エピソードまとめ

□Final
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ep.Final 英雄の雛鳥達
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こんこん、と木と木がぶつかるような音と、はあ!、やあ!、と子供の声が森の中に響いた。

「とう!」

木刀と木刀がぶつかり合う。

「せいや!」

片方が強く打ち付け、もう片方の木刀はクルクルと飛んで行った。

それと共に、あっ、と男の子が尻もちをついた。


「ま、まいったよ!降参!」

赤毛の後ろ毛をちょこんと結んだ、青い瞳の男の子がそう言って、褐色の肌に金の髪と青い目を持つ男の子を見上げた。

「……ごめんね、ユーゴくん。ぼく弱くて……」

「確かにレオはいつも、最後の踏み込みが一歩遅れるけど、それは弱いというのとは、ちょっと違うと思うな」

8歳のレオ・フルカードが謝れば、同じく8歳のユーゴ・シモンがそう返した。

「……どういうこと?」

「レオはさ……優しすぎるんだよ。誰かを傷つけるぐらいなら、自分が傷つくのを選ぶほどに」

「……それってただ"弱い"より、よくない気がするけど………」

ユーゴはフォローのつもりだったのかもしれないが、レオはむくれた。

「え?あはは、ホントだね」

「ひ、ひどいよ!ぼくだって強くなりたいのに!」

「ごめんごめん!」

笑いながら謝ってユーゴは頭を搔く。

「でも僕は……、そういうレオが大好きだよ」

そう言ってユーゴはレオに手を差し伸ばす。

「ユーゴくん……」

レオはその手を取って立ち上がった。

「でもぼくは……。……いや、お、お、お、"俺"は、いつか、最高に気高い強さを身につけてみせるよ……ぜ!」

冷や汗をかきながらそういうレオを見てユーゴはまた可笑しそうに笑った。

「なんだいその喋り方、レオらしくないよ」

「その……この前絵本で見た英雄さんを参考に……」

そう言って気まずそうに背を向ける。

「……いつも、おばあちゃんが言うから……。"フルカードたるもの、つねに気高くあれ"って……」

ユーゴの方を振り返ってレオはそう言う。

「そっか……… でもさ、レオ。キミの気高さって、たぶんそういうのじゃ…………」

そう話している最中にドクンと鼓動が泊まるかのような"何か"が、二人に走った。

「なに今の……」

ハッとして二人は森の先の自分達の住む村をみた。
空が赤紫色モヤモヤしたものに染まっていた。
レオがその光景を呆然と見つめていると、後ろからカランコロンと木刀が転がる音がした。

「なんだ、こ……れ………」

そんな声と共に、ドサリとユーゴが地面に倒れた。

「ユーゴくん!?」

レオは慌てて倒れた彼の傍に寄り、その体を揺らす。

「ユーゴくんどうしたの!?ユーゴくん!」

「……レオなにかおかしい……。ここから……離れ………」

だんだんとユーゴの目がとろんとしてきて、最後には彼は意識を失った。

「……ユーゴくんっ!目を覚まして!」

レオが揺すってみるが、ユーゴは目を覚まさない。

「くっ……」

レオはユーゴを置いて立ち上がる。

「待っててユーゴくん!ぼくが必ずキミを助けるから!」

そう決心し、幼きレオは、ル・サント村へと助けを呼びに、走るのだった。
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