エピソードまとめ
□アメリー・ロランス
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ep.1 ラック ハードラック ガール
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【CHAPTER2 もう一度 キミと】
999Y.C. ジルドラ帝国 アルザ養護院
翌日、またもアメリーは大量の洗濯物が入ったカゴを運んでいた。
「よーしっ。この前は最後の最後で失敗しちゃったけど……、今日こそはちゃんとお洗濯、最後までやりきるぞー!」
今回は前回よりも慎重に移動し、物干し竿を所まで何とかコケずに来ることができた。
「ふっふーん、どう?お姉ちゃん今日はちゃーんとやれたよ!」
カゴを下に置いてアメリーは、ふふんと胸を逸らした。
「重いのにすごいねー」
「いばるほどのことか……?」
一緒に洗濯をしてくれる、女の子が褒め、男の子がツッコミを入れた。
「いいの!院長先生も言ってるでしょ"褒めれば育つ"って!みんな、アメリーお姉ちゃんを褒め育ててねっ。私もみんなを褒めまくるよ〜♪」
そう言ってアメリーは女の子と男の子、二人の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「キャーッ!」
急に、遠くの方から女の子の悲鳴が聞こえた。
「えっ!?ひ、悲鳴っ?もしかして不審者……?」
こうしては居られないとアメリーは子供達の頭から手を離した。
「あっ、そうだ、槍!倉庫に置いてあるんだった!」
アメリーは急いで左側の倉庫に向かうと、壁に立てかけて置いた槍を手に取った。
「よしっ、これで……!お姉ちゃん、いっくよー!」
そう言ってアメリーは走り出す。
「どっちだろう……えっと……。裏庭の方!たぶん!」
声が聞こえてきた方から推測し、アメリーは裏庭へと続く門を開けた。
「ま、まさか獣が出たとか……ないよね。ここは森から近いけど……私がいた時はそんなことなかったもんね。でも、もしかしたら………!」
アメリーは青い顔をして、急いで裏庭を駆ける。
「あっ!やっぱり獣が……!」
裏庭の奥で、1人の女の子がオタオタの群れに襲われていた。
「待ってて!今お姉ちゃんが助けるから!」
「お姉ちゃん逃げて……!」
「いいえ。お姉ちゃんは逃げません!ここは私の家みんなは家族。絶対守るんだから!」
そう言ってアメリーは槍を振り回し、オタオタ達を一掃していった。
「勝ったあ……」
槍を地面に刺して、杖のように支えにしてアメリーは一息ついた。
その後ろで、きゅああっとオタオタの鳴き声がした。
「えっ……」
「はっ……!」
アメリーが振り替えったと同時に、足音と男の声が聞こえたかと思うと、オタオタが十字に斬られた。
「あ、ありがとう!……って」
アメリーは助けてくれた男性に声をかけて、その後ろ姿に首を傾げた。
「……あれ?あれれ?キミもしかして」
男は双剣を持っていて、金に染めた髪と伸びて地毛の黒髪が見えている。そんな後ろ姿しか分からなかったが、アメリーはその背に見覚えがあった。
「もしかして、クロードくん……?」
「……あ?」
クロードと名を呼ばれ、男は不機嫌そうに振り返った後、うげっ、と言うように驚いた。
「……げえっ、アメリー!?なんでテメエがいんだよ!」
「わあ、やっぱりクロードくんだ!」
ぴょんぴょんとアメリーは嬉しそうにその場で飛び跳ねる。
「養護院を飛び出ちゃって以来だよね!また会えて嬉しいよお〜。実家の危機に駆けつけてくれたんだね。ちょっと乱暴だけど、優しい子!お姉さんは知ってたよ♪」
「実家あ?いったいなにを………待て、新手だ。早く構えろっ!」
キリッとクロードの目つきが変わる。
「えっ!?」
アメリーが周りを見てみれば、ずらり、とオタオタ達が集まっていた。
「実家ってなんのことかと思ったが……そういうことかよ!ここはあの養護院じゃねえか!オレ様としたことが……!」
そうボヤきながら、クロードは双剣でバッタバッタとオタオタを薙ぎ倒して行く。
「クロードくん強いねえ!それに私と一緒の帝国軍!」
アメリーも槍で戦う最中、目ざとく彼の服に帝国軍の識別章と階級章が付いていたのを見つけた。
「今までどうしてたの?所属は……ねえねえ!」
「だああ!戦闘中にうるせえ!つーかその名前で呼ぶんじゃねえ。今のオレ様は"ファルク"だ。鋭い爪で獲物を切り裂くってことさ」
「……ふぁるく?クロードくんはクロードくんだよ〜」
「いいか。別にオレは、テメエを助けに来たんじゃねえ。軍の任務で獣を追ってて偶然辿り着いちまっただけだ」
「偶然?ううん、きっと運命だよ!運命の再会!」
「相変わらず話の通じねえ女だなっ!」
2人は難なくオタオタの群れを倒しきった。
「逃げた獣どもはこれで全部片付いた。任務完了っと」
「やったね、クロードくん!久しぶりに会えたし、聞きたいこといっぱいあるけど……、まずは院長先生に挨拶しに行こっ?」
「はあ?勝手に決めんな。オレはこれで引き上げだ」
「なんでっ?院長先生ずっと心配してたんだよ!」
「そーかい。けどよ、そいつは院長の勝手だろ。オレ様には関係ねえ話だ。あばよ」
「えええ〜、どうしてえ〜?」