エピソードまとめ
□アナマリア・マルシュナー
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ep.1 籠を飛び立つ鳥
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「なんだか蒸し暑くなってきましたわね……」
「ここは特に湿度が高いですね」
飛び降りた階は、壁や床のあちこちが苔むしっていた。
「汚いですし、健康によくなさそうです」
「そうですわね……」
「こういう場所にはバイキンが、たくさん住んでるって博士から聞きました。もしバイキンがお嬢様に入ったら大変なことになります!」
「た、大変なことってなんですの?」
「お嬢様の中でバイキンが大暴れして……、体中がズキズキして目がグルグルします!」
「そ、それは怖いですわ!一刻も早く退散しますわよ!」
「はい!」
そう言って2人は、走って進んで行く。
「はあ……はあ……。息苦しくなってきましたわ。もしかしてもうバイキンがわたくしの中に……!?」
「お嬢様、安心して下さい。それはただの息切れだと思います」
「よ、よかったですわ……」
ホッとしたアナマリアは水路に出てその中を進んで行く。
「行き止まりですわ」
通路が跳ね橋のようになっていて、封鎖されていた。
リアクター式の仕掛けのようで、傍にレバーがあるからそれを引けば良さそうだ。
「いたぞ!あそこだ!」
レバーの元にたどり着く前に、帝国兵達が後ろからやってきた。
「追いついてきたのか!」
「こうなれば戦うしかありませんわね。ふ……今宵の我が刀は血に飢えておりますわ!」
アナマリアはするり、と鞘から剣を抜く。
「殺せ!」
「させません!」
シャルルも杖を手に取り、ポーンを生成した。
「しつこい殿方は嫌われましてよ!」
2人は向かってきた敵と退治した。
「ふ」
帝国兵達を全て倒したアナマリアは鞘に刀を戻した。
「わたくしに勝とうなど百億年早いですわ!」
「ブラボー!ブラボーですお嬢様!」
「さあ参りましょうか」
「はい!」
アナマリアがレバーを引けば、そこからエネルギーが充填され、マナがながれ折れて上に上がった通路がゆっくりと下に降ろされ、2人はその道を進んだ。
「もうすぐここを抜けられそうです」
「まあ本当ですの?ということは……、もうこの上は屋敷の外……なのでしょうか?」
「博士は本当にお嬢様を外の世界へ連れ出してくれましたね」
「ええ……そうですわね。この先にはいったい、なにがあるのでしょう……。わたくしワクワクいたしますわ!」
アナマリアは、出口らしき鉄格子の門を開け、外へと飛び出したのだった。
【CHAPTER4 帝都にさよなら】
999Y.C. ジルドラ帝国 レインツ荒涼地帯
「ふわあ〜。ようやく外に出られましたわね!それに……臭くありませんわ!」
そう言ってアナマリアは外の空気を思いっきり吸い込んだ。
「よかったですね!」
「せっかく屋敷の外に出られたんですもの、もう少し景色を楽しみたかったのですが、暗くて周りがよく見えませんわね……」
周囲は荒れた土地で若干枯れ草色の草木が生えているのが、アナマリアの目にハッキリと見えるのは、上を見上げた時の空の満点の星たちと赤いマナの川くらいだ。
「でも空気は新鮮です」
「ええ!わたくしやっと理解しました。これこそが本当の……"鼻を通る息吹こそ生きた証"ですわ!」
もう一度大きく呼吸をした後、アナマリアとシャルルは荒涼地帯を進んで行くのであった。
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〔道中会話〕
「それにしてもしつこい追手でしたわね。ああいう男のことなんと言ったかしら………。そう!ストーカーですわ!どこまでも諦めずに女性を追いかけ、捕まえて恐ろしい目にあわせるという」
「あれが噂の!それなら、あのしつこさも納得というものです!ということはお嬢様のこと………まだ諦めていないかもしれませんね」
「こうしてはいられませんわ!もっと遠くに逃げませんと!」
「はい!お嬢様はボクがお守りします!」
「頼りにしていますわ!」
〔道中 獣の群れ〕
「…いっぱいいますわね」
「お嬢様のかっこいいところ見てみたいです!」
「そう言われてはやるしかありませんわね。見物料はシャルルの頑張りですわ!」
「それは頑張らねばなりませんね!」
獣討伐後。
「なんとかなるものですわね」
「ええ。さすがお嬢様です!」
「ですが……、シャルルはわたくしを守って下さるんじゃありませんでした?」
「………さすがお嬢様です!」
「……まあ、いいですわ」
「毎日の鍛錬の成果ですね」
「そうですわね。毎日同じことを繰り返して 意味があるのか疑問でしたが、こうして実戦で問題なく動けているのですから、剣技の先生の教えは正しかったのでしょう」
「ではもしかしたら、礼儀のお稽古やダンスのお稽古も役に立つ時がくるのかもしれませんね」
「もう味のわからない食事をするのはごめんですが………。そうだといいですわね」
〔道中会話〕
「それにしても……、さっきからたくさん見えるあれはなんなのでしょう?」
「不思議ですわよね。でも……ああいうものは博士が好まれそうですわね」
「ハッ!?ということは……」
「シャ、シャルルも気付いてしまいましたの?」
「はい。あれはきっと……」
「"じばくそうち"……」
「ど、どうしますか、お嬢様!」
「ど、どうしようもありませんわ!じばくそうちは博士にしか使えませんし、たとえ持って行っても手に余りますもの!」
「そ、そうですよね……残念ですが……」
「でも、まさかあんなに大きいものだなんて………さすがは生涯に一度の秘奥義ですわ……」
「本当ですね………」