エピソードまとめ

□ラウル
2ページ/15ページ

ep.1 自称考古学
─────────♢────────


「いっちょ上がりっと」

獣達を倒し終わりラウルは槍を背負い直した。

「さてと……この怪しい壁画。もう一度調べてみるとしますか」

そういってラウルは壁画に近づいて、その壁画のある一部に触れた。
そうすると、その壁画がホログラム映像のようになって消えた。

「ビンゴ!」

どうやら壁に見せる、創術が組み込まれていたようだった。

「さーてこの先にはなにが待ってるかな?」

ラウルが壁の向こうに抜けると、後ろに先程の壁が戻った。
時間が経つと自動で戻る仕掛けのようだ。

「さっきの壁画、900年前の物に似てたな。てことは、この遺跡もその当時の……?……いやいや、それはそれで妙だぞ。その頃の文明レベルじゃ、さっきの仕掛けは無理だ」

考えながらラウルは先の通路を進んでいく。

「となると、こりゃまさか大断絶時代の………。……この遺跡もしかして、とんでもない大当たりか?」

通路が途切れていたが、下に道が見えてラウルは飛び降りた。

「まだ先があるようだねえ。さっきの所で行き止まりと見せかけて、奥はさらに深く続いている………。となると考えるまでもなくこの遺跡には、なにか隠したいものがあるってことだ」

今度は遺跡が崩れ、崖になった狭い通路を横向きで歩いていく。

「……いったいなんなんだろうねえ。ま、それを調べるのが考古学者の仕事ってか」

崖っぷちを抜ければ、またそこが抜けた通路があって、ラウルは下へと飛び降りる。

「おやあ?」

曲がり角から頭を覗かせると、長い長い下り坂が続いていた。

「下り坂、ねえ……」

歩いてラウルは道の真ん中に出て坂を見下ろした。

「この遺跡の本命は地下ってことか?なんにせよ進んでみないことには始まらないか」

そう言っている、ラウルの後ろでドゴンと言う音と、大きな振動があった。

「今の音は!?」

嫌な予感がしてラウルが後ろを振り向くと、丸くて大きな岩がそこにあった。

「おい、まさか……」

そのまさかだった。

「やっぱり!?」

ゴロゴロと転がりだした大岩を見て、ラウルは慌てて走り出す。

「こんなのに追いつかれたらべちゃんこだぞ!逃げろ逃げろ!走れ走れ!」

そう言いながらラウルは必死に走る。

「うおおおお!うなれ、お兄さんの大腿筋!うおおお!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」

雄叫びを上げながらラウルは坂を下っていく。

「もう限界だっ……て」

目の前に広い部屋が見えてそこに飛び込むが、壁があり行き止まりになっていた。

「……あの隙間は……!」

壁のど真ん中に亀裂が入っていて下の方が崩れており、人一人くらいなら何とか通れそうだった。

「ぬおおおおお!」

一か八か、ラウルは頭からその亀裂の中に飛び込んだ。
頭を両手で庇いゴロゴロと転がりながら衝撃を軽減する。
大岩は、ドンッと壁にぶつかって止まった。

「た、助かったあ……」

ラウルは上半身を起こす。

「はー、なんつう仕掛けだよ」

ラウルが亀裂の先を見つめると、ガコンという音がして岩が目の前から消えた。

「は?」

ラウルは這い寄って、亀裂の向こう側を覗き込んだ。
そこには、先程まであった床が丸ごと無くなっていた。
下を見れば何も見えないほど深いようだった。

ゴゴゴゴ、という音と共に左右に別れて折れていた床が上に持ち上がって、何事もなかったように綺麗な床に戻った。

「……なんつう仕掛けだよ」

ラウルは腰を抜かした。

「頼むからもう二度と出てきてくれるなよ………」

ラウルは槍を杖代わりにして立ち上がり、一息ついた。


【CHAPTER2 騒がしい2人】
999Y.C. 森国シルヴェーア 鏡鉄遺跡


「ハア。この遺跡は心臓に悪い。こんな仕掛け満載な遺跡は生まれて初めてだ。……だからこそ当たりっぽいんだよなあ。こんな仕掛けが残ってるってだけでも、遺跡としての価値は計り知れない。けど、それ以上に、もっと価値がありそうなのは、この遺跡の奥に守られた"なにか"だ。……おもしろいじゃないの。考古学者冥利に尽きるねえ」


そう言ってラウルは、更に奥を目指して進み出した。

「えぐいねえ……。どういう教育受けたらこんなの思いつくんだ」

目の前の一本道には、左右に振り子のように揺れる大斧の刃がぶら下がっていた。

「当たったらどうなるか……考えるだけでこえーよ。タイミングを計って一気に抜けるしかないな」

1番上まで刃が上がった瞬間、ラウルは一気に駆け抜けた。
すると、まだ先に同じような仕掛けが4つ続いていた。

「おいおい、まだあるのか?気を抜いてるといつか、真っ二つになりそうだねえ……」

同じように一つずつ気をつけて抜けて、奥へ進むとまた部屋があった。

「ここでパズルの再登場、ここもさっきと同じ要領でっと」

床のパネルを踏んで、光を灯すと奥の扉が開いた。

「ふふん、ちょろいちょろい。考古学者ラウルさんにかかれば、この程度の問題は簡単さ」

そう言いながら扉をくぐる。

「それにしたって本当に大掛かりな仕掛けだねえ。……やっぱり思ってた以上の大発見かもしれんぞ」



〔道中台詞〕
「こんな質のいい遺跡を、誰かに踏み荒らされる前に探索できるなんて、あの酒場にふらっと入ったのは正解だったねえ。……情報をくれた女の子もかわいかったし?このまま遺跡の奥で、いいものでも見つかれば、最高に幸せな日になるんだけど……。まあ最近のお兄さんはツイてるし、今日もいいことが起こりそうな気がするね!」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ