エピソードまとめ
□アナマリア・マルシュナー
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ep.2 お嬢様の小さな冒険
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「今度は岩ですわ!」
3人の前に大岩が立ちはだかった。
「では、ここで名推理タイム!」
そう言ってラウルは大岩を指さす。
「この岩肌についてるのは間違いなく……」
「子どもの足跡ですわ!きっとこの奥に行ったんですのね!」
「お兄さんにも解説させてよ!」
アナマリアに台詞を横取りされて、ラウルがガックリとする。
「……んじゃ、とりあえず登るか」
「……一張羅がさらに泥だらけになりそうだよ……」
「あら?登る必要はありませんわよ」
「なに?」
エドは首を傾げてアナマリアを見た。
「わたくしこういうのは経験済みですの。少し下がっていて下さいな!」
そう言って刀の柄を握るアナマリアを見て不思議に思いながら、エドとラウルは彼女から少し距離を取った。
アナマリアは、大岩の前て身を低くして、しっかりと刀の柄を握って、気を溜める。
「……はあーっ!せい!」
アナマリアが抜刀すると、目の前の大岩がスパンと斬れた。
「へえ……やるな」
「ふっふっふ。これがわたくしの実力ですわ!」
そうアナマリアは胸を張って、岩の先をすすんで行くのであった。
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〔道中会話〕
「しっかし、今日は歩いてるねえ。ルディローム観光だけで結構あっちこっちしたし」
「そうですわね。男の子を助けたら続きに参りますわよ!」
「まだ回るつもりなのかい!?」
「さすがにもう観光は充分だろ。あとは商店街の店を一軒ずつ回るしかないぞ」
「楽しそうですわ!」
「……お兄さんパスしていい?」
「というか、そもそもそんな時間はない。子どもの件が片付いたらさっさと宿に戻るぞ」
「そんな!?」
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奥へ進むと大木の周りを囲むような泉が見えたきた。
「あっ、見て下さいまし!」
泉の傍に小さな子供が見えた。
「探してた子で間違いなさそうだな」
3人は急いで、泉の傍に駆け寄った。
「あなたが迷子の男の子ですわね」
「……誰?ボク、迷子なんかじゃないよ。ここには来たくて来てるだけだし」
「でも、獣がいっぱいで危ないですわ」
「お母さんも待ってるよ。一緒に戻ろう」
「イヤだ!お母さんなんてどうでもいい!
「完全にヘソを曲げてるな」
「……仕方ありませんわね。ふんじばって連れていきましょう!」
「めちゃくちゃ強引…………ってなんか来たんだけど!?」
アオーンという鳴き声と共に、ガルルとガルグランの群れが現れる。
「子どもに近付けさせるな!」
「了解ですわ!」
エドが双剣を抜き、アナマリアも刀の柄に手を置いた。
「こんな大物と出くわすなんてツイてないねえ」
そう言ってラウルは、子供の前に立って槍をクルクルと回し獣からの攻撃を防ぐ。
「ものは考えようです!間に合ったのだからツイてるんですわ!」
「は!そいつはいい考え方だねえ!」
「しかし、あんたが言ってた 本の話が本当になっちまったな」
「森の奥には強い獣が……ってヤツだっけ。ちなみにそのお話の結末は、どうなるんだい?」
「英雄がスパッと倒して、めでたしめでたしですわ!」
「じゃあ、お兄さん達もハッピーエンドのために頑張らないとね!」
そう言って戦っていると、ガルグランよりも更にデカい、ガルルドゥークが現れた。
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ガルルドゥークが雄叫びを上げ、大きな体を倒した。
「ふう」
倒し終えアナマリアが一息つく。
「なんとかなったねえ」
「わぁ……」
とてて、と男の子がアナマリアの傍に駆け寄った。
「怪我はありませんか?」
「大丈夫!」
「まったく」
元気に返事する男の子を見て、エドが肩を竦めた。
「さあ!おしまいですわよ!」
アナマリアは獣のにトドメを刺そうと歩き出す。
「お姉ちゃん達、すごいね!こんなおっきいの倒しちゃうなんて……」
興奮冷めやらぬ、といった様子で男の子はアナマリアの横を駆け抜けて、ガルルドゥークの傍に寄ってしまった。
「はっ!?」
運悪く、ピクリとガルルドゥークが目を開けた。
「うわああああっ!?」
男の子の服のフードに噛み付いて、ガルルドゥークは彼を釣り上げるように立ち上がった。
「チッ!」
今が好機と言わんばかりに、ガルルドゥークは走りって奥の森へ逃げていった。
「なんてこった!」
「すぐに追いましょう!」
「ここが最奥だと思ったのに……」
「こんな所に道があったんですのね……。でも逃しませんわよ!」
そう言って3人は、奥に逃げたガルルドゥークを追うのだった。