エピソードまとめ

□ユーゴ・シモン
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ep.1 裏切り者
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【CHAPTER3 停滞者達】
999Y.C. 森国シルヴェーア アムル天将領侵攻拠点

「……さて僕も聞き込みをしようかな」

そう言って、ユーゴもキャンプの中を歩いてみたが、酷い有様だった。どこもかしこも酒瓶まみれ、酔っ払いだらけ。

「なんだお前、新顔か?」

「はい。ユーゴ・シモンです」

「……例の連邦から寝返ったって奴か?」

「……まあ間違ってはいません」

「そんな奴がここでなにをしてるんだ?」

「ちょっとお聞きしたいのですが、何故ここの人達は戦地へ向かわないどころか、その準備すらしていないのですか?これほど弛緩していては攻められたら一網打尽です。もっと意識を……」

「意識を……なんだよ?余計なこと考えんな。俺達はここで楽しく平和にやってんだ」

「でもここは前線キャンプですよね?」

「っせえよ!無駄死にに怯えてなにが悪い!」

「……どういうことですか?」

「どうでもいいだろ!…………そうか!お前、連邦の工作員だな?俺達をハメて全滅させるつもりか!そうはさせないぞ!」

そう言って男は剣を取った。

「お前の首を連邦に送り返してやるぜ!」

「待って下さい!僕は工作員ではありません!」

無駄な争いをしたくないユーゴは、慌てて彼から距離をとる。

「それに貴方の言う"無駄死に"とは?もし戦地で命を落とすことがあっても国のためならそれは無駄では……」

「無駄なんだよ!あんな"力"の前ではな。ガタガタ言ってると本気で殺すぞ!」

そう言って剣を振り下ろされ、ユーゴは致し方ないと自分の長剣を抜いてその剣を受け止めた。

「くっ……ひとまず、頭を冷やしてもらうしかないか……」

ユーゴは振り回される剣を受けては流しカウンターし続けた。



「くそ……!」

兵士は剣を弾かれ膝を着いた。
それを見てユーゴは長剣をしまった。

「……今のようにちゃんと戦うことができるのに、何故、貴方達は立ち上がらないんですか?」

「仕方ないだろ……あんな兵器があったんじゃ…………」

「兵器?」

「ああ、奴らの砦には強力な迎撃兵器があってな。こちらが沼地に足を踏み入れようものなら…………バーンってなもんよ……。ただ、ここには届かないから攻めなけりゃ被害もないのさ」

「……なるほど。それがこの方面軍の停滞理由でしたか……」

「ああ、そうだよ……」

「つまり、その兵器さえなんとかすれば、やる気を出していただけると」

「そ、そりゃ、あれがなければ俺達だって……」

「了解しました。では、ここの指揮官はいまどちらに?」

「あの人ならいつも酒場で飲んでるさ」

「そうですか、ありがとうございます」

「……あのよ。俺達みたいな前線の兵は、いつ死ぬかわからないんだ。だからこそ、ここに留まれる時間が、どれほど貴重で得がたいものか……、そういう気持ちわかってくれよな」

「わかりますよ。僕にも何者にも代え難い時間がありましたから……。連邦の兵器に関してはご安心下さい。命を掛けるのは皆さんではありませんので」

「それはどういう……」

「では失礼いたします」

「……連邦のヤツってのは変わってんな……」



「よし、指揮官のところへ行こう」


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〔キャンプ内会話 ファルクと泥酔兵士〕
「おい、そこのちょっといいか?」

「あー?んだよお、ひっく」

「昼間から呑んでやがるのかよ。仕事はどうした?」

「仕事お?本日も異常ありません!ってなもんだ。ああははあ」

「なんなんだ……それでも軍人か?」

「なあに怒ってんだあ?沼地を攻めても"化け物"の餌食だ。ここで様子見てるしかねえだろ?」

「化け物だと?それはどういう……」

「ふいー、ぐう……ぐう…………」

「テメエ……!」



〔キャンプ内会話 アメリーと帝国兵士〕
「すいませーん!」

「なんだお嬢ちゃん、迷子か?お母さんの軍服なんて着ちゃって可愛いねえ」

「へ?いやそうじゃなくて……」

「戦場は子どもの来る場所じゃない。と普段なら怒るとこだが……ここなら構わねえか。しばらくロクな戦闘してねえしな」

「前線キャンプなのに?」

「ああ、こちらから仕掛けることもなけりゃ、連邦軍どもも砦から出て来ねえからな」

「そうなんだ」

「おっと、子どもにはちょっと難しい話だったかな?」

「あ、いや、だから……」


〔キャンプ内会話 食事処前兵士〕※前線キャンプの有り合わせクヌーデルのレシピ
「見ない顔だな?」

「増援で来ました。ユーゴ・シモンです」

「ああ……あの将来有望ってヤツか」

「それはわかりませんが……。ここは食事処ですか?」

「あー、そうだよなんか食っていきたいのか?だったらそこのレシピを勝手に見て自分で作りな。あり合わせの肉やら硬くなったパンをすり潰して煮た野営飯が食えるぜ。まエリート様の口には合わねえだろうがな」


〔キャンプ内会話 カードゲームをする2人〕
「っかあ、また負けた!お前、手札強過ぎだろ!」

「へへっ、もうけもうけっ!」

「すみません。ちょっとよろしいですか?」

「なんだ、新顔か?来いよカードで遊ぼうぜ!」

「いえ、それより戦況の話を…………」

「ああ、それなら………俺の小遣いがむしられたとこだよ!」

「そういう話ではなくて……」

「なあ、あんちゃんもやろうぜ?どうせヒマなんだ」

「いや、前線キャンプにヒマなんてあるわけが……」

「おっしゃ、もう一戦行くぜ!」

「おうおう、豪気だねえ!」

「……話にならないな」

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ユーゴは指揮官がいると聞いた酒場に向かった。

「失礼します。指揮官殿」

「……なんだ、お前は」

「増援に派兵された、ユーゴ・シモンです」

「ああ、連邦に背いたという噂のか。で……なんの用だ?」

「用件は簡単です。……明日、作戦にご参加いただきたい」

「作戦?なんのだ」

「決まってます。連邦の砦を落とす作戦です」

「ははははっ!なにを言うかと思えば!悪いことは言わない。頭冷やしな」

「……テメエに、連邦野郎を笑う資格はねえよ」

「ファルク……」

酒場のテントの入口が捲られ、ファルクが入ってくる。その後ろからアメリーも続いて入って来た。

「てか、勝手な行動すんなよ」

「キミに言われたくないけどね」

「ちっ……続けろよ。まだなんかあんだろ?」

「ああ、ありがとう」

そう礼を良い、指揮官に向き直る。

「……聞けば、ある兵器に苦戦して、この停滞状況にあるとか」

「その通りだが、イチかバチか突貫でもしろと?」

「ええ、その通りです」

「なんだと?部下に無駄死にしろというのか?」

「ある意味ではそうかもしれません。……この僕も貴方の部下という扱いになるのならば」

「え……?ユーゴくんそれって……」

アメリーが不安そうな顔をしてユーゴを見上げる。

「明日、……僕が単独で砦に突貫し、兵を止めてみせます」

「な!」

「ユーゴくん!?」

「連邦野郎、テメエ……」

「もし、それができましたら、あとは制圧をお願いいたします」

「お前……」
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