エピソードまとめ
□Cross roads
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ep.1 波々斬ノ国の乱
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「会談、お疲れ様でした。皆さんからの貴重なご意見、とても参考になりました」
王宮から出るとクゼがそう言った。
「こちらこそ、貴重な時間でした」
リゼットが礼を言う。
「……それにしても、クゼさんが三司官様だったなんて……」
彼の背をバシバシと叩いていたセリアは、招待を知って、すっかり態度を改めた。
「申し訳ありません。騙す気はなかったのですが」
「その節は、うちの生徒達が大変失礼しました」
クゼを叩いたセリアだけでなく、レオもまた彼のことをおっさん呼びしていた。
「いえいえ」
と、クゼ首を振った。
「正直なところ、僕は三司官としては若輩者なので……」
クゼは自虐的にそう言って笑った。
「ただ。愛国心だけは、誰にも負けないと思ってますけど」
「上に立つものとして、素晴らしいことですね。この後は、早速、士官学校の視察に?」
「いえ、それは明日にしましょう」
「ってことは……、もしかして!」
ワクワクといった様子でレオがクゼを見つめる。
「ええ。この国を自由に見てもらってよろしいかなと」
「やった!お買い物タイムだ!」
セリアも大喜びした。
「あ、リゼットさんには少々お時間を……」
「承知しました」
「では、皆さん。楽しんできて下さいね」
「はい!」
クゼの言葉に、セリアは力強く頷くのであった。
【CHAPTER1 トラブル・トラベル】
998Y.C. 波々斬ノ国 海都オノコロ
「本当でしたら私が皆さんを案内したかったですが、各種手続きと明日の打ち合わせが残ってましてね」
「そんな……案内だなんて、三司官様に頼めませんよ」
「そうですか?」
クゼはキョトンと首を傾げた。
「実は子どもの頃から観光ガイドの真似事をしてまして。目の不自由な母に一生懸命説明していたんですよ。この国がいかに美しくて、僕がいかに幸せかってことを」
「そう……だったんですか」
「おかげで今じゃすっかり"波々斬ノ国マニア"ですよ」
クゼはニコニコと笑っていて、本当にこの国が好きなのだということが伝わってきた。
「……お前達。浮かれるなという指摘も、もはや虚しいばかりだが。連邦の代表として失礼のないようにな」
「当たり前ですよ!」
リゼットが注意を促すと、セリアは力強く頷いた。
「冷やかしだと思われないように、ちゃんとお買い物します!」
「俺だって誰よりもメシ食って、連邦にレオ・フルカード在り、ってとこを見せつけます!」
セリアとレオの発言にリゼットは大きなため息を吐く。
「はあ……。今回の人選は私の責任だが……上級生組が出払っていたことは心底悔やまれるな」
「心中お察しします、教官………」
ユーゴだけが、リゼットの苦労を理解していた。
「じゃあ、まずは街の中心に向かおうか」
「そうね!」
「楽しみだな!」
そう言ってユーゴ、セリア、レオの幼馴染トリオはオノコロの街を歩いていくのだった。
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〔街中会話 王宮前おじさん〕
「三司官は政治方面の代表者達だ。まあ他国で言うところの宰相のような役職だな。求心力のあるジャハナ氏と老獪なギバ氏……。そして誰よりも国を愛してくれるクゼ……。まあ、程良いバランスってところだよな」
〔街中会話 王宮前警備兵〕
「海はいいよな。鼻をくすぐる潮風に豊富な海産物。なによりあの先にはなにがあるのだろう……。どんな人達が生活しているのだろうと、想像が膨らむもんな」
セ「あの……私達って……」
レ「……想像通りの人達でしたかね?」
〔街中会話 民家前老夫婦〕
「この国に士官学校ができるみたいだけど、そんな物、中立国のうちにとって本当に必要なのかね。まるで戦争をしようとしてるみたいじゃないか……」
〔街中会話 日除けパラソル下女性〕
「あんた達、外から来たの?」
レ「そうっすよ。連邦から来ました」
「連邦ねえ……。森の中に国があるんだっけ?」
ユ「確かに緑は多いですね」
「ふーん。じゃあ、あれって本当なの?連邦の人はみんな木の上に住んでるって……」
セ「ど、どういうイメージなんですか……」
〔街中会話 花壇前老婆〕
「お主らこの国を観光するなら、始原の滝がお勧めじゃぞ」
ユ「あ、その滝、気になってたんですよね」
「そうかい。ならば行ってみるんじゃな。あれを見たら人生観が変わるやもしれん」
セ「へー、そんな凄い場所なんですね」
〔街中会話 花壇前男の子〕
「この先はショッピングエリアと飲食街に分かれてるよ!お姉さん達みたいに友だちと一緒なら、やっぱりみんなでご飯を食べるのかな?」
セ「そうねえ……グルメも気になるけど、私は買い物がしたいのよねえ……」