エピソードまとめ

□ユーゴ・シモン
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ep.1 裏切り者
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【CHAPTER4 和解の端緒】
999Y.C. アムル天将領 パパラーシア湿地

翌日、ユーゴ、ファルク、アメリーの三人はキャンプを出てすぐの沼地まで来ていた。


「何度も言うけど、元々この作戦は僕一人で行くつもりで……」

「おいおい、手柄を独り占めかよ。連邦野郎はこれだから」

「いや、そうじゃなくて………。アメリー隊長も彼を止め……」

我先に進もうとするファルクを見てユーゴはアメリーを振り返って見た。
アメリーは少し離れたところで、頭を両手で押さえていた。

「ううう、砦に突撃…………。でもユーゴくんだけ、行かせる?だめだめ、そんなのだめ。アメリーふぁいと!」

ぶつぶつと一人で呟いた後、アメリーはぐっと拳を握って掲げた。

「あれ?ユーゴくんなにか言った?」

そう言えば何か言われた気がしたとアメリーはユーゴを見つめ返した。

「隊長……貴女まで。どれだけ危険な任務か わかっているんですか?お伝えした通り連邦には強力な迎撃兵器が……」

「ハッ言い出しっぺのテメエが言えたことかよ」

「それはそうだけど……」

仕方がないと、ユーゴは諦めて三人で沼地を進んでいく。

そんな時だった。
連邦軍の砦の方から、ビュンと一筋の黄緑色の光が打ち上がったのが見えた。
それを見たユーゴはハッとした。

「隊長、危ない!」

そう言ってユーゴはアメリーの元に駆けた。

「わわっ!?」

彼女を押し倒す形で、何とか落ちてきた光を避ける。
先程まで彼女がいた所でその光は爆発した。


「……これが帝国軍の進軍を阻止している兵器か……」

ユーゴは身体を起こし、爆発の跡を眺めた。
落ちてきた光は恐らくマナの塊でその強大なエネルギーが爆発したせいか地面の一部が青い炎でメラメラと燃えていた。確かにこれでは人間なんて一瞬で溶けてマナに還らされてしまうだろうし、化け物と呼んで進軍したくなるのも頷ける。
ただ、僕なら……同じく、化け物と呼ばれることもあるエンブリオ持ちの元ブレイズなら……、とユーゴは考える。

「ありがとう。助かったよ、ユーゴくん」

「いえ、大したことでは」

アメリーが立ち上がるのに手を貸しながらユーゴはそう答える。

「ただ、やはりお二人は引き返した方が……」

「……確かに危ないのは私も怖いけど、そういう任務を一緒に乗り越えるのが仲間でしょ?」

「隊長……」

「足ガクガク震えてるヤツが言っても説得力ねえな」

二人の元に寄ってきて、ファルクがそうアメリーを茶化す。

「クロードくん!」

ブンブンとアメリーは槍を持ったまま腕を振り回す。

「っぶね、武器振り回すな馬鹿!てかこんなトコで立ち止まってたらやべえだろ?さっさと行くぞ」

二人のやり取りを見て、ユーゴは口元を緩めた。

「……ふふっ。ありがとう二人とも。じゃあ、よろしく頼むよ」

「おう」

「任せて!」

そう言って、三人は空に架かる黄色いマナの川の下を走って行くのだった。

「それで、ユーゴくん。このあとはどうするの?」

「まさか無策とか言うんじゃねえだろうな?このままだと迎撃され続けるよな」

「だね」

ファルクの言葉にユーゴは頷く。

「えーと……そこはなにか策が?」

「そうですね。一つだけあるとすれば……」

「うんうん」

「"ふぁいと"ですかね」

含み笑いをしながらユーゴはそう言いきった。

「こいつ………!」

「大変な、やんちゃさんだ!」

「さすがに冗談です。僕に任せて下さい」

「ユーゴくんに?」

「はい。兵器による迎撃は………このまますべて僕が防ぎます」

「な……!?馬鹿かテメエ!んなもん耐え切れるわけ……!」

「そうかもね。……でも帝国の"狼将"ならどうだい?」

「なっ!テメエがやるならオレだってやってやらあ!」

「……確かにキミならやってのけそうだね」

「じゃあじゃあ私は……!」

「テメエは邪魔にならねえように呼吸でも止めてろ」

「うう……クロードくんひどいよ……」

二人のやり取りを見ながら、ユーゴはギュッと長剣を握る力を強くする。
ユーゴの中では、自分なら大丈夫だろうという確証があった。
先程思った通り、エンブリオのマナをコントロールする力があれば、あの砲撃を受けても受け流せると。そして、なにより、自分の力は"誰かを守る"時に最も遺憾なく発揮されると理解していた。

「危ないっ!」

アメリーが叫ぶのに合わせユーゴは飛んできた砲撃を長剣で受け止めた。

「ユーゴくん……無理だけはしないでね?」

はいと、頷きユーゴは二人を守るため先陣切った。



しばらく砲撃をいなしながら沼地を進み、その先の高台を登った。

「あっ!砦の門が見えるよ!」

「はい。ただ……正面からだと兵も多そうなので、右側にある脇道から裏門を目指しましょうか」

「賛成!私もそっちがいいと思う!」

隊長であるアメリーの賛同も得られ、ユーゴは右側に進めそうな岩と岩の間を見つけた。

「じゃ、行きましょう」

「了解!」

「ったくどっちが隊長なんだよ」

先導するユーゴについて行くアメリーに、ファルクは呆れながらもその後に続いた。
岩岩の間を抜け、崖を少しづつ飛び降りて進んでいくが、また砲撃が飛んできてユーゴがそれを捌いた。

「ひゃあっ!心臓に悪い〜……」

「おい!へばってんじゃねえぞ!」

驚いて腰を抜かしたアメリーにファルクが喝を入れれば、アメリーは急いで立ち上がる。
それから三人はまた駆け足で沼地を抜けた。
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