エピソードまとめ

□リディ・ドラクロワ
4ページ/6ページ

ep.1 天災となる天才
─────────♢────────


「ひとまず難所は抜けたかしら。尾けられているような足音もない」

歓楽街を抜けながら少女は辺りを確認する。

「よし!駅に向かいましょう。列車に乗ってこの街を出れば、さすがに迫って来れないはず。…………本当に?」

疑心暗鬼になりながら、少女は歓楽街の北の門を押し開け、街道を進む。

「あの男のこと。どこまで手を伸ばしてても不思議じゃない。親としては、最低な男だけど、一代で莫大な財を築き上げた手腕は本物。天才たるあたしの親だもん。先を見越して駅に…………いいえ。ともすれば列車の行き先にも、もう手を回してるかも……。なんにせよ確認はしておかないと。もし駅が駄目だったら。その時は……」

そう呟きながら、少女は街道を真っ直ぐ進むのだった。

────────────────────

〔街中会話 女の子〕
「おねーさん、ここにいたら危ないよ。今日はなんか色んな場所で、ドゴーン、バババ、ドドーンって、すごい音が聞こえるの」

「……そう。あなたも巻き込まれないように気を付けて」


〔街中会話 お姉さん〕
「あら、お嬢ちゃん迷子?」

「違うわ。そんな年でもないし」

「あらあら、ごめんなさいね。甘えたな弟がいるから気になっちゃって。この子もあなたくらい自立してくれればいいんだけど」

「……いいんじゃない。甘えられる相手がいるなら、甘えておくべきだと思うわ」



────────────────────

〔道中台詞〕
「リアクター……大丈夫よね。テストと実戦が一緒になっちゃったけど、ちゃんと動いてくれてる。……良かった。これが想定通り動かなかったら、そもそもここまで来れてなかった」

「……さすがはあたし。天才ね。帝国の兵器をここまで自分の物にするなんて。でも急に負荷をかけたから、オーバーヒートが心配。あとでちゃんとメンテナンスしなくちゃ」


────────────────────

〔街中会話 怪しいおじさん〕
「ヒヒッ……娘ちゃん」

「……なに?」

「今ならたったの50ガルド……。いや嬢ちゃんには30ガルドにしてやるよ」

「……なんの話?」

「ククッ……まあ最後まで聞きな。こいつは美容やダイエットにもいいし、摂取すれば気持ちよくなれる……」

「……まさか……」

「ナッツだ!ハザールの厳しい環境で育った実は栄養満点!寝覚めもスッキリと評判の優れものさ!」

「……間に合ってるわ」


────────────────────


「駅が見えてきたわ。列車に乗ればハザールから出られる。それまで絶対に気を抜けない。……いいえ。この国から出ても、あの男ならどこまででも……。……もし本当にそうなったら、あたしはいつまで逃げればいいのかしら。ずっと?永遠に?」


駅に向かって歩きながら少女は首を振った。

「……いいえ、違うわ。いずれにせよ永遠なんてない。だってもう、すでにこの世界は…………」

そう言って駅前の広場に足を踏み入れた。


────────────────────

〔駅前会話 おじさん〕
「駅にキミみたいな女の子がいるなんて珍しいな」

「……旅の者よ」

「それならなおさらだ!言葉は悪いが……よく生きてこれたね。外は獣だらけじゃないか。僕達、商人でさえ手を焼いてるのに、キミみたいな子どもが旅をしてるなんて驚きだよ。どうやら同行者もいないようだし」

「……それなりに強いから」

「……それはきっと運がよかっただけだ。悪いことは言わない戻る場所があるのなら、帰った方がいいよ。キミのためにもね」

「ご忠告ありがとう。……でも、獣なんかより恐ろしいものもあるの」


〔駅前会話 アムル天将領から来た2人組〕
「あっつー!本当暑すぎるねここ!すでにイザミルの気候が恋しいかも〜」

「でもでもバザールには絶対行くでしょ!?」

「オアシスも見なきゃ!すっごく綺麗だって聞いたし!高い列車代の元取らないとね!」

「……でも帰りもあれに乗るのか……」

「私達のお尻、無事でいられるかな……」


〔駅前 左側の門〕
「おっとここは通行止めだ」

「……どうして?」

「線路整備の道具が置いてあるんだよ。娘ちゃんには危ないし興味ないだろ?」

「興味はあるけど……。そういうことなら仕方ないわね」

────────────────────


「お嬢ちゃん、乗るのかい?」


駅に近づくと、駅員のおじさんが声をかけて来た。

「……ええ、そのつもり」

「それなら早くしてくれ。もうすぐ出るよ」

「いたぞ!」

後ろから大声でそう聞こえた。

「くっ!」

「あんた……追われてるのか?そいつはマズいなすぐに列車に乗るんだ!」

「……どうしてそんなに列車に乗せたがるの?」

少女は警戒して尋ねる。

「そ、そりゃ女の子が危険な目にあってたら無視は…………」

おじさんは途端にしどろもどろになった。

「それにどうしてあたしだと思ったの?」

「え?」

「ここにはあたしの他にも人がいるのに、どうしてあたしが追われてると思ったの?」

「……チッ。勘のいいガキだな。こうなったらしょうがない。おい!捕まえろ!」

少女の警戒は正しく、男は父親の手の者だった。すぐさまおじさんから距離を取り、後ろからやってるくる男達に銃を向けた。


「危なかった。あのまま列車に乗ってたら、逃げ場のない狭い車内で捕まってた。後から来た連中は、列車のことを聞いてなかったのね。焦って変な反応を見せてくれたおかげで助かった」

そう言って少女は引き金を引いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ