エピソードまとめ
□Final
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ep.Final 英雄の雛鳥達
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獣を倒し終わり3人は武器をしまった。
「いい動きだったぞ。二人とも花丸をくれてやる」
「ありがとうございます!」
「ああ……ってなんだそりゃ」
ユーゴが礼を言う横で、エドが不思議そうな顔をした。
「あんたはオレの教師かなんかかよ。………まあいい。あんたらのおかげで助かった」
「こちらこそだ」
「エドさんは、これからどうするんですか?もし良かったら僕達の騎士学校にでも寄って話を……」
「すまないが報酬を受け取ったら行くところがある」
「そうなのか?」
「ああ」
とエドは頷く。
「さっき話した知り合いに、バザールに行けと言われていてな」
道中話していた、やっすいリアクターをくれという知り合い。
「ただ、高額な列車代は寄こしてこなかったから、こうして小銭を稼いでるわけだ」
「それはまた、酷いヤツだな」
リゼットはそう返すが、その人が自身の幼なじみだとは気づいてなかった。
「"汚いお仕事"ってのをしてるようだしな」
「ま、あんたらと出会えて良かったよ。世界には面白いヤツが、まだまだいるってわかった」
「ですね。これからも、色んな人に出会えますよ」
「……じゃあ村に戻るか。早く村のヤツらを安心させ……。いや…早く報酬が欲しいからな」
エドは慌てて言い直し、さっさと村へ向かって歩き出した。
「……ふっ、そうだな」
エドの隠しきれないお人好しっぷりに笑った後、リゼットはユーゴを見た。
「さて我々は、学校へ帰るか」
「はい!」
ユーゴの返事を聞き、リゼットも歩き出した。その背に続きながら、ユーゴはぐるりと周りの景色をみた。
「……そういえば、僕はあの日もこんな森で……。くっ……!」
ユーゴは急な頭痛に襲われ、頭を抑えてしゃがんだ。
「シモン?」
ついてこないユーゴに気がついて、リゼットは振り返った。
「シモン!おい、シモン!!」
リゼットは慌ててユーゴの元に駆け寄る。
「うっ……」
「シモン?大丈夫か?」
ユーゴはゆっくりと頭を上げ、リゼットを見上げる。
キーン、と耳鳴りがして、頭痛が増した。
「はっ!」
ユーゴは瞳孔を開く。
「では、特別授業といこう」
幼い頃、連邦兵に銃口を突きつけられた記憶。
「これが恐怖。そして……これが死だ」
そう言って銃を発砲した女の顔は…………
心配そうに自分を見下ろすリゼットが、過去に自分に銃を突きつけた女と合致した。
「特別授業……恐怖……死………」
「その言葉は、あの時の……!」
そう言って、リゼットはユーゴに手を伸ばす。
「シモン、私は……!」
「触るな!」
ユーゴは伸ばされた手を払い、リゼットはそのまま腕を下げた。
少しの沈黙の後、ユーゴが立ち上がる。
「…………すみません。行きましょう。……"教官"」
リゼットの顔を見ないまま、ユーゴはそう言って歩いて行く。
「あ、ああ…………」
リゼットはその背を見つめたまま、動かなかった。
「シモン、やはりお前は……。……ようやく来るのかもしれないな……。私の……贖罪の刻が…………」
リゼットはそう、ぽつり、と呟くのだった。