エピソードまとめ
□ラウル
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ep.2 最年長者の頑張り
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東門の前に1番に到着したラウルは、その前で他の4人を待った。
しかし、待てど暮らせど4人は来ず、時間だけが過ぎていく。
「……まさか置いて行かれた?」
不安に思ったラウルは近くに居た連邦兵へ声をかけに行く。
「すみません。ちょっとお尋ねしたいんですが、四人組の子ども達が、ここを通りませんでした?一人は目つきの悪い青年なんですが」
「うーん……。覚えてないということは、通ってないんじゃないか?」
「そうですか……。それならまだ中にいるってことだよな?……街の方に戻って探してみるか。あの人数で待ち合わせて誰も来ないなんて………こんな虚しいことある?」
そう言ってラウルはマーケットエリアに向かって歩き出した。
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〔街中会話 東門前広場 男の子〕
「おじさん、旅人さん?」
「おじさんではないけど、旅人っちゃ旅人だよ」
「いいなあ。街の外ってどんな感じなの?」
「獣でいっぱいだ」
「ホントに?」
「そう。だから、キミくらいの年の子は危ないんだ。ペロッと食べられちゃうぞ」
「でもボク獣なんて怖くないよ」
「それじゃ帝国はどうだ?今は戦争中だ。もし帝国兵に捕まったら……。獣に食べられるより、痛くて怖いことをたくさんされる」
「……それはちょっとイヤかも」
「じゃ、この街で大人しくしてた方がいい」
「うん……」
〔マーケットエリア会話 おいでませ亭〕
「へい、らっしゃい!今日はルディロームで一番の食事処……。この"おいでませ亭"。人気料理のレシピを配布中だ!」
「そんな企業秘密を公開しちゃっていいのかい?」
「うちのシェフは、"良いものを誰でも手軽に"が、モットーでね」
「なるほど。お兄さんでもできるかな?」
「もちろんだ!ほら持ってきな!」
〔小ネタ〕
酒屋で買い物するリゼット
花屋で幼女と話すマクシム
が居る。
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広場からマーケットエリアの門を開けて中に入る。
「違います!誤解ですわ!」
「そうです!言いがかりです!」
「この声は……」
マーケットエリアの北の方から、聞き覚えのある大声が聞こえた。
「なにしてんの……?」
アナマリアとシャルルは何やらマーボーカレー飯店の入り口で男と揉めていた。
「ラウル!」
渡りに船、と言うようにアナマリアはラウルの顔を見て喜んだ。
「あんたこいつらの知り合いか?」
男がギロリとラウルを睨む。
「……えっと、この子らがなにか?」
「食い逃げしようとしやがったんだよ!」
「だっておひとついかがですかって、おっしゃったじゃありませんか!?」
「えーと、その言葉通りアナマリアちゃんは受け取って、食べたと」
「はい。もらったものですからタダなのでは?」
「アナマリアちゃん……。それは一つ買っていきませんか、って意味なんだよ」
「そうなんですの!?」
アナマリアは目をクリクリとさせた。
「すみませんね。この子ら、見ての通り世間知らずでして。お代は払いますので」
そう言ってラウルは懐から財布を出す。
「そりゃ、もちろんもらうが、俺に蹴りくれやがった、こいつにも謝ってもらおうか!」
「この不届き者が悪いのです!」
シャルルはツンとそっぽを向いた。
「お嬢様の肩に馴れ馴れしく触れるから!」
「食い逃げしようとする奴を呼び止めねえわけねえだろう!」
「あー……、それは全面的にシャルルが悪い。人に暴力振るっちゃいかんでしょ」
「お嬢様のためです!」
「いいから謝る!」
「なぜですか!」
「シャルル、わたくしからもお願い」
アナマリアが、ぐっとシャルルを見つめる。
「うぐっ……お嬢様がそう言うのであれば。申し訳ありませんでした」
渋々、といった様子でシャルルは謝罪を口にする。
「わたくしからも申し訳ありませんでしたわ」
ぺこり、とアナマリアも頭を下げた。
「ふん!しょうがねえから許してやる。あんちゃん、保護者ならちゃんと教育しとけ」
「保護者ってわけじゃ……。まあいいか……これ、お代です」
「まいど」
ガルドを支払えば、男は満足したようにマーボーカレー飯店へ帰って行った。
「じゃあ先に門に行ってて。お兄さんはエドとリディちゃんを探してくるから」
「了解ですわ!」
「どこで油を売ってるのでしょうね。あの二人は」
「……それ、キミが言う?」
呆れるうちにアナマリアとシャルルは東門へ行ってしまう。
「結局みんなを迎えに行ってるな。待ち合わせってなんだっけ……」
やれやれと思いつつ、ラウルはエドとリディを探してマーケットエリアを歩くのだった。