エピソードまとめ

□ファルク
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ep.1 孤鷹の双刃
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「……なあ、ジョイス。オレは今でも高く飛べてんのか……」

ファルクはぼんやりと空を見つめていた。

「あーいたー。クロードくん!」

そう叫びながら薄紫色のショートヘアの少女が1人近づいてきた。

「だから、オレをその名で呼ぶんじゃねえ!今はファルクだって何度も言ってん……」

気に食わない呼び名に反発して入れば、少女はずいっと顔を近づけた。

「もうすぐ任務はじまっちゃうよ!」

人差し指を立てお説教するようにそう言った少女はぐるりと背を向けて走り出す。

「司令室の前で待ってるから!サボっちゃダメだよ!」

「……はあ」

ぽよんぽよんと、大きな胸を揺らし去っていく少女の背を見て、ファルクは大きなため息を吐いた。

「なんで、オレがあんなやつのお守りなんだよ……」

下を向きガックリと肩を落とした。


【CHAPTER2 孤独こそが我が流儀】
999Y.C. ジルドラ帝国 ラスタック砦

「……納得はいかねえが、手柄は立てねえとな……。えーと、なんだ?司令室だったよな」

ファルクはそう呟いた後、仕方なく彼女の後を追って歩き始めるのだった。



〔砦内会話 通路を塞ぐ木箱の山〕
「なんだこりゃ?通れねえじゃねえか」

「ああ、悪いな。物資の発注ミスがあって、こんなに届いてしまったんだ」

「んだよ。使えねえな、その担当者……」


〔砦内会話 食事処店主〕※極上熟成肉の厚切りレアステーキのレシピ
「すまないが今仕込み中でね」

「マジかよ、腹減ってんのによ……」

「ははっ。そんな腹に今日のメニューはいいぞ!極上の熟成肉を厚切りにした……とびきりのステーキだ!」

「ご、極上の……だと……?……くそっ。そんなん聞いたら、ますます腹が減るじゃねえか!」

「まあ、でき上がるまではレシピでも見て、イメージを膨らませといてくれ」

「……んだよ、その生殺しにしてくる感じ……」


〔砦内会話 食事処前の子ども〕
「なんでんなトコにガキがいんだあ?」

「俺はガキじゃない!いや、どう見てもガキだろ」

「ちゃんと親方から仕事をもらってる立派な大人だ!」

「……へえ、どんなことしてんだよ?」

「留守番とか……、あと……俺が持てる大きさの物を運んだりとか……」

「ただのガキの使いじゃねえか」

「うるせえ!そっちこそなにしてんだよ?こんなトコで俺に、ちょっかい出してるってことは、どうせ任務も与えてもらえない隊のお荷物なんだろ?」

「んだとお!?オレ様は……!…………もっとビッグになってやるから今に見とけよ!」

「だったら俺だって同じだ!今に見とけよ!」

「……ヘっ」


〔砦内会話 帝国兵〕
「……もしかしてファルク曹長さん……?」

「誰だテメエ?」

「以前同じ隊にいた者です……ほらあの、曹長さんが一騎駆けで敵陣を落とした時の……」

「……ああ、確かに見覚えあんなあ」

「その節はおかげさまで俺達も報奨金をもらえまして……。いつかあの日の英雄に感謝を伝えたいと思ってたんです」

「ふん。どーでもいいさ。雑魚の礼なんざ 要らねえよ」

「……そうですか。では、いずれまた美味しい思いさせて下さいね」

「……腐ってんな」


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ファルクが司令室の前へ到着すると、先程の少女と共に、褐色肌に金髪を持つ青年が一緒に立っていた。

「ほら!遅いよクロードくん!ロランス隊の副隊長なんだから、もっとしっかりして下さい!だよ!」

到着するなり直ぐに、少女に怒られる。

「っせえな。オメエみたいなへっぽこに言われたかねえよ」

「またそうやって上官を侮辱する〜!」

「つーか、またお前もいんのな」

「そりゃあ僕もロランス隊の一員だもの。今回もかなり難易度の高い任務らしいから、気を引き締めていこう」

「んなこと言われなくたってわかってんだよ」

「だったら、集合時間に遅れて来た上に隊長に暴言まで吐くのはどうかと思うよ」

「んだとコラア!」

ガンつければ、少女が慌てて割って入った。

「もう!喧嘩はダメだよ!せっかくこの前の任務で二人仲良くなったのに!」

「仲良くなんてなってねえ!」

「……だそうです。上官を待たせてますし、ひとまず司令室に入りましょうか」

「う、うん………」

何食わぬ顔でそういう青年に少女は戸惑いながらも頷いて、司令室の扉を叩いた。


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「失礼します!」

隊長である少女を先頭にファルクと青年も続いて司令室の中へ入った。

「アメリー・ロランス少尉ですっ。ロランス隊二名を連れ参上いたしました!」

「ユーゴ・シモンです」

そう言って少女─アメリーと、青年─ユーゴは背筋を正した。

「……うーす」

ファルクだけは名乗りもせず適当な挨拶をする。するとアメリーがファルクへ視線を向ける。

「クロードくん態度悪いよ〜」

小声でそう言ってきたアメリーにファルクはカチンときた。

「っせえな!ファルクだっつってんだろ!」

「……はあ」

2人のやりとりを黙って見ていた司令官は大きなため息を吐いた。

「あわわっ、ダメだよ〜!怒られちゃう!」

「…いや、構わん。というよりは、もは諦やめた。任務での手網だけは、しっかりと握っておけ」

「は、はいっ!頑張りますっ」

「では、新しい任務について大まかな説明する。先月、連邦の捕虜となったダントリク中将の身柄だが……。リュンヌに移送されたとの情報が確認された」

「リュンヌ……城塞都市ですね?」

「うむ。恐らく、そこで本格的な尋問を行うのだろう。それを阻止すべく、ロランス隊には中将の奪還を命じる。……私からは以上だ」

そう言って司令官が話を切り上げ、三人は司令室を出るのであった。
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