エピソードまとめ
□リディ・ドラクロワ
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ep.1 天災となる天才
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砂漠の街の中を、ピンクと水色の2色が混じったツインテールを揺らしながら、白衣のような衣装を着て大きなうさぎのぬいぐるみを背負った女の子が、1枚の手紙を読みながら歩いていた。
拝啓 リディちゃんへ。
やあ、元気かい?
今度遊びに行くって言ってた件だけど、急用ができて行けなくなっちゃったんだ。
欲しがってた"あれ"を買ってあげるって言ってたのに、それ本当に必要?って言われちゃってさ。
参ったよ。
「ガスパルは来れない。"あれ"を買おうとしているけど、それを止めてる別派閥の人間がいる」
そういうわけで今回は、泣く泣く購入を諦めたんだけど、いつかは手元に置こうって話になってるから、期待して待ってて。
「そう」
少女はピタッと足を止めた。
お詫びに、氷を送って置いたから。
好きに使ってくれていいよ。
「なら、好き勝手しようかしら」
そう言って少女は手紙を畳み、目の前の鉄門の先に見える、大きな魚の石像のようなものを見つめるのだった。
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少女は鉄の門を開けて、街の中へ足を踏み入れた。
「見つけたぞ。……ったく」
そう言って、どん、と足踏みし、少女の前を数人の男達が塞いだ。
「お嬢。勝手に屋敷から出られると困るんすよ」
「まだやることがある」
「はあ……。我儘言わねえで下せえ。俺らが旦那に叱られちまう」
「あの男の話はしないで。不愉快」
そう言って少女は踵を返す。
「ちょちょちょちょ!どこ行くんっすか!?」
「やることがあるって言った」
「……おい。あんま調子乗ってると、こっちも考えがあんぞ?」
そう言って男達は、帯刀していた剣を抜いた。
それを見て、少女はうさぎのぬいぐるみに刺していた、ピンクのユニコーンのような見た目の銃を手に取り、男達に向けた。
「ハッ、そんなおもちゃ取り出してどうしようって……」
バチュン。
少女が引き金を引けば、男の足元付近の地面にレーザー光線のような物が撃ち込まれた。
「で?考えって?」
少女は目をかっぴらき、左にクビを傾げ、煽るように男たちを見た。
「お……おもちゃじゃねえのかよ!?」
「怖くなったのならどいて」
「てめえ……!」
【CHAPTER1 やっぱり】
999Y.C. ハザール商盟領 商都ワースバード
「どうやらお仕置きが必要らしいな!」
「ただ単に憂さ晴らししたいだけでしょ?あの男にいつも怒られてるものね」
「うるせえ!」
男たちが一斉に襲いかかってくる。
少女は急いで距離を取り、男達へと銃口を向けた。
「……相手は複数。弾の数を考えながら立ち回らないと。弾がなくなったらトリガーを長く押してリロード……」
確認をしながら照準を定める。
「……うん。大丈夫。自分で作ったんだものしっかり扱えるわ」
そう言って少女、銃の引き金を引いた。
「……ふう」
男たちを全て撃ち倒し、少女は一息ついた。
「"考え"を聞くまでもなかったわね」
「クソ……。とんでもねえもん振り回しやがって……。そいつは帝国のリアクターじゃねえか。ここは連邦だぞ?なんでてめえがそんなもんを……」
倒れた男の1人がぶつくさとそう呟いた。
「ハッ……あんな旦那でも実の子には優しいってことか」
「…………あの男からもらった物じゃない。これは自分で作ったの」
「……冗談も休み休み言え。文字通りの"箱入り娘"に、なにができるってんだ」
少女はその言葉に少しむっとしながら、男を無視し、先の鉄門を押し上げて街道へ出る。
この商都ワースバードは、広大な砂漠の中に作られた街。
各区画が砂漠の中の街道で繋がっていて、そこには獣が出るのであちらこちらを獣避けの鉄門で塞いでいる。
「まさかこんなに早く見つかるなんて。そういう男だから想定外ではないけど、おとなしく戻ると思ったら大間違い。どれだけ追手が来ようが関係ない。あたしにはやることがある。……源獣の所へ行かなくちゃ」
少女は遥先に見える大きな魚のような源獣、サンカラを見上げ前へ進んだ。
〔道中台詞〕
「リアクターの実践は問題なし。あの程度ならあたしだけでもいける。でも組み敷かれたりしたら危ない。近付かれないように距離を保って撃たないと、この体格差だとどうしても力負けしちゃう。……大人と子どもだもん」
〔道中台詞〕
「そうあたしはまだ子ども。成長の余地あり。これから……これから大きくなる。成長に必要な栄養素は充分に摂ってる。だからもうちょっとすれば成果が出てくる…………はず」
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〔居住区会話 入口付近女性〕
「あら?あなた、見ない顔ね。この辺は旅人さんにとってつまらない場所よ」
「……そうなの?」
「ええ。見ての通りただの居住区だもの。ワースバードの名所……バザールはもっと南の方にあるわ。まだ訪れてないなら一度行ってみたら?」
「……ご親切にありがとう」
「ええ。ハザールでバザール、楽しんで行ってちょうだい」
「…ん」
「だ、ダジャレじゃないわよ!」
〔居住区会話 高台の上老婆〕
「サンカラ様……今日も私達をお導き下さい……。我ら源獣とともに……」
「……随分熱心なのね」
「私が今生きているのも源獣様のおかげですから。ここは住むのには少し不便ですが、サンカラ様に一番近いのでいい所なんですよ」
「そう……」
〔居住区会話 北門付近の男の子〕
「ここをまっすぐ行ったらサンカラ様のところだよ」
「太魚サンカラ……。この国……ハザール商盟領を護る源獣……」
「そうそう!すっごく大きいよね!おねーさん旅人でしょ?ってことは……他の国の源獣も見たことあるの?」
「……見たことはないわ。でも知ってる。源獣がなんなのか。もしかしたらその正体も……」
「おねーさん……?」