エピソードまとめ

□ラウル
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ep.1 自称考古学
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【CHAPTER4 遺跡脱出】
999Y.C. 森国シルヴェーア 鏡鉄遺跡

出口を探してたくさんの仕掛けを3人はくぐり抜けて行く。

「しかし、この遺跡の仕掛けは、あえて侵入者を殺さないよう作られてるように思えるね」

「なぜでしょう?」

「考えるよりもまずは脱出ですわ!」

「アナマリアちゃんは、考えるのが嫌なだけじゃ……」

「……なにか?」

「あ、いやなんでもないです」


先へ進んでいるとリモザセブリとリモザの群れに出くわした。


「こいつは……!?」

「大きいですわ……普段なにを食べているのでしょう?」

「霞という目に見えない食べ物が、世の中にはあるそうです。もしやそれでは?」

「なるほど!」

「なるほどじゃないからね!?霞食って生きていける生き物なんていないから!」

「なっ!?ボクが嘘をついたとでも!?」

「空気食べてもお腹膨れないでしょ!?霞って空気みたいなもんだからね!」

「それは……ぐぐっ!……今回はボクの負けを認めましょう。非常に……ええ、非常に!遺憾ではありますが」

「これって勝ち負けの問題だったっけ?」




「は!」

ラウルが槍で払い、

「せい!」

アナマリアが居合で斬る。
その彼女の背中を狙うリモザセブリをシャルルの生成したポーンが撃ち抜いた。

「ふうー、なんとかなったな」

一息ついつく間もなく、遺跡がグラグラと揺れだした。

「……あのデカブツが暴れた影響か?」

「……本で読みましたわ。こういう時の展開は、遺跡崩落!」

キラキラとアナマリアは瞳を輝かせる。
その後ろで上から瓦礫が降って来た。

「マジで崩れる!?」

「お約束展開、きましたわー!」

「予知までしてしまう、お嬢様、尊い」

「言ってる場合か!逃げるぞ!」

そう言ってラウルは走り出し、2人も後に続く。

「走れ走れ!」

「キャー!キャー!」

「うふふ!」

「この状況でなんで笑ってんの?」

「冒険!これぞ冒険ですわー!」

「ご満悦かい!」

「お嬢様………。本懐を遂げられてなによりです」

「キミはキミで大概だね!」



「獣がいます!」

「そんなのまるっと無視だ!急げ!」

「見て下さいまし!宝箱ですわ!」

「開けてる場合か!」

呑気な2人にツッコミを入れながらラウルは必死に走った。

「おいおいおいおい、嘘だろ……」

坂を駆け上っていたら上から大岩が転がってきた。

「左に脇道があります!そっちに避けましょう!」

シャルルの見つけた脇道へ飛び込んで、間一髪で間に合った。真っ直ぐその道を進むと階段に繋がって上にはゲートがあるようだった。

「前の方に光が見えます!」

「もしかして……出口ですの!?」

「よしっ、駆け抜けるぞ!」


3人は猛ダッシュで遺跡から外へ出た。

「ひー、ひー、ふー」

ラウルは膝と両手を地面に付いて、荒くなった息を整える。

「なんとか、無事脱出できたか……」

振り返ってみたら、遺跡は崩れてしまっていた。

「あー、死ぬかと思った……」

ラウルは起き上がって、遺跡を眺めた。

「……結局、この遺跡がなんなのか、わからずしまいだったなあ」

「残念でしたわね」

「もしかしたらこの遺跡は、何かの試練の為のものだったのかもしれない。だから、即死するような罠はなかった」

「それは、憶測に過ぎないのでは?」

「そうだねえ。ただまあ、考古学ってのはそういうもんさ。わからないからこそ人は過去にロマンを求める。考古学って言うのはロマンを追い求める学問なのさ」

しみじみと語るラウルの喉元に刀の切っ先が向けられた。

「それでは、詰所までご同行願いますわ。盗掘者さん?」

「…あれ?誤解、解けてなかったの?」

「脱出するための一時的協力ですわ!」

「ずるい!」

ラウルは憤慨した。

「今のもすっごくいい感じで締めに入ってたのに!」

「とても心に響くお言葉でしたわー」

「でしょー?」

にこやかに言ったアナマリアに、ラウルは嬉しそうに頭に手を置いた。

「でも、それはそれ、これはこれですわ!」

そう言ってアナマリアはもう一度ラウルに刀を突きつけた。

「ちくしょう!」

流されてくれなかった事にラウルは怒り、後ろに飛んでアナマリアと距離をとった。

「さあ、おとなしく、お縄につくのですわ!」

「これまでのよしみで痛みを感じる間もなく、安らかにイカせてあげます」

「大丈夫!先っちょだけ!先っちょだけですわ!」

「危ない!それいろいろと危ないから!」

「これもラウルが悪いんです。霞のことでボクに恥をかかせたから」

「めっちゃ根に持ってる!?負けを認めたんじゃなかったのか!?」

「殺してしまえばボクの勝ちです」

「考えが物騒すぎるだろ!?」

「貪欲に勝ちを取りに行く姿勢、嫌いじゃありませんわ!」

「キミ、ノリで言ってるだけだよね!?ああもう!さっさと終わらせるぞ!」
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