エピソードまとめ

□アナマリア・マルシュナー
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ep.1 籠を飛び立つ鳥
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2人はゆっくり歩いて荒涼地帯を進んでいたら先の細道が、天然の岩壁でゲートのようになっていた。

そこを通ろうもしたら、上からゴロゴロと何か転がる音が聞こえ、アナマリアもシャルルも後ろに飛び引いた。
次の瞬間には上から大岩が転げ落ちて、道を塞いでしまった。

どこから落ちてきたのか、とアナマリアが顔を上げると、崖の上にガルグランと言う大型の狼の獣のが居てこちら側を見下ろしていた。
その獣が、背を向け走って行ったかと思えば、2人の後ろからぐるぐると唸るような声が聞こえた。

「挟み撃ち!?」

2人が振り返れば大量のガルルとガルグランがいた。
先の道たった今、上にいたガルグランによって閉ざされたし、2人に逃げ場はなかった。

「まあ……。あの大岩彼らが落としたんですの?」

「おそらく」

「お利口なんですのね」

「お嬢様……」

呑気なアナマリアに声をかけながらシャルルは杖を構える。

「関心している場合ではありませんよ!」

シャルルに急かされアナマリアも刀を取った。



「人を罠にかけるなんて頭がいいんですのね」

「それだけ人にとって危険ということです」

「ですが……、わたくしをターゲットにしたのが運の尽きですわ!」


アナマリアは抜刀術で、シャルルはポーンのレーザー光線で獣をどんどん捌いていった。


「ふっ……。この程度の浅知恵でわたくしを倒そうなど、片腹痛いですわ!」

「よ!お嬢様!」

「……でも困りましたわ。道が塞がれてしまいました」

「……ですね」

大岩の前に立ち、どうしたものか、と2人は見上げた。

「ふうむ。前に読んだ本の中で主人公が、石を刀でスパッとやっていましたわ。……わたくしにもできるでしょうか。シャルル下がっていてください」

「頑張れ、頑張れお嬢様!」

「ええ。いざ、参りますわ!」

アナマリアは刀の柄を握り、身を低くした。
そして、右の中指にはめた指輪型のリアクターに、意識を集中させた。
すう、と息を吸いアナマリアは呼吸を整え、そして、刀を抜刀した。

シュキン、と剣が抜けるお音共に、目の前の大岩が半分に割れた。

「やってみるものですわね!」

「さすがお嬢様です!」

「ふ、わたくしの辞書に不可能という文字はないのですわ!」

そう言ってアナマリアとシャルルは岩の先へ進んで行った。


道なりに坂を登っていくと小屋が見えた。

「まあかわいい小さなお家だわ!」

「せっかくですし少しあそこで休みませんか?」

「もう夜も更けていますし、それがいいですわね」

2人は小屋の扉を開けて中に入りグルリと見回した。


「まあ……見てください!お料理できそうな場所ありますわよ」

「……そう考えるとお腹が減ってきました」

「まあ大変!では、わたくしがシャルルに料理をして差し上げますわ!」

「お嬢様って料理できましたっけ?」

「やったことはありませんが、きっとできますわ!記念すべき第1品目は………そうですわね」

うーんとアナマリアは顎に手を置いて考える。

「"レバーシュペッツレのチーズソース"ですわ!」

そう言ってアナマリアは人差し指を立てた。

「ちょうどレシピを聞いていましたの。あ、でも材料がありませんわね……。まあ、似たようなものを使えば、きっと大丈夫ですわ。少し待っていてくださいませね!」








「できましたわ」

ごとり、とアナマリアはテーブルの上に木製のボウルを置いた。

「これが"レバーシュペッツレのチーズソース"……」

シャルルが見下ろしたのは、木製のボウルに入った紫色の物質。

「流石お嬢様、彩りが斬新で素晴らしいです。いただきます」

シャルルは目の間のボウルを手に取って、スプーンでその物質を口に運んだ。

「……っ!」

シャルルは瞳をかっぴらいた。

「どう?どう?」

ワクワクと言った様子でアナマリアがシャルルを見つめる。

「これが……料理……。美味しいという味……」

ごとり、とシャルルはボウルをテーブルに置いた。

「今までボクが食べていた料理は、刺激が足りていませんでした」

「まあ、シャルルったら褒めすぎですわ!」

アナマリアは両頬に手を当てて嬉しそうに身体をひねらした。


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999Y.C. 森国シルヴェーア 寂光丘陵

翌日、日が登った頃、2人は小屋の裏口から外に出た。

「ふああ……よく寝ましたわ。では、気を取り直して行きますわよ!」

「はい!」

「なんだか体中が痛いですわ」

「お嬢様はいつもベッドで寝ていますから、硬い床は合わなかったんでしょう」

「なるほど。それならこれからは慣れないといけませんわね!」

そう言って2人は丘を下っていく。

「まあ見て下さい!やっぱり明るい時間だと、とても眺めがいいですわ!」

アナマリアは足を止めて、丘の先に見える景色を眺めた。

「本当ですね!」

「わたくし達が通って来た場所も、よく見えますわね」

「こうして見ると……、"じばくそうち"あんなにあったんですね」

シャルルが指した"じばくそうち"、とはレインツ荒涼地帯のあちらこちらに立った、矢羽根のような形をした大型のリアクター装置の事だった。

「ええ、とんでもない数ですわ……。……わたくし思ったんですの。あれはもう使われたあとで、もしかしたら数々の博士が命を散らした証なのではないかしら……と」

「なるほど……だから地面も、あんなに荒れていたんですね。さすがお嬢様!納得の分析です!」

実際は帝国が使用しているリアクターがマナを吸収しているため、大地が枯渇しているのだが、2人はそんなこと知る良しもなかった。

「そうでしょうそうでしょう」

アナマリアは鼻高々に頷いて、景色を眺めながら歩き出すのだった。


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〔道中会話〕
「ふああ……」

「お嬢様。もしかして、よく眠れませんでしたか?」

「そんなことありませんわ!柔らかい菜の上でぐっすり休みましたもの。でも、あまりにお天気がいいから、気持ちよくなってしまいました」

「そういうことならよかったです」

「ふふ。もしかしたらわたくしは、どんな場所でも眠れる特技を持っているのかもしれません!これってやっぱり……わたくしに冒険者の才能があるってことですわよね!?」

「もちろんです!お嬢様は才能の塊ですから!」

「もうシャルルったら。いつもお上手ですわね!」


〔道中会話 崖っぷち〕
「シャルル、下を見てはいけませんわよ」

「はい、お嬢様。水面が綺麗だってことは黙っておきます」

「シャルル!」
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