは睨むように法王を見た。
「聞こえなかったか?賊共の首を落とすのだ」
「い、いや、でも……」
「お待ち下さい、法王聖下!彼らは捕らえた方が連邦の利が大きいはず!この場で殺す意味など……」
そう、ユーゴが陳情する。
「控えろ、ユーゴ・シモン。戦場の中で命を散らすのもまた慈悲である」
「慈悲?……違う、貴女は!」
ユーゴが否定の言葉をあげれば、法王は目を細めた。
「"こちら"はまだ出来が悪いか。ならば……、レオ・フルカード」
法王はレオに向かって手を伸ばした。
レオは少し俯いた後、顔を上げた。その目はいつもの青い瞳と違い、赤紫色に変わっていた。
「……はい」
レオは刀を握り、アウグスト達のもとへ歩み寄っていく。
「レオ?ちょ、ちょっとまさか本当に……」
セリアが声をかけても、レオは振り向きもせず、真っ直ぐ進む。
「これはこれは……、少々読み違えましたかね……」
「アウグスト!」
アレクサンドラが焦ったように叫ぶ。
「しかし、レオくん………」
アウグストは冷や汗を流しながら、レオに語りかける。
「負け惜しみを述べるようで恐縮ですが……。今の貴方には"気高さ"の欠片も感じられませんねえ」
そう言ってアウグストが口元を歪めると、レオの瞳が僅かに揺らいだ。
「斬るがいい、レオ・フルカード」
そう言って法王がもう一度レオに向かって手を翳すと、緑色のマナの光が溢れた。
それに当てられたレオは、刀を振りかぶった。
「あああああっ!」
「レオ……!」
ユーゴが名を呼ぶがレオは止まらない。
レオはさ、優しすぎるんだよ。でも僕は……そういうレオが大好きだよ
このままでは、幼き頃からずっと見てきた彼が消えてしまう気がした。
「あああああっ!」
ユーゴが叫び、彼の左肩から伸びていた、マナの光がぶちっ、と消えた。
「くっ……」
後ろで法王が表情を歪めた。
「駄目だレオ!殺すな!」
ユーゴがアウグストの前に立ち、振り下ろしたレオの刀を長剣で受け止めた。
「ハッ……!」
ユーゴの超えにレオは意識を戻して、周りをキョロキョロと見た。
「……ユーゴ?」
驚いていたようなレオの目がユーゴを見つめた。
「お、お前なんで、帝国軍を守って……!」
レオがだんだんと怒りに近い表情に変わっていき、ユーゴは焦る。
「違う!これはキミを……!」
否定するユーゴとレオの周りが、レオの右肩から出ているマナと同じ青緑と赤紫の光がぐるぐると二人の周りを囲いだした。
「この反応は……」
近くにいる自分にそのマナが触れると黄色くバチりと光り、アウグストは眉をひそめた。
「ああ、素晴らしい!」
そう言って法王カナンは両手を広げ天を仰いだ。
「やはりわたくしの目に狂いはなかった!」
「な、なんだ、この状況は。いったいどういうことだ……!」
入口の警備をしていたリゼットがようやく異常に気がついたのか、戻ってきて、異様な光景に驚いていた。
「今です!」
皆が状況に混乱している今が好機と、アウグストは立ち上がった。
「ああ!」
返事をしてアレクサンドラとラプラスも立ち上がり、アウグストか彼女らの背に移動用のゲートを展開した。
「……貴方もこちらです。ユーゴくん!」
「え……」
アウグストがユーゴの腕を掴み、そのゲート中に入っていく。
引き込まれるユーゴの目に映ったのは、驚いたレオの顔と、同じように驚いた表情で彼の傍に駆け寄る、憎き教官の顔だった。
「なっ、ユーゴ!待て……!」
レオが手を伸ばし、ユーゴもその手へ手を伸ばす。
しかし、ユーゴの体はゲートに飲み込まれ、ぶつり、とそのゲートごと姿を消した。
「……ここまでか」
未だぐるぐると渦巻くマナを見て法王が呟く。
そして、強く濃いマナは爆発し、眩い金色の光が当たりを包み込むのだった。