エピソードまとめ

□アメリー・ロランス
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ep.1 ラック ハードラック ガール
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【CHAPTER3 必ず守ります】
999Y.C. ジルドラ帝国 帝国内定期連絡船


「……結局あのあとクロードくんってば、私のこと、無視して行っちゃったんだよね……」

先程おばあさんに拾ってもらった院長先生からの手紙を読み終わったアメリーは、つい先日、養護院へ帰っていた時の出来事を思い返していた。

「次に会ったら、少尉として注意しないと。"クロードくん!上官への態度がなっとらんぞ!"」

声を低くし、アメリーは偉そうな上官の真似をした。

「えへへえ、どんな顔するかなあ?」

そんな事を思いつつ、アメリーはブラブラと船内を歩く。


「そういえばクロードくんの階級章、確認しわすれちゃった」

服に階級章が付いてることだけは分かったが、戦いの最中だったし、印された模様を見る暇などなかった。

「……もしかして、私より上とか!?すっごく強かったし、ありえちゃうかも〜!そもそもどこの所属かもわかんないしなー。戻ったら確認を……」

そう言いながら角を曲がると、向かいから人が来てるのが分かりアメリーは止めた。
それから、あっ、と驚いた。そこには先程から思い返していた、クロード─もといファルクがいた。

「げ!」

向こうも驚いたような顔をして、慌てて背を向けた。

「クソッなんだってんだ!」

踵を返した彼はいそいそと早歩きで来た道を戻っていく。

「会いたくもねえ顔にニ度もでくわすとか、アンラッキーにも程があるだろ!」

「待ってえ!行かないでえ〜!」

ダッシュで甲板を駆けたアメリーは、後ろからファルクの手首を掴んだ。

「ぐおっ!?こら、テメエ!離せっ!離しわがれっ!この、へっぽこ女ァ!」

後ろから強い力で引っ張られ、ファルクはそれを外そうと前へ進もうとする。


「なにあれ?痴話喧嘩?」

「女の子をあんなに邪険にして……ひでえ奴だな」

2人を見て他の乗客たちがヒソヒソとしだした。


「があああっ!クソッ、わかった!分かったから落ち着け!」

結局、ファルクの方が先に折れた。

「……ったくなんなんだよ、オメーはよオ!」

「だってクロードくんが無視するんだもん。護院に帰って来てくれて、何年か振りに会えたのに」

「別に帰ったつもりはねえ。ただの任務だ。それに"ファルク"だ。何度も言わせんな」

「むーでも……」

納得いかないと言うようにアメリーが口を尖らすと、ファルクがギロリと睨んだ。

「……うん。わかった」

「それにだオレ様の階級は"曹長"だ。そのファルク曹長様が命令するぞ。余計なことを聞くな黙ってろ、だ」

「おっ、階級の話しちゃう?しちゃう〜?」

アメリーは嬉しそうにニヤついた。

「私はなんと、少尉さん!」

「そうそう、オメエみたいなどんくさには少尉くらいが……」

そこまで言ってファルクは固まった。

「……少尉い?」

疑いながらファルクはアメリーの軍服に付いている階級章を見た。

「おい……マジかよ、ありえねえ……」

「んっふっふ〜、お姉さんは階級だってお姉さん!」

アメリーがドヤっていれば、ぐわん、と船が大きく揺れた。

「な、なに!?この揺れ!?」

アメリーは槍を杖代わりに慌てて体を支えた。それからぐるりと辺りを見渡した。

「しっかり!怪我はありませんか!」

急いで倒れていた女性に駆け寄る。

「おい、んなヤツほっとけ。それより、さっさと得物を出しな」

そう言ってファルクは双剣を握った。
え?とアメリーはファルクを方を見上げれば、その先に見えるものに気がついた。

「仕事の時間だぜ!」

海から上がってきた獣達に対し、アメリーも立ち上がって槍を構えた。

「水の中からなんか出た!オバケ〜!」

現れた獣は大きなオタマジャクシのような姿のオタオタと、ロープを着たような足のない人型獣のリモザだった。

「オレ様はこっちを潰す!オメエはそっちだ!」

そう言ってファルクは獣の群れに突っ込んで行く。

〔LUSH1〕オタオタ、リモザ
「わわっ、私一人でこの数を!?」

「けっ。"少尉"のくせにビビッてやがんのか!?いいぜ、他の雑魚どもと一緒に逃げとけや。オレ様がぜーんぶ始末してやらア!」

「うぐぐ……。大丈夫。私はやれる子、強い子、頑張る子。お姉ちゃんが先に逃げたら"弟"が可哀想だもんねっ!」

そう言ってアメリーは強く槍を握り直し、獣達の元へ向かっていった。


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〔LUSH2〕オタオタ、リモザ
「た、倒せた……の?さっすが私!」

「気イ抜いてんじゃねえ!また……来るぞ!」


「……来たあああ〜!ひゃあぁ〜」

「情けねえ声出すんじゃねえ!はあ……。なんでオメエなんかが少尉になれてんだよ?」

「うーん……私にもよくわからないんだけど、こういつの間にか?ぽんぽんぽーんと」

「クソッ。でも確かにオメエは昔から妙にラッキーなヤツだった……!」

「でもでも私もちゃんと頑張ったんだよ!士官になるための勉強とか!出世すれば護院への仕送りを増やせるもんね♪」



〔LUSH3〕オタオタ、リモザ
「やった!これで終わり……」

「……とはいかねえみてえだな」

「へぐう……。よーし。行くよっ、クロードくん!」

「ファルクだ!それにオレ様に指図すんじゃねえ!」

「んもう。お世辞でもいいから、一緒に戦えて嬉しいって言ってくれてもいいのに〜」

「脳みそ花畑かよ!ホントになんでオメエが……………まあいい。オメエの幸運体質や階級に、あれこれ言ってもしゃーねえ。どうせオレ様がオメエの指揮下に入ることなんざねえだろうしな」


〔LUSH4〕オタオタ、リモザ
「でもまさかこんなに獣が出るなんて……。全然終わりが見えないけど早く全部追い払わなきゃ!」

「追い払うウ?全部ブチ殺すに決まってんだろ!根こそぎよ!」

「へぐう……。クロードくん、野蛮!そんな言葉遣い、院長先生が悲しむよっ」

「俺の知ったことかっ!」



〔LUSH5〕オタオタ、リモザ
「はあ………まだ……来やがんのか………?」

「あう……わかるよお疲れちゃったよねえ………」

「まだだ!オメエと一緒にすんじゃねえ!」


「まさか任務帰りの船が獣に襲われるたあな。どうせ連邦の仕業だろうが」

「うーん、それはないと思うよ。この船は定期連絡船だもん。乗客の大半は民間人だし、軍の物資を運んでるわけでもない。それにあの連邦がわざわざ市民を狙うとは思えないよ。だから、これはきっと"偶然"」

「………驚いたぜ。オメエがそんな賢いことを言えるたあ思ってなかった」

「えへへえ、これが少尉のパワーなのだよ♪」


〔LUSH6〕オタオタ、リモザ
「はああ……生き残れた〜。もうここまで来たら、とことんやっちゃうよ!」

「へっどんくさのクセに、ちっとは吼えるじゃねぇか」



「うぐぐ……しつこいなあ。いつまで続くのかなクロードくん!」

「いつまでだって構いやしねえ。向かってくるヤツはたたっ切るだけだ!」

「でも、早く倒さないと乗客のみんなも不安だよね」

「乗客う?んなモンどうだっていいだろ」

「よくないよっ!帝国軍は市民を守るの!」

「あー、めんどくせ。説教なんて聞く気ねえわ。オメエは目の前の敵に集中しろよ」

「むうう……!」

〔LUSH7〕オタオタ、リモザ
「や、やった…!また勝ったったよ……!私えらいっ!」

「……ふん、足手まといにならねーなら充分だ」

「えへへっ、やっぱり合うね〜、私達」

「なんの話だ?」

「戦闘の呼吸……的なやつ?護院で一緒に戦った時も連携取れてたしさ。同郷のよしみっていうか、離れていても家族っていうか♪」

「うぜえ……家族じゃねえし、勘違いすんな。超強えオレ様がへっぽこ少尉を、上手くフォローしてやってんだよ。オラ、さっさとそっちの敵倒しやがれ!」

「へぐっ、冷たい……」


〔FINAL LUSH〕リモザセブリ、リモザ
「クソっ……さすがに持たねえ………」

「……きっと次が最後だよ!そんな気がするんだ。なんとなく……だけど」



「こいつは………、今までのと様子が違えぞ」

「うん……なんかちょっと強いかも!」

「オメエの言う通りこれが最後かもしれねえな。真打ち登場ってこった」

「ホント!?」

「ああ。だが期待はずれだぜ。もう少し楽しませてもらえるかと思ったが、こんなのオレ様の敵じゃねえ!」

「ううっ、クロードくん自信満々………。怖くないのかなあ?ううん。アメリーファイト!勇気を出して頑張るぞ〜」
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