エピソードまとめ

□エドワール・ルキエ
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ep.1 旅立ち
─────────♢────────



「クソッ、どこへ行きやがった!?」

「南の方に行きやがったようですぜ!」

「コケにしやがって!」

荒々しい男たちが砂漠の空の下、走り回っていた。

「邪魔だ!ぶっ殺すぞ!」

「ひいっ」

近くにいた老婆を押し退けて、男たちは走っていく。
そんな老婆に、一人の青年が手を差し伸べた。

「婆さん、大丈夫か?」

「ああ……ありがとうねえ」

青年は手を貸して老婆を引っ張りあげた。

「随分とまた、物騒なところに来ちまったな」

そう言って青年は気だるそうに頭を掻いた。

【CHAPTER1 護衛の仕事】
999Y.C. ハザール商盟領 商都ワースバード


「おい」

青年は老婆を突き飛ばした男に声をかけた。

「なんだあ!?邪魔しようってのか!?ぶっ殺すぞ!?」

そう言って男は仲間たちと共に武器をとって襲ってきた。

「いきなりだな…………この街に来たのは間違いだったか。まさかこんな治安の悪い所だとは」


襲ってきた男たちを青年は自身の双剣で叩きのめした。

「……ハア、無駄な体力を使っちまった」

「ありがとうねえ。おかげで助かったよ」

「降り掛かってきた火の粉を払っただけだ」

「なにかお礼をしないと。そうだこれを持ってお行き。この辺じゃ渇きを癒すにはミントティーさ」※砂漠のミントティーのレシピ



「悪いな。気を遣わせてしまって。ついでに甘えて悪いんだが、ここら辺で流れ者の傭兵にも仕事をしている所はないか?」

「それだったら、左手に行った先にある酒場がいいんじゃないかい?」

「左手の酒場ね、助かる」

「本当になんてお礼を言えば良いやら。お前さん物腰もしっかりしてるし、流れ者なんかには見えないよ。いい仕事があるといいねえ」

「どうも」


青年は老婆に教えてもらった通り左手の獣避けの柵を開けて道なりに進んで行った。

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〔街中会話 倒した男〕
「くそっ……。てめえよくも邪魔しやがって……。早くアイツを見つけなきゃならねえのによ…………」

「……誰か探してたのか、まあ俺には関係ない話だ」


〔街中会話 男性〕
「見てたぜ兄ちゃん。いい腕っぷしじゃないか」

「ここは普段からこんなに荒れてるのか?」

「いつもはここまでじゃないさ。けど、今日はなんだかあちこち騒がしくてねえ」

「……そうなのか」


〔道中台詞〕
「この街で仕事を探すなら左手の酒場か。昼間からあんな連中がうろつく街だ。仕事も推して知るべしってところか。まあどんな仕事でもいい。オレはただできることをやるだけだ」


〔街中会話 女性〕
「あら坊や、お姉さんと遊ばない?坊やカッコいいから安くするわよ」

「……オレの方が金をもらえる訳じゃないのか」

「んまっ、なーに?失礼な子ね!」


〔街中会話 酔っ払い〕
「おう……ヒック。小僧、酒場になんの用だ?」

「ここで仕事の斡旋をしていると聞いたんだが」

「へっ、やめとけやめとけ。依頼する側も受ける側もろくなもんじゃねえ」

「それでも構わん。生きるためには稼がなきゃならないからな」


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青年は酒場の扉を開き中へ入った。

「ちょっといいか?ここで仕事を……」

「仕事の依頼をしたいのだけれど」

青年がバーのカウンターにいる男に声をかけたら、同じタイミングで女の子の声がした。
横を見ると白衣のような衣装を着た、ツインテールの女の子が飴を咥えて立っていた。

「お嬢ちゃん。ここは子どもの遊び場じゃないんだが、ちゃんとした依頼なんだろうな?」

「もちろん。お金ならあるわ」

女の子はパンパンに膨らんだ大きな巾着袋をどしんと音を鳴らすようにカウンターの上に置いた。

「ひゅう♪」

酒場の隅にいた、3人組の1人が口笛を吹いた。

「おい。その依頼、オレが受ける」

「あんた、この辺じゃ見ない顔だよな?素性がわからん者に、高額な依頼を回すのはなあ……」

「いい。この人にお願いする」

そう言って、女の子は先程の袋を回収し、中からガルドを数枚抜いてカウンターに置き直した。

「……問題が起きてもうちは関与せんからな」

「ありがとう」

酒場のマスターと少女がそんなやり取りをする後ろを隅にいた男たちが通って酒場を出ていった。


「よろしく」

女の子は青年を見上げる。

「ああ」

「すぐ動ける?」

「問題ない」

「じゃあ、西門へ向かいましょう」

青年は頷き少女と共に酒場を出るのだった。

「で、依頼の内容は?」

「あたしの護衛。ここからシルヴェーアまで徒歩で」

「砂漠を徒歩でか?危険だぞ」

「だから護衛を雇うんでしょ。砂漠もこの街も、あたし一人では危険だもの」

「たしかにやたら治安の悪い街だな……」

「商人の町だもの、いろんな人間がやってくるわ。それこそ後ろ暗いのや、ろくでもないのも、ね」


酒場を出た2人は街の左の街道を道なりに進んで、西門の方へ向かった。



「もうすぐ門に着くわ」

「待てあいつらは……」

門の前に3人の男達が立っていた。

「よう、お嬢ちゃんちょっといいかい?オレはブルド、そんでもってこっちがユンボにダンプ」

真ん中に立った赤いモヒカンの男が右の青いリーゼントと黄色いモヒカンを指した。

「ワースバード最強のオレ達が護衛をしてやるよ」

「……必要ない」

「まあそう言うなよ。そっちの兄ちゃんよりも頼りになるぜ?」

「必要ないって言ってる」

「チッ。親切で言ってやってんのによお。そういう失礼な子には大人のオレ達が……お仕置きしてやらなきゃならんよなあ?」

「ついでにここの通行料も払ってもらおうか」

そう言ってブルドは剣を、ユンボは銃を、ダンプは槍を持った。

「早速護衛の仕事ね」

「……この街の治安はどうなってやがるんだ」

「よーしお前ら!派手にブチかましてやろうぜ!」

「おら兄ちゃん、覚悟しろよ!」

「ちょーっと顔がいいからって、容赦しねえからな!」

「援護するわ」

そう言って女の子は背中のうさぎのぬいぐるみから銃を取り出した。

「おい!下がってろ」

「依頼主は後ろで守られてろって?」

「そうしてくれた方がオレは助かるんだがな」

「お断りよ。自分の身くらい自分で守るわ」

「っていうかその武器は…………。まったく、この街もあんたもどうなってんだ」

呆れながらも青年は向かって来る敵に双剣を振るうのだった。



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「ちくしょう!覚えてやがれ!」

そう言って、ブルド、ユンボ、ダンプの三人はしっぽ巻いて逃げていった。

「お見事」

「……護衛対象が戦闘に参加するな」

「大丈夫よ。なんせあたしは天才だから」

「なにが大丈夫なのか、わからん」

「安心して。誤射はしないから」

「……戦闘に参加自体して欲しくないんだが」

「この天才の素晴らしい援護射撃がいらないの?」

女の子は腕を組んで胸をそらす。

「いいから任せなさい」

「……もういい」

青年は自分の頭の後ろ撫でながらため息をはき、女の子の説得を諦めて、鉄の門を開けるために前にすすんだ。
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