エピソードまとめ

□リディ・ドラクロワ
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ep.1 天災となる天才
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【CHAPTER3 砂漠街の逃走劇】
999Y.C. ハザール商盟領 商都ワースバード

「逃げなくちゃ。少しでも早く少しでも遠くへ。……あたしを売るって言ってた。実の親のくせに……」

少女は屋敷を飛び出して、街の中をひたすら走り抜けた。

「……関係ない。あいつはそういう男だもの。生まれてから今までずっと……。でも、だからこそわかる。絶対に追跡の手は緩めないって」

噴水広場の前まで来れば、大勢の男達が警備に当たっているのが見えた。

「この人数……ちょっと厄介だわ。単発の弾じゃどうしても不利。……それなら、グレネードで一気に片付ける。……あたしは天才だもの。こんな状況、想定済みよ」

少女は噴水の影から飛び出した。

「怪我をしたくなかったらどきなさい」

「アア!?舐めてんじゃねえぞ!」

「……哀れな人達。警告はしたわよ」


そう言って少女はグレネード弾を発射して、男達を一掃した。

「……中途半端なバリケード」

道の先を塞ぐように木箱が積み上げられていた。
少女を先に行かせまいと突貫で用意したものなのだろう。

「これくらいならグレネードで壊せるかも」

もう一度グレネード弾を使い、木箱を全てぶっ飛ばしたあと、少女は街の西側の街道を進んでいくのであった。

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〔道中台詞〕
「こんな大掛かりな足止めをしてくるなんて……。本気で逃がす気はないみたい。連邦とか……組織とかに、あたしを売るって言ってたけど。連邦はもちろん"組織"なんて、どうせろくな所じゃない」

〔道中台詞〕
「逃げなきゃ。逃げられなかったら……ううん。あたしは天才だもの。できる。……できる」


〔道中台詞〕
「追手達…………。倒しても倒しても虫のように湧いてくる。……それだけあの男に従う人間がいるってこと。これもあの男の言う"勝手"ができる理由。汚い手で築き上げた富と権力の賜物…………くだらない。金のために命を捨てる人間も、……あの男も」

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〔居住区〕
「ここをまっすぐ進めば歓楽街だったはず。でもこのまま進むのは危なそうね。迂回して行きましょう」


〔居住区会話 入り口付近男性〕
「……この街にはあの男と繋がってる人間が多い。いえ、大多数がそうだと考えるべき。……うかつに話しかけない方がいい」


〔居住区会話 父娘〕※スパイスライスヨーグルトソースがけのレシピ
「お父さん、今日のご飯はなーに?」

「さっきバザールでヨーグルトを買ったから……、パパ特製のスパイスライスヨーグルトソースがけだ!」

「ほんと!?やったー!」

「スパイスライス……」

「あれー?おねえちゃんどうしたの?」

「っ!なんでも……」

「わかった!おねえちゃんもパパの料理食べたいんだ!」

「そ、そういうわけじゃ……」

「なるほど。この料理を知らないということは、キミ、旅人さんだね?それならワースパードに伝わる秘伝のレシピを教えてあげよう。これで家族もにっこりさ!是非作ってみてくれ」

「……家族。……ありがとう」

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少女は居住区の北門ではなく、西門を開けて進んだ。

「昼間はバザールの方に人が集まってるから、今ならきっと歓楽街の方は人が少ない。……行ける」

遠回りになるが、追手に捕まるより良いと、獣たちがいる街道を進んでいく。

「……無駄に広い街。ハザールの商部と呼ばれるだけはある。……ハザール商盟領。砂漠と荒野に覆われ、太魚サンカラを奉じ、富を……利を尊ぶ国……。でもこの街を飛び交うたくさんのお金は、決して綺麗な物ばかりじゃない。……あの男を成り上がらせた物が、そうだったように」


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〔街中会話 老人達〕
「どうも最近腰が痛くてなあ……」

「バザールで薬を買って来たらどうじゃ?」

「確かにあそこになら、いい薬が売ってそうじゃのう」

「商いの玄関口というのも役に立つもんじゃな」


〔街中会話 子供達〕
「ねえ、あなた……」

「シッ!今話しかけないで!あいつが振り向いた時、動いたら負けちゃうから!」

「ふーん……そういう遊びがあるのね」

「興味あるならお姉さんも一緒にやる?」

「……今は遠慮しておくわ」



〔街中会話 5人兄弟の母親〕
「あんた達、勝手に走り回るんじゃないよ!」

「……この子達、みんなあなたの子どもなの?」

「ああそうさ。毎日忙しくって仕方ないよ」

「……大変そうね」

「まあでも、飽きないのは間違いないね。どんなやんちゃ坊主でも、この腹で生んだ子だから、それなりには可愛いんだよ」

「ふーん……いいわね」


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「私は世界を知らない。本の中で……文字でしか見たことがない。もしかしたら世界は想像以上に危険なのかも。……それでも、実の親に売られるよりマシ」

そう言いながら少女は、生まれ育った国を初めて歩いていく。

「おや?お嬢ちゃん……」

歓楽街への道を目指して居れば、ふいに、杖を付いた老人に声をかけられた。

「っ……!」

あの男──父親の手の者ではないか、と少女は警戒した。

「見ない顔じゃな旅人さんかい?」

「……ええ、そうなの」

「そうかいそうかい。商都ワースバードへようこそ」

老人はにこやかにそう言った。

「ここを右手に行くと歓楽街があるが……、昼間はバザールの方が楽しいぞい。色々な国から仕入れられた様々な物が売っておるからな。ただしスリには気をつけるんじゃぞ」

「……ご親切にありがとう」

ただのいい人だったと、少女はホッと胸を撫で下ろし、教えてもらった通り、右手のゲートを潜り歓楽街の方へ向かった。

「……それにしても、戦ってばかりいたらお腹が減ってきたわ。当然の生体反応ね。……でもどうしよう。部屋から持ってきた特製栄養保存食はあるけど……」

街道を出て少女はそんなことを考えながら少女はカバンに手を伸ばす。

「……まだ駄目。この先なにが起こるかわからない。食料は貴重。ストックしておかないと」

頭を振るい、少女は伸ばし手を引っ込め、歓楽街の門を開けた。


「ここが歓楽街……。やっぱりこの時間は人出が少ないわね」

街に入るなり、少女は身を潜めた。

「ここにもこんなに……」

父親の手の者たちが、自分を探してウロウロしていた。

「……正面突破よ。チャージレーザーは、トリガーを連続で押せば出力アップ。弾数は少ないけど、そこは威力とトレードオフね。……吹き飛ばしてあげる」


少女は狙いを定め、チャージレーザーを使い一気に見回りの男たちを吹き飛ばした。
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