エピソードまとめ
□Cross roads
16ページ/16ページ
ep.1 波々斬ノ国の乱
─────────♢────────
「この国の……」
そう呟いて、レオとユーゴに敗れたクゼは地に倒れた。
「あの力は……」
遠目からでも見えていた、2人の肩から溢れていた力の事をアウグストは懸念した。
「はは……負けましたよ。僕が命のすべてを燃やしても敵わないとは……」
「クゼのおっさん……、なんでこんなことを……」
レオは倒れた彼の傍により、その背に手を添え、抱えた。
「……言ったでしょう?この国を愛しているからですよ」
「わかんねえ……。わかんねえよ……おっさん」
「……レオくん、少しだけ耳を貸していただけますか?僕の最後の頼みです。どうか……」
「ああ……」
頷いて、レオは耳を近づけると、クゼは小声で何かを伝えた。
「……クゼのおっさん。それって……」
レオは凄く驚いた顔をしてクゼを見つめた。
「今はわからなくて構いません。ですが、覚えておいて下さい。キミならば……、僕とはまた違う答えに到れるかもしれませんから……」
クゼは優しい笑みを浮かべて、沈む夕陽を見つめた。
「……ああ、この国は本当に…………なによりも、綺麗だ………」
そう言って、クゼは静かに事切れた。
レオは彼を、彼が愛した波々斬ノ国の地に寝かし、立ち上がった。
「……やっぱ、俺にはわかんねえよ……」
そう呟いて、レオは夕陽を眺めるのだった。
────────────────────
数日後。
「あ、見て見て!」
浅瀬にしゃがんだセリアが、楽しそうな声を上げた。
「どこだ、どこだ!?おお、凄え!」
セリアの隣に立ちレオも騒いでいる。
「あんな事件のあとだというのに、相変わらずだな」
リゼットは優しい声色でそう言いながら、二人を少し離れた砂浜の上から見つめた。
「ホントですね……」
リゼットの横で同じようにユーゴも二人を見つめた。
「これから波々斬ノ国はどうなるのでしょうか?」
「どうもならんさ。確かに大事件ではあったが、実被害はそう大きくもないからな」
「……計画が失敗した際の、被害や影響の少なさも、クゼは想定していたんでしょうか?」
「……どうだろうな。クゼはフルカードに何かを言い残したらしいが、内容は聞いたか?」
「いえ。……レオがはぐらかすので。でも彼がそう判断したなら、きっとそれが正しいのでしょう」
「信頼しているんだな」
「はい。なによりも、誰よりも……」
「おーい、二人とも、早く帰ろうぜー!」
そう言ってレオとセリアが駆け寄ってきた。
「学校のみんなに、俺の気高い武勇伝を語ってやはねえと!」
「ははは……」
「……まあ、なんにせよ。本当に良くやったよ、お前達。これからも期待しているぞ。次代を担う灯火として」
リゼットは三人をまっすぐ見つめてそう告げるのであった。
────────────────────
一方。
アウグストとアレクサンドラ、ラプラスは帝都ハイガルデンへと戻ってきていた。
「もう、最悪よ。全然ハバキリ堪能できなかったあ」
「いいじゃないですか。収穫は十分にありましたし」
「収穫ねえ?アタシはセリアちゃんで遊べたことぐらいかしら」
「私も前途有望な青年と知り合えたぞ」
「でもお、こんなのが収穫って言えるわけえ?」
「確かに、当初の目論見は外れたわけだしな」
「もしかして外交の話ですか?でしたら、本物のジャハナ氏、及び、新連邦派とやらも、手紙のやり取りの時点で、完全に俗物でしたので、ハナから期待はしていなかったですね」
「そ、そうなのか。……ならば、お前の言う収穫とは……」
「大きくは二つですね。一つは私がワタムスビに直接、接近できたこと。それと、近く我が国にもう一人、狼将を迎えることになるでしょう。……戦争集結の鍵ともなりうる。至高にして、最悪の狼将を……ね」
そう言ってアウグストは、明後日の方を眺めるのだった。
────────────────────
〔エピローグ〕
薄暗い部屋に月明かりが差し込み、3つの影があった。
「……以上が、波々斬ノ国で起こった事象の全容となります」
「……ふふっ、報告ご苦労。下がれ」
「ハッ」
影のひとつが瞬時に消える。
「さて?如何なされますか?」
長い白髪で大きな黒い帽子を被った男が、もう一人にそう尋ねる。
「そうだな……。レオ・フルカードにユーゴ・シモン……。イーディス騎士学校に在籍する今年度のブレイズ……。彼らには大変興味が湧いてきた。是非、この身で直接、接見してみたいものだ」
「……そうですか。では、実現できるよう取り計らっておきましょう」
「苦労をかけるな」
「なにを仰ります。すべては貴女の御心のままに……」
ブルーグリーンの髪を大きく煌びやかな装飾でまとめた少女のような姿の人に、男──パストは頭を垂れる。
「……法王カナン聖下」
────────────────────
〔次回予告〕※CV.ファルク
次回、テイルズオブルミナリア
クロスロード
ep.2 連邦帝国共同作戦
ファ「こりゃあ、デケエ手柄になりそうだぜえ!」
リゼ「つべこべ言ってないで、さっさと歩け!」
ファ「は、はいっ!」