エピソードまとめ
□ファルク
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ep.1 孤鷹の双刃
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「大仕事だね!」
司令室を出てすぐアメリーはグッと拳を握った。
「ロランス隊の名を挙げるチャンスだよっ。責任重大過ぎてドキドキしてきた……!」
「余裕だろ。おっさん一人かっさらって来るだけだぜ。オレに任せときゃすぐにカタつけてやんよ」
「またそういうこと〜。あのね、クロードく……」
アメリーは言いかけた口を1度閉じた。
「……こほん!ファルク曹長。チームワークを忘れないように!」
「へいへい」
「しかし、リュンヌか……。隊長、これは隠密作戦ですね?」
「そういうことになるけど……どうかしたの?」
険しい顔をしたユーゴにアメリーが問いかける。
「恐らく、僕はリュンヌには入れません。僕の顔は連邦に知られてますから」
「いきなり脱落か?亡命者サンはつれえなあ」
そう言ったファルクをアメリーが、こらっ!と叱る。
「ごめんね、ユーゴくん」
「いえ。事実これは僕の"弱み"ですから。そして上は、僕がそれをどう克服するか見ているはず。だからもちろん僕も同行します。役立ち方は…………、おいおい考えるとして……」
「どーでもいいけど、足引っ張るのだけは御免だぜ」
「足引っ張るとか引っ張らないとか、それは違うと思うよ。だって私達はロランス隊!家族のように支え合わなきゃ!」
「支え合うだ?そもそもオレは、オメエの隊にいることも納得してねえ。だから、オレはオレの好きなようにやる」
そう言ってファルクは勝手にその場を離れる。
「あ、ちょっと、クロードくん!」
アメリーの止める声が聞こえたが、それを無視してファルクは歩みを進めた。
「クソ……イラつくな……酒場でメシでも食ってくか……」
そう言って歩くファルクの前を、帝国兵数名が道を塞ぐ形で屯していた。
「……それで連邦のヤツら、尻尾巻いて逃げ出したってわけよ!」
「へえ、大したもんだな!」
「……邪魔くせえな」
「まあ、帝国が勝利できたのも俺がいたおかげさ。そこの金髪くらいのガキ兵士は、ブルッちまってダメだった!」
「若いのはしょうがねえさ、小便漏らしたりな。ゲハハ!」
「……雑魚が」
「……あ?なんか言ったか?」
「テメエの息が臭せえって言ってんだよ、雑魚」
「なんだと!?このガキやっちまえ!」
「俺達が礼儀ってモンを教えてやる!」
そう言って、兵士達は一斉にファルクに襲いかかった。
「じゃあ、オレはテメエらに戦場で必要なホントの強さってヤツを教えてやらあ!」
ファルクは双剣を抜き、苛立ちを乗せた刃を帝国兵に叩きつけた。
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「ハッ、だらしねえ。おらっ、おらっ!」
1対多数だったにも関わらず、地に伏せられた帝国兵達の体をファルクはゲシゲシと蹴った。
「そこまでだ、ファルク」
ファルクの後ろから制止の声がかかる。
「あん?……なんだテメエか」
振り返るとユーゴがそこに居た。
「つまらない揉め事で牢獄送り。それがキミの望みなのかい?」
「……んだと?喧嘩うってんのか?」
「そうかもね。けど、先に売って来たのはそっちだろ?」
「はあ?」
「チームワーク。隊長の指示を明白に無視しようとしている。それは、同じ隊の人間として見過ごせないな」
「しつけえヤツだな。オレはなあ。一人で充分だッ!!」
そう言ってファルクはユーゴに剣を向けた。
「言うこと聞かせたかったらよ、それなりの力見せろや?」
「そういう風習、原始的だけどわかりやすいね。なら今回も模擬戦闘という名目にするよ」
そう言ってユーゴも長剣を抜いた。
「ああ……なんでもいいぜ!テメエを叩き潰せるならよ!」
〔範囲外に出ようとした時〕
「どこへ行くんだい?まだ終わってないだろ?」
〔HP3分の1〕
「ハ、ハハッ……」
「……どうした?息が上がったかい?」
「ほざきやがれ。これはな体が温まってきたっつーんだよ!」
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「……今日はもうやめとくわ」
そう言ってファルクは双剣を仕舞った。
「理由は?」
「テメエとのタイマンは二回目。雑魚じゃねえのはよくわかった。だったら話くらいは聞いてやってもいい」
「よかった」
「しっかし、お前も仕事熱心だな。アメリーへのゴマすりか?」
「本質的にはキミと同じ功績をあげたいだけだよ。そのためにチームには機能してもらわないとね」
「……なるほど。まあ仲良しこよしに興味はねえが、チームワークっての……ちったあ覚えといてやんよ」
「ありがとう。じゃあ、アメリー隊長の所へ戻ろうか」
「ああ。わーったわーった」
〔砦内会話 倒した帝国兵達〕
「す、すみませんでした……もう蹴らないで……」
「けっ…言葉なんかでいくらごまかしたトコで、実力がなきゃ戦場ではゴミ同然なんだよ!わかってんのかあ?」
「は、はい、精進します!」
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2人は司令室の方へと戻っていく。
「あー、帰って来たー!しかも、二人一緒だあ!」
「っせえな。大声出すんじゃねえよ」
「うんうん!やっぱり仲良しさんだね!」
アメリーは嬉しそうに、満足そうに笑った。
「だから、違え!すべては手柄のためだ!」
「もー、素直じゃないんだからクロードくんは。でもお姉ちゃんは、ちゃーんとわかってるからね!」
「あのなあ……」
アメリーとファルク、ふたりのやりとりをユーゴは微笑ましく見守る。
「さーて、それではロランス隊の復活を記念して……今から作戦会議だー!」
「はい!」
「……はあ。やっぱり付いてけねえぜ……」