エピソードまとめ

□リディ・ドラクロワ
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ep.1 天災となる天才
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「はあ……はあ……」

「こっちだ!集まれ!」

肩で息をする少女の元に、倒しても倒してもぞろぞろと男達が現れる。

「くっ……!キリがない!」

撃退を諦めて、走って逃げることにした。

「あ、まて!」

手を伸ばし追いかけてきた駅員に、少女は銃口を向け球を打ち出した。

「ふん!」

駅員が倒れ、そのまま少女は走って逃げた。



全速力で逃げ、少女は道中積み重ねられていた木箱の後ろにその小さな体を隠した。


「はあ……はあ……きつい……」

しゃがんで男たちが去るのを待つ。

「……特製栄養携行ドリンク」

少女はカバンから極彩色の液体の入った、注ぎ口付きのパックを取り出した。

「まだ使いたくなかったけどしょうがない」

キャップをくりっ、と捻って外す。

「あたしは頭脳労働専門で、体を動かすのは専門外」

注ぎ口に口をつけ、右手でパックを押して少女は中身を飲んだ。

「……でも、今後はそうも言ってられないから、体、鍛える?」

パックを口から離して、左手で太ももを触る。

「……これは、そう。贅肉ではない。女性特有の丸み」

むに、と少女は太ももの肉を摘む。

「なんにしても、強くならないと」

少女はゆっくりと立ち上がった。

「あの男の追手を跳ね除けられるくらいには」



【CHAPTER4 同行者探し】
999Y.C. ハザール商盟領 商都ワースバード

「駅は使えない。車掌が買収されてただけならいいけど、最悪列車の運行会社そのものが、あの男と結託してるかも。あいつは世界中に裏金で影響力を伸ばす、ドラクロワ商会の会長だもの。やりかねない……。いいえ、高確率でやるはず」

追っ手の者達が居ないか確認しながら少女は歩き出した。

「でも、そんな男でも、街の外まで手を回すには時間がかかる。ならこの街さえ出れば、まだなんとかなるはず」


そう考えた少女は、街の中のオアシスの左側にある門へ向かい、そこを抜けて街道を進んだ。

「こうなったら歩きで砂漠を越えるしかない 。できる……。できる。……でも、一人じゃ限界がある。信頼できる同行者がいれば……。酒場に行きましょう。 人探しには最適なはず」

そう呟きながら門を開けて居住区へ入った。


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〔居住区会話 子連れの女性〕
「あらあらっ、旅人さん。バザールはこっちじゃないわよ」

「……随分ご機嫌なのね」

「あ、わかる?わかっちゃう?実は今日、うちの子が誕生日なの」

「子どもの誕生日………。そんなに嬉しいものなの?」

「あなたくらいの子だと、わからないかもしれないけど、子どもの成長は親にとって、なにより喜ばしいものよ。今日はごちそうを作ってお祝いしないと」

「そう。……素敵ね」


〔居住区会話 北門付近の男の子〕
「あなた、酒場の場所を知らない?」

「さかば……お酒飲むところだっけ?ここをまっすぐ行って……もっとまっすぐ行って左に曲がればあるよ」

「とりあえず直進すればいいのね」

「……でもお姉さん、お酒飲むの?ダメだよ!まだ子どもなんだから!」

「……あなたくらいの子に、子どもと言われるのは癪だけど、酒場の使い道はそれだけじゃないの」

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〔道中台詞〕
「あの男は世界中に商売の手を広げてる。でも拠点がこの街であることに間違いはない。この街さえ出れば影響力は落ちる。追手の数も減るはず。追手が暗殺者に変わるかもしれないけど……」


〔岐路会話 女性〕
「お嬢ちゃん、もしかして……屋敷のヤツらが追ってる子かい?」

「うっ……!」

「お待ち!突き出すつもりはないよ。ただこの辺りにはもう連中の手が回ってる。周りに注意して早くお逃げ」

「………どうして」

「あの会長に恨みを抱いてる者も、いるってことさ。だから早くお行き。……絶対に捕まるんじゃないよ」

「……ありがとう」

〔岐路会話 東門前の男性〕
「この先には歓楽街があるんだ。夢の街だよ、美味しい食事に酒。それと……極上の美女達!僕を取り囲んであの手この手で」

「……そんなに歓楽街が好きなの?」

「いや、行ったことはない」

「え?」

「そう。だから夢の街なんだ!ああ、僕に勇気が!美女と話す勇気さえあれば!」

「……さようなら」

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東の歓楽街の方ではなく、北の門を開け少女は進む。

「……暗殺。あの男ならやりかねない。実の娘だろうと……。だって、一度も名前呼ばれたことない……。あたしは、"お前"でも"出来損ない"でもない……」

少女の足取りは少しずつ重くなっていく。

「リディって名前……あなたが付けたんだよ?お父さん……」

泣きそうな声で、少女──リディは呟いた。

「名前で呼んでよ……」

涙を堪え進むリディは、街道と街を繋ぐ門を押し開けた。

「いたぞ!」

「しまった!」

門の先には追手の男達が待ち構えていた。

「さあ……追いかけっこは終わりだ。このままじゃ俺達が旦那に消されちまう。全総力で相手してやるから覚悟しろ!」

「くっ……。とんでもない数………。……だからって、だからって諦めない。あたしは証明するの……。こんなところで捕まってたまるもんか!」

そう言ってリディは引き金を引いた。
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