エピソードまとめ
□Final
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ep.Final 英雄の雛鳥達
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村人から話を聞き終えて2人は情報をまとめた。
「状況は掴めましたね。急いで森へ向かいましょう」
「……シモン、一ついいか?ル・サント村……という名前に聞き覚えは?」
「……ありますよ。約9年前、帝国軍によって焼き払われた悲劇の村ですよね。戦禍に巻き込まれた村はたくさんありますが……、ルサントに関しては軍事的な意図が極めて薄く、ほとんど"虐殺"と呼ぶべき、酷い有様でした。この戦争における最悪の惨事の一つです」
ユーゴはやけに詳しくベラベラと語り出した。
「詳しいな」
「そうでしょうか?軍人を志す者としては、当然の知識だと思いますが」
「それは……まあ、そうだな」
「そうですよ」
「では、ル・サントを訪れたことは?
「……ないですね。行く理由がありませんよ」
「そうか。ならいいんだ。悪かったな変なことを聞いて」
「いえ……」
ユーゴは少し顔を背ける。
「しかし、雑談が過ぎましたね。先を急ぎましょう」
「ああ」
先に進むユーゴの背中をリゼットは見つめる。
「シモン……。お前はなまじ頭が回るだけに……隠し事や嘘を述べる際の利那の逡巡がより際立つな。やはりお前は…………」
リゼットは小さく呟いて、ユーゴの後に続くのだった。
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〔移動台詞〕
リ「では森へ向かうぞ」
ユ「了解です」
〔村内会話 マルク〕
マ「ねえねえ!あのお兄ちゃん元気にしてる?」
ユ「レオのことかい?ああ、とってもね」
マ「そっかあ、また会いたいなあ」
ユ「じゃあ彼に伝えておくよ」
マ「ホントに!?あのね、僕ね、大きくなったら絶対に、あのお兄ちゃんみたいにカッコいい大人になるんだ!」
ユ「レオがカッコいい大人……か。ふふっ、じゃあそれも伝えておくよ。けど今村は危険な状態だ。レオと再会できるよう、キミも早く安全な場所へ」
マ「う、うん。わかった!」
〔村内会話 東門前民家 おたま戦う女性〕
「森へは村の右側の門から行けるよ」
ユ「わかりました」
「あんた達だけで戦うのが不安なら、私もおたまで……」
リ「いや、それは結構だ。獣のことはこちらに任せてくれ」
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999Y.C. 森国シルヴェーア アンスワン森林
〔道中会話〕
ユ「獣の姿がありませんね」
リ「例の用心棒があらかた片付けたんだろうな」
ユ「単独で……凄いですね。どんな方なのでしょう」
リ「少なくとも"ただの旅人"ではないだろうな。味方と考えるなら頼れる存在ではあるが……」
〔獣の群れ〕オタオタ、ガルル
ユ「この獣達は……!」
リ「森の奥から流れてきたか」
ユ「こいつらの目的はなんなのでしょうか?なにかに追われている……という話もありましたが」
リ「そうだな。人を襲うことが真の目的ではないのかもしれん」
ユ「獣達は獣達で、必要に迫られて行動していると?」
リ「だとしても危険なことに代わりはない。獣の事情を汲んでいる余裕があるのか?」
ユ「そうですよね……。今は与えられた任務に集中します!」
獣討伐後。
リ「先を急ごう、用心棒とやらの安否も気になる」
〔道中会話〕
ユ「けどどうしてその人は、危険を顧みずに森へ入ったのでしょうか?村を守ることが、依頼内容なら侵入してくる獣だけを相手にすればいいのに……」
リ「村人の話だと"埒が明かない"と言っていたらしいが。よほど短絡的な思考の持ち主か、守るだけでは村の安全を確保できないと考えたか……」
ユ「……しかしもし、用心棒の範疇を超えて動いているのだとしたら……」
リ「だとしたら?」
ユ「……お人好しなんだろうなあと」
リ「間違いないな。だが味方と言い切るにはまだ早い。慎重に事を進めよう」
ユ「はい」
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「あれは……」
森を進む途中で、黒髪の青年が獣の群れと戦っていた。
「チッ、参ったな。さすがに一人じゃしんどいか。やれやれとんだ貧乏クジだ。報奨金と難易度が割に合わねえ。とはいえあんな小さな村に、こいつらの対処ができるとは思えん。前金をもらった以上は最後まで付き合うか……」
青年は1人でブツブツと言いながら双剣で獣を切り飛ばしている。
「教官!彼は……!」
恐らく村人が言っていた用心棒だろう。
「ああ……。いまだ素性は判然としないが、援護に値する人物であることは確かなようだ。行くぞ、シモン」
リゼットは銃を抜く。
「はい!」
ユーゴは長剣を抜き、リゼットの後に続いた。
〔戦闘会話1〕
「なんだあんたら?」
リ「今、我々がすべきは自己紹介ではない。違うか?」
「……確かにな。こいつらを蹴散らすことが最優先だ」
〔戦闘会話2〕
「なるほど……。伊達や酔狂で飛び出してきたわけじゃなさそうだ」
リ「それはこちらの台詞だよ」
ユ「貴方のその力はいったい……」
エ「たいしたもんじゃない。胡散臭い知り合いからもらった、安いリアクターを使っているだけさ」
リ「ほう、それは興味深いな」
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「この辺りの獣は片付いたようだ」
獣を倒し終わり、リゼットは銃をしまった。
「二人とも助かった礼を言う」
青年が双剣をしまいながらそう言った。
「オレはエド」
「あ、僕らは連邦所属の……」
「ちょっと待った」
自己紹介しようとしたユーゴをエドが止めた。
「知るのは名前だけで充分だ。余計なことを聞いて面倒に巻き込まれたくない」
「……いいだろう。リゼットだ」
「ユーゴです」
「よろしく」
「さて、問題はまだ完全解決とはいかないようだ」
「ああ」
リゼットの言葉に、エドは小さく頷く。
「ここまで来る途中で、デカいヤツが飛んで行くのを見た。恐らく森の奥へ向かったと思うが……」
「捨て置くわけにはいきませんね。エドさん。もしよろしければ僕らと一緒に……」
「そりゃこちらから頼みたいぐらいだ。あんたらが一緒だと心強い」
「決まりだな。村を襲いかねない獣は一掃するぞ」
「ああ、早いところ終わらせちまおう」
新たにエドを加えて、3人は森の奥を目指すのだった。