エピソードまとめ
□シャルル
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ep.1 源獣に至るもの
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次に飛んだのもステンドグラスのような円形の床の上。光の柱が次々と立ち、全員がここに集められた。
「今度は割と早めに合流できたか」
ラウルはホッとした。
「源獣……」
ぼそり、とエドが呟きながらある一遍を見ていて、皆同じほうを見た。
「獅皇……アグライア様……」
白い体に緑色のたてがみを持つ、ライオンのような見た目の、巨大な獣が目の前に立っていた。
エド、リディ、ラウルはその姿を見てすぐさま両手を合わせ、左手の先を少し前に向けた。
「アナマリアちゃん!シャルルも!」
帝国育ちの2人は源獣信仰が無いため、ぽかんとしていて、ラウルが慌てて敬礼をするよう声をかける。
アナマリアはみんなの様子を見て、真似して手を合わせた。
だがシャルルは、人のものとは違う、赤い瞳孔の線をかっぴろげたままアグライアを見つめていた。
「シャルル!」
アナマリアが声をかけると、シャルルはハッとしたように瞳孔を戻した。それからアナマリアを見て、同じように敬礼をした。
面を上げよ。
そこ言葉にみんなは敬礼を解いた。
歓迎はせぬ。だが、接見は許そう。
「寛大なお心感謝いたします。まずは道中の非礼の謝罪を」
良い。知らぬが故の暴言なれば、許す。汝らの会話はすべて聞かせてもらった。ここに至るまでの選択。そして、それまでの道のりを経た、汝らの会話。短くとも、その人となり、判断するには足る。しかし、
ピリリ、と空気が変わる。
幼き三人。我のこの目で最後の見極めをする。
アグライアがそう言った瞬間、ラウルとエドの体が緑色の光に包まれ、姿を消した。
見せよ。汝らの知恵、力。それらが世界に害をなすか否かを。
そう言った後、アグライアは咆哮を上げ、戦いの火蓋を切った。
「そんな……源獣様と戦うなんて……」
「仕掛けてきたのは向こうです」
困惑しながらアグライアと距離を取るリディに、シャルルは淡々と告げ杖を構える。
「遠慮も容赦も無用では?」
「なんてことを!」
ポーンを生成しながらそう言ったシャルルをリディは、不敬なのではと思い声を荒らげた。
「いえ。シャルルの言う通りですわ。この戦いはアグライア様が望まれたこと。全力で立ち向かうことこそ礼儀ですわ!」
アナマリアは刀の柄に手を置いて、アグライアに向かい、走り出した。
「さすがお嬢様、凛々しいです!」
シャルルも5つのポーンを全て生成して、アグライアへと攻撃を繰り出した。
それを見て、仕方ないとリディも銃口を向けるのだった。
〔残りHP3分の2〕
「エド達はどうなっているのかしら……」
「この状況で人の心配なんて随分余裕ですね」
「こら、シャルル。あの二人はきっと大丈夫ですわ。リディちゃんもエドを信じてるのでしょう?」
「……ええ、そうね。信じてる」
「では、今はわたくし達が為すべきことを」
〔残りHP3分の1〕
「わたくし達、獣様相手に結構戦えてません?」
「さすがお嬢様!源獣に並ぶ力を示されるとは」
「アグライア様は手加減して下さっているのよ。あたし達を見極める……。なら、その先のお考えがあるはず」
「お嬢様相手に舐めた真似を……」
「いいえ、シャルル。アグライア様がそのようにお考えなら、こちらは胸を借りるつもりでぶつかるまでですわ。さあシャルル、全力でいきますわよ!」
「はい、お嬢様!」
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アグライアの眉間に、シャルルのポーンの光線が当たり、アグライアの巨体が仰け反った。
見事
そう告げて、アグライアは攻撃の手を収めた。
汝らの知恵と力、しかと見極めさせてもらった。
「終わり、ですの……?」
アナマリアは、刀から手を離しアグライアを見上げる。
無垢なる正義を掲げる娘よ
「わたくしのことですの?」
汝が歩む道が、正道であり続けることを願う。
そう言って、アグライアは今度はリディに顔を向けた。
終焉を探求する幼子よ。汝が未来に破滅ではなく、輝きを見ることを願う。
「それはどういう意味です!?」
アグライアはリディの言葉に答えず、シャルルの方を見た。
そして、何者でもなき者よ。……汝が真なる意味で、生きる道を見つけることを願う。
その言葉に対して、シャルルの反応は無だった。
「アグライア様!お教え下さい!」
リディが前に食らいつくように出る。
「この世界は!」
答えること能わず。
「アグライア様!」
リディの必死の訴えを無視し、アグライアは3人を緑の光に包んだ。
汝らの進む道に光あれ
その言葉と共に、眩い光に包まれて、3人は飛ばされた。