エピソードまとめ
□ラウル
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ep.2 最年長者の頑張り
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【CHAPTER3 初めてじゃない野営明け】
999Y.C. 森国シルヴェーア 緑地
「んー、いい朝ですわね!」
うーんと、アナマリアは背伸びをする。
「今日も張り切って、いきますわよ!」
「おおー!」
アナマリアの声にシャルルが返事をする。
「元気だねえ」
呑気に起きてきた2人を見ながらラウルは野営の片付けをしていくのだった。
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〔道中会話 アナマリア、シャルル、エド、リディ〕
ア「野営は大変だと脅されましたが、全然大丈夫でしたもの!」
シャ「つまり、ラウルはボク達に嘘をついていたということです。万死に値する」
ラ「あれだけぐっすり寝てればねえ……」
リ「テントと寝袋を奮発したからでしょ」
ラ「え一、番安い物を買ってきたはずだけど」
リ「じゃあ高級店に入ったのね。テントも寝袋もなかなか上質な物よ」
ラ「そうだったのか……。思えば最初に勧められたのも、かなり高いヤツだったもんなあ」
シャ「なら、ぼったくられたんじゃないですか?」
ラ「ぐぬぬ……反論できない……」
リ「残金から見るに適正価格だと思うわよ。結果的に良かったわ。前に野宿した時は大変だったもの。起きたら全身が痛いし喉はガラガラするし、下はごつごつするし、空気は乾燥してるし」
エ「あの時はろくな準備もしてなかったしな」
ラ「この辺は虫が出るって話だけど、昨日は虫よけをまいておいたしねえ」
ア「おかげで快適でしたわー」
シャ「お嬢様のためにそこまでするとは、なかなかやりますね」
ア「ラウルとエドも寝れば、良かったんじゃありません?」
ラ「お兄さん達が寝たら誰が不寝番するのさ……」
ア「不寝番ってなんですの?」
ラ「そこからかい……」
エ「不寝番ってのは端的に言えば見張りだな。他の連中が寝てる間に獣とかが襲ってきてもいいように、起きてる人間のことだ」
シャ「つまりお嬢様の安眠を守る下僕ですね!」
ラ「違うからね?」
〔獣の群れ〕ウリドン、ゴウリドン、オタグリ
ラ「しかし、行く先々で獣が現れるねえ」
リ「そうね。雨男ならぬ獣男でもいるんじゃない?」
ラ「えっ?なんでお兄さんのこと見るの!?」
獣討伐後。
リ「邪魔者は排除したわね」
〔道中会話 エド アナマリア〕
ア「では次の不寝番はわたくしがやりますわ!」
エ「なにが"では"なんだ……」
ラ「アナマリアちゃんは、我慢できずに寝ちゃいそうだな」
ア「そ、そ、そ、そんなことありませんわ!やってみなければわかりません!」
エ「不寝番は失敗が命に関わる。やらなきゃわからないじゃ駄目なんだ。必ずやり遂げると断言できなければな」
ア「な、なんという狭き門……」
ラ「まあ挑戦させてみてもいいんじゃない?今後もお兄さんとエドだけで、不寝番を続けるのは、限界があるだろう?」
エ「それはそうだが……」
ア「お任せ下さいな!」
〔道中会話 アナマリア〕
ラ「オルスク山脈が見えてきたね」
ア「すごいですわ……あれを登るんですのね!」
エ「無茶言うなそんなことできると思うか?」
ア「へ?じゃあどうするんですの?」
ラ「洞窟を使うんだよ。そこからなら安全にオズガルドに行ける」
ア「はえー、なるほどですわー」
〔道中会話 エド、リディ〕
ラ「エドはちょっと過保護だよね」
エ「そんなことは……」
リ「あるわ」
エ「おい。依頼人を守るのは当たり前のことだろ?」
ラ「まあリディちゃんはわかるけど、アナマリアちゃんにも過保護じゃん?なにか理由があるのかなーと」
エ「……昔の自分に重ねてるのかもな。オレも故郷を追われた人間だ。しかも、当時はガキで世間知らずだった。右も左もわからず苦労したもんだ」
ラ「だから同じ気持ちを味わわせたくないと?」
エ「そこまで考えてのことじゃないが……。そういう気持ちが心のどっかにあったのかもな」
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オルクス山脈と洞窟への分かれ道。
洞窟へと続く道の門は閉められて鍵がかけられていた。
「あら?この門閉まってますわね」
「別の道を使うしかなさそうですね」
「ここを通れないとなると、だいぶ遠回りをすることになるぞ」
エドは険しい顔をしてオルクス山脈を見上げる。
「困ったわね……」
「ふっふっふ…出番かな?」
そう言ったラウルをシャルルがジト目で見た。
「なんかウザそうなのが始まりましたね」
「そんなことを言ってられるのも今の内だぞ。こういう時!お兄さんの腕でササッと……」
「待って下さい!獣ですわ!」
ワラワラと周りにオタグリやウリドン、ゴウリドンが群がった。
「このタイミングで!?ちくしょう、ちくしょう!」
ラウルは槍をぶん回す。
「せっかくの見せ所を邪魔してくれやがって!」
「……その怒りを獣にぶつけたらどうだ?」
「ああ、やってるさ!今回のお兄さんは強いからね!」
「いつもは役に立ってないって自覚があるんですね」
「そういう意味じゃないよ!」
獣討伐後。
シャ「たいしたことないですね」
ラ「もう終わりか!?まだいるならかかって来い!」
エ「よっぽど悔しかったんだな」