エピソードまとめ
□Cross roads
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ep.1 波々斬ノ国の乱
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「おっ、見てみろよ!」
「どこどこ!?わー、すごーい!」
珊瑚礁の見える浅瀬で、レオとセリアがキャッキャと楽しそうな声を上げている。
「……俺らには未知のものだらけでアガるよなあ。この、波々斬ノ国はよ」
はしゃぐレオとセリアから少し離れた所で2人の様子を見つめる者が2人……。
「すみません、教官。任務中だというのに……」
「……構わないさ。本番は海都オノコロに着いてからだからな」
ユーゴとリゼットは砂浜の上で、そう会話をする。
「今回の任務は、この国に、士官学校が新設されるにあたっての、助言……でしたっけ」
「ああ。我々騎士学校の人間に意見を聞きたいらしい」
「源獣ワタムスビ様の力で国全体が障壁で覆われていて、これまで鎖国状態だった中立国にして、随分と踏み込んだ話ですよね。素直に見れば、連邦への歩み寄りにも思えますが……」
「実際、この件で動いているのは親連邦派のようだが。正直、上も計りかねていてな。"もしも"に備えての、お前達ブレイズというわけだ」
「おーい、二人とも。早く先進もうぜー!」
真面目に任務内容について話し合っていた二人に、痺れを切らした様子でレオが声をかけた。
ここに最初に足を止めたのはレオなのに、とユーゴはため息を吐いた。
「……すみません、ホント……」
「まったく……。まあいい、行こう」
リゼットは呆れ歩き出した。
教官である彼女を先頭にし、残りの三人も海都オノコロに向かって歩き出すのだった。
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同時刻。
「……帝国宰相様。そして、名高き狼将のお二方」
海都オノコロの桟橋の上で話をする者たちがいた。
「この度は、招聘に応じていただきありがとうございます」
オノコロの兵士がそう告げると、その目の前にいた私服姿の帝国宰相アウグストは首を振った。
「いえ、感謝するのは我々の方ですよ。まさか、神秘の地と名高いこの国に、自らの足で立てる日が来ようとは……」
「さて、早速ですが、代表のジャハナ様は今どこに?」
「王宮にてお待ちでございます」
「ふむ……。そのジャハナという人物は……」
「この国の超お偉いさん。三司官が一人よ」
アウグストの後ろでは私服姿の白狼将アレクサンドラと赤狼将ラプラスが控えていた。
「それでいて、親帝国派閥の盟主でもある野心家な男」
「……そ、そうだったな」
「あらあ?まさか白犬、今回の目的をお忘れかしらあ?」
「わ、わかっている!これから我々が為すべきこと、それは……」
「我が帝国と波々斬ノ国の極めて前向きな外交。つまりは……近い将来、連邦の背中を斬っていただくための交渉です」
アレクサンドラの言葉を奪ったアウグストはそう言ってのけるのだった。
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砂浜を歩き続けたレオ、セリア、ユーゴ、リゼットの四人は、海の前で足を止めた。
「うおおおお!」
「……これが」
「海都オノコロ……」
レオは雄叫びをあげ、セリアは目を輝かせ、ユーゴは圧倒されていた。
その景色は、広大な海の中に、たくさんの桟橋で繋がれた杭上住居が立ち並んでいた。
「ああ……。さすがに感動するな。だが、任務のことも忘れてくれるなよ」
リゼットの言葉に三人は彼女の方へ振り返った。
「まずは王宮で、顔合わせでしたね」
「緊張するなあ。相手はこの国の凄く偉い人なんでしょ?」
「その通りだ。我々の態度如何では、即、国際問題に発展しうるぞ。だから、お前達。くれぐれも礼節を弁えて……」
リゼットが注意を促してる最中、街の方から男の人が歩いて近づいてきた。
「皆さんはもしかして……、イーディス騎士学校の?」
その声に、リゼットの方を向いていた学生三人は後を振り返った。
「ああ、そうだけど……」
「やはりですか。いやあ、長旅ご苦労さまでした」
そう言って、前で手を組んだ男は軽くお辞儀をした。
「早速、王宮へご案内しましよう」
「あー、案内の方っすか。俺はレオ・フルカードといいます」
「僕は、イタク・クゼです」
男は右手を胸の前に置きそう挨拶をした。
「イタク・クゼ?」
リゼットはその名に聞き覚えがあり、顎に手を置いた。
「……まさか」
ハッとして目を見開く。
「どうも堅苦しいの苦手でして。気軽に接してくれたら嬉しいです」
「ああ、わかったぜ。クゼのおっさん!」
「じゃあ、皆さん行きましょうか」
そう言って歩き出したクゼに勝手について行く学生3人を見て段々とリゼットの顔は青くなっていく。
「お、おい、お前達。その方は……我々が、これから王宮で会おうとしていた人間……この国を総べる、三司官がお一人だぞ……」
リゼットが慌ててそう言うが、クゼとの話に花を咲かせた三人は気づいていなかった。
「やだ、もう、クゼさんったら、お上手なんだからあ!」
何か褒められたのか、そう言ってセリアがバンバンとクゼの背中を叩いた。
「はっはっは、い、痛い、痛いですって」
「連邦と波々斬ノ国の国交が終わる……」
セリアがクゼの背中をまた叩いたのを見つつ、リゼットは更に青ざめるのだった。