エピソードまとめ
□Cross roads
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ep.1 波々斬ノ国の乱
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「はあ……そろそろ休憩にしますか?」
何件か店を回ったあと、セリアはラプラスに尋ねた。
「そうねえ。そうしましょ」
ラプラスも頷いて、一息ついた。
「ふう……こんなに堂々と陽の下を楽しんだのは久々」
「お肌弱かったりされるんですか?」
「んー、そういうのとは違うんだけどねえ」
2人は会話しながら休息の取れそうなところ探して歩く。
「貴様ら、探したぞ!」
「貴方達は!」
先程、ラプラスに絡んでいた男が、仲間をたくさん連れて現れた。
「あら、随分とむさくるしいこと。お姉さんどうされちゃうのかしらあ?」
「汚らわしい……今すぐこの国から消してやる」
男たちは剣を抜き、セリアもラプラスも弓を構えて牽制する。
「この人達……。本気で他国の人間を嫌悪してる?」
「なんか、そんな感じねえ」
「今日、俺達はここに聖戦の"狼煙"をあげるんだ……。その始まりに相応しき生け贄を……」
「……なに言ってるのこいつら……」
「ラプラスさん。少し場所を移しましょう」
「どこに?」
「見晴らしのいい高台に。そこならこの人数でも対処できると思うので」
「ふーん、面白そうじゃない。乗ったわ」
「じゃあ……行きますよ!」
セリアの合図で2人は一斉に走り出した。
「逃がすか!かかれえ!」
男たちももちろん追ってくる。
「左の方にある高台へ急ぎましょう!」
「はいはい、要はそこで………。皆殺しにしてあげればいいんでしょ?」
「だ、ダメです!ここは波々斬ノ国ですよ!」
「他国ならいいわけ?」
「そういうことじゃなくて!いくら正当防衛でも凄くややこしくなるってことです!」
「あー、それは確かにイヤねえ。でも手加減とかダルいわあ」
「ああもう!いいから早く!」
桟橋の上を2人は走り続く陸地へ行きそこの小高い丘を登っていく。
「よし、ここなら!」
「確かに見晴らしはいいけど……、物陰に潜まれちゃったわよ?これ結局ジリ貧じゃない?」
小賢しい事に男たちは道中の木箱の後ろに隠れてしまった。
「いえ、問題ありません。この距離と配置なら……」
そう言ってセリアは矢を放ち、見事に当てた。そして、それは1度ならず、2度、3度と続いた。
「わーお、凄いわね、セリアちゃん。マナ感知能力に長けてるわけ?」
「いいえ、そんなのは全然」
「あら。ならどうして、そこまで正確に敵の位置が?」
「え?いや、ただ普通に目で見てるだけですけど……」
「……目視ですって?あれらをすべて?」
数十メートル離れている上、隠れられているのに?
「"普通に見える"位置取りとは、到底思えないけど……」
「ラプラスさん?」
ぼそり、と呟いたラプラスに首を傾げながら、セリアはまだいる男たちを撃ち抜いて行った。
「ふふ。アタシも参加したくなっちゃった」
そう言ってラプラスは弓を構える。
「神聖なる、我が故国のために!」
隠れてもセリアが撃ち抜いて来るからか、男は丘をかけ登ってきた。
「セリアちゃんのおかげで羽虫が集まってきてくれたわあ」
「とにかく対処しましょう!」
「りょーかい。はりきっちゃうわよぉ〜♪」
2人は今一度しっかり弓を構え直し、向かってくる男たちに狙いを定めるのだった。
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「汚らわしい異邦人どもめ……我ら"愛国者"が必ずや……」
倒れながらも男は、ラプラスとセリアを睨みつけた。
「それまだ言う?懲りないわねえ」
ラプラスは男の元に歩み寄り、倒れたその背をヒールで踏みつけた。
「…ぐあっ」
「……やめて下さい。彼はもう戦闘不能です」
「へえ、戦闘不能って攻撃をやめる理由になるう?」
そう言ってラプラスは、グイ、と更に男を踏みつけた。
「ラプラスさん!」
セリアが怒ってラプラスに弓を向けた。
「あはあ、冗談よお」
ラプラスは男から足を下ろす。
「でも、あなたも、こいつらの目的は聞き出したいでしよお?」
「それはまあ……」
そう言ってセリアは弓を下ろした。
「ふ……はは。目的?そんなもの、国の浄化に……」
倒れたまま男がそう言うと、ラプラスは顔をムッとさせた。
「……そういう表現、いい加減飽きた……。なっ……」
いきなり爆風が吹いて、ラプラスは慌てて髪を押さえる。
「ラプラスさん、あれ!」
こっちを見てと言うようにセリアが指したのは、街中で、炎と黒い煙があがっていた。
「オノコロで爆発?どうしてこのタイミングで……」
「まさか"狼煙"ってあれの事じゃ……」
襲ってくる前に男たちが言っていたことをセリアは思い出した。
「俺は、歴史が動くその瞬間を……見届けるんだ……!」
男は、セリア達が爆発に気を取られている間にか起き上がって、走り去っていく。
「もう。仕方ないわねえ……」
ラプラスが弓を構える。その前にセリアが腕を伸ばした。
「ダメです、ラプラスさん!」
「……セリアちゃーん?さすがにそろそろ……」
ガックシと肩を落としながらラプラスはセリアをジト目で見た。
「違います。泳がせましょう」
「……は?」
「"見届ける"と言ってましたよね。それってつまり、これから向かう先は……」
「彼らにとっての重要拠点……か」
「そういうことです」
「……ふ。いいわ、気が変わった」
にや、とラプラスは笑う。
「今日はとことん、あなたに付き合うわ」
「はい!」
返事をしてセリアはもう一度爆発された街の方を見た。
「レオ達、事件に巻き込まれてなきゃいいけど……」